【日本未上陸】暗殺者学校に通う14歳マーカスの青春 『Deadly Class』はまるで残虐なホグワーツ

もしも『ハリー・ポッター』の世界に、友情も希望もなかったら――? 米SyFyで放送中の新作ドラマ『Deadly Class(原題)』は、殺伐とした暗殺者養成学園が舞台の青春アクション・シリーズで、原作は日本でも刊行中のビジュアルノベル。映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を監督したルッソ兄弟が、製作総指揮に加わっている。

♦︎殺人衝動を買われ、14歳で暗殺学校に

1987年、サンフランシスコ。市街を見下ろすコイト・タワーの頂上で、思い詰めた表情で佇む14歳のマーカス(ベンジャミン・ワズワース)。これまで彼を虐待してきた養護施設に復讐すべく、どうやら建物に火を放った模様。罪のない複数の児童が巻き添えとなった。サンフランシスコの中華街で秘密の学園を営むリン(ベネディクト・ウォン)はそんなマーカスを咎めることなく、能力を活かすために入学しないかと持ちかける。

路上生活を送っていたマーカスは、誘われるがままにキングス・ドミニオン学園に入学。その生徒たちは漆黒のローブに身を包んでおり、ホグワーツ魔法学校を思わせる。しかし、ここはモンスターと闘うための機関ではなく、暗殺者の養成学校。敵はあくまでも生身の人間だ。大企業の御曹司たちやヤクザの子など、一筋縄ではいかない同級生たち。彼らとともに、マーカスは命の駆け引きを学ぶ。メキシコマフィアの娘で色気漂うマリア(マリア・ガブリエラ・デファリア)、クールな日本刀使いのサヤ(ラナ・コンドル)、そしてギャングの息子のウィリー(ルーク・テニー)との絆を味方に、マーカスは学園内での生き残りを図る。

♦︎ファンタジーよりも残忍

マーカスたちはモンスターではなく、学園内の生徒たちと闘いを繰り広げる。Los Angeles Times紙は「反ホグワーツ」という一言で本作を表現。魔法学校のようなミステリアスな空気が漂う校舎だが、その実態は暗殺者の養成機関。人間が相手とあって、架空の敵と対峙するファンタジー作品よりも残虐な展開が待っている。一方で、ホグワーツ魔法学校と共通するポイントも。4つの寮が競い合う『ハリー・ポッター』さながらに、本作でも大企業の金持ちグループやヤクザの黒木組の一派など、複数のグループが派閥ごとにしのぎを削る。

同様にSalon誌も、『ハリー・ポッター』との類似性を指摘。ホグワーツ魔法学校の暗殺者育成版となる本作は、青春ドラマを「死ぬほど」究極化したものだと同誌は述べる。キングス・ドミニオン学園でいじめのターゲットとなった場合、それは死を意味する。サンフランシスコでの路上生活から脱却できると喜んだマーカスだったが、学園で待っていたのはより過酷な日常だった。

♦︎仲間意識の終焉

10代の荒々しい活力が毎話爆発する本作。乱暴なエネルギーと罵り文句に溢れた作品だ、とLos Angeles Times紙は述べ、作品の持つパワーを評価している。同じ社会階級という繋がりで結ばれた派閥だが、ときに同族意識が生む負の側面が露わに。一方、主人公マーカスの周囲では立場を超えた信頼と絆が育ちつつあるものの、過酷な学園生活を友情だけで乗り切れるかどうかは未知数だ。

ファンタジーの明るい力を信じる『ハリー・ポッター』シリーズとは根本的に違う、とSalon誌は見る。特権階級の子どもたちが共同生活を強いられるキングス・ドミニオン学園は、下層階級への歪んだ感情に満ちている。自衛のためにも攻撃のためにも、相手勢力に苦痛を与えるスキルを日々研鑽しなければならない。仲間意識などは死に絶えたも同然だ、と同誌。一般的な魔法ファンタジーは、力を合わせることで闇に打ち克てるのだというコンセプトのもとに成立しているが、それとは対極のシビアな世界を描くのが本作だ。

昨年末に第1話が放送された『Deadly Class』は、1月下旬から米SyFyで放送再開している。ルッソ兄弟が監督を務める『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、日本からもU-NEXT、ビデオパスなどで視聴可能。本作校長役のベネディクトが数シーンに登場するので、そちらもお見逃しなく。(海外ドラマNAVI)

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