『刑事コロンボ』から『MURDER IN THE FIRST』まで...刑事ドラマに革新をもたらし続けたスティーヴン・ボチコーに迫る!

『刑事コロンボ』『ヒル・ストリート・ブルース』『L.A. LAW/7人の弁護士』『NYPD BLUE ~ニューヨーク市警15分署』といった数々の人気犯罪ドラマを手掛け、エミー賞10回の受賞歴を誇るTVドラマ界のレジェンド、スティーヴン・ボチコー。2018年4月に逝去した彼が製作総指揮・企画を務めた、1月9日(水)よりDVDレンタル中の『MURDER IN THE FIRST/第1級殺人』。1シーズン全10話を通してひとつの事件を追っていくというユニークな構成と二転三転する最後の最後まで目が離せないストーリー展開が見応えたっぷりの本作の魅力とボチコーの軌跡を振り返る幕田千宏(海外ドラマライター)のコラムをご紹介しよう。

一見関連のないように思えた二つの殺人事件が、複雑に絡み合っていく刑事サスペンス『MURDER IN THE FIRST』。事件解決に執念を燃やす刑事たちの生き様をリアルに描いた本作の製作総指揮を務めるのが、エミー賞10回の受賞歴を誇る、TVドラマ界の重鎮であり、刑事ドラマの名手と言われたスティーヴン・ボチコーだ。

1970年代に名作『刑事コロンボ』の脚本家としてキャリアを スタートさせたボチコーが最初にその才能を世に知らしめたのが、1981年から1987年放送の『ヒル・ストリート・ブルース』だ。ひとつのエピソードの中で複数の事件を追い、手持ちカメラで臨場感を演出、さらに刑事たちの私生活もクローズアップしてリアルな人間ドラマを生み出した本作は、これまでの刑事ドラマの在り方を一変させ、その後に続く数々の刑事ドラマのアンサンブル化の流れを決定付けた。

1986年にはこのアンサンブル方式を取り入れた弁護士ドラマ『L.A. LAW/7人の弁護士』を手掛け、こちらも大ヒットを記録。そしてボチコー製作の刑事ドラマの中でも金字塔と呼ばれるのが1993年から2005年まで放送された『NYPD BLUE ~ニューヨーク市警15分署』だ。当時のTV界では卑猥な言葉やラブシーンがタブー視されていたが、本作はあえてそのタブーを積極的に取り込み、大胆かつリアルな描写で強烈なインパクトを残した。シーズン1でエミー賞最多27部門にノミネートされるという記録をうちたてた。

常にリアリティを追求し、濃密な人間ドラマを展開させていくその手腕で、長きに渡って名作ドラマを生み出してきたボチコー。『MURDER IN THE FIRST』は昨年急逝した彼の遺作であり、ボチコー・イズムが随所に盛り込まれた作品だ。多層構成のストーリーテリングはもちろんのこと、俳優たちのキャスティングにも並々ならぬこだわりが見える。男女バディの微妙な距離感を細やかに演じる主演のテイ・ディグスとキャスリーン・ロバートソン、事件の容疑者として浮上する巨大IT企業の若きCEOの肥大化したエゴイズムを体現したトム・フェルトン、彼の弁護士として登場するジェームズ・クロムウェルとリチャード・シフはベテランの妙味を披露する。実力派が織りなす骨太な人間ドラマは見応えの塊だ。

まさに生涯をかけて刑事ドラマに革新をもたらし続け、視聴者を魅了してきたボチコー。 『MURDER IN THE FIRST/第1級殺人』はそんな彼のキャリアの集大成にふさわしい作品に仕上がっている。

『MURDER IN THE FIRST/第1級殺人』商品情報

■『MURDER IN THE FIRST/第1級殺人』
・Vol.1~Vol.5 DVD 好評レンタル中
・全10話/各巻2話収録/各話約43分/日本語字幕のみ
・発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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Photo:
『MURDER IN THE FIRST/第1級殺人』
スティーヴン・ボチコー
主演のキャスリーン・ロバートソンとボチコー
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