【日本未上陸】殺人を犯したのはどっち? 視聴者の知力に挑む心理スリラー『Cheat』

刑務所の面会所で話し込む二人の女性。投獄の原因をめぐり口論を繰り広げているようだが、どちらが囚人でどちらが訪問者なのかは明かされていない。殺人を犯した女性とは、一体どちらなのか―? 視聴者の慧眼を試すミニシリーズ『Cheat(原題)』が、英ITVで3月中旬に放送され好評を博した。

■反抗的な学生の私怨、ターゲットは大学教授

険悪なムードで話し込む二人の女性。刑務所内のガラス一枚を隔て対称に造られた面会室で、大学教授のリア(キャサリン・ケリー『ナイト・マネジャー』)と学生のローズ(モーリー・ウィンザー『証拠は語る』)が向き合う。互いへの憎しみで爆発しそうになる感情を押し殺し、震える声で互いを批難している。

事の発端はキャンパスで起きた殺人事件。ローズが提出した社会科のレポートが不自然なほどの出来栄えだったため、教授のリアは不正を確信。彼女自ら書いたものではないはずだとローズを告発した。プライドの高いローズはこれに激怒。怒りはすぐに復讐心となり、大学での生活は緊張を極めることとなった。視聴者にまだ明かされぬ空白の時間を経て、リアの夫アダム(トム・グッドマン=ヒル)が殺害されたことが明らかに。殺したのはどちらなのか? 画面と会話の隅々にまでヒントを求めたくなる、ミステリー色の強い心理スリラー。

■復讐に燃えるローズ

授業中のローズの態度は非常に反抗的。父親が大学に多額の寄付をしていることが心理的な余裕を与えているのだろうか。レポートで不正を働いたという指摘は彼女の気分を害し、やがて復讐心をたぎらせるまでになる。演じるのはモーリー。彼女は昨年、英BBC Oneの『Three Girls(原題)』で英国アカデミー賞主演女優賞を受賞。当時20歳という若さで偉業を果たしている。

リアとの関係が泥沼化するほどに、ローズ役モーリーの演技は輝きを増す。英Guardianは、二人が交わす会話が関係を捻じ曲げ、それにつれゾッとするようなローズ人物像が明らかになってゆくと、スリリングな展開を好感。やりすぎた感はまったくなく、一人の学生として現実に存在し得る範囲での狂気を演じている。現実感を留めたままエスカレートする狂気に、恐怖が引き立っているとさらに述べている。

■演出にもう一工夫

第1話は大学での確執を一通り描いた後で、二人が面会をしている現在の時点に戻って幕を閉じる。彼女たちの争いは、どうやら殺人にまで発展した模様。事件を担当する刑事は、二人のどちらとも殺人者とは思えないとこぼす。警察はうち一人を逮捕したわけだが、果たして逮捕は正しかったのかという疑問が彼の脳裏に渦巻く。ここに来て視聴者は、二人とも無実という可能性が残されていることに気づく。Guardianはこのような1話の幕切れを紹介し、スリリングな人間関係の進展と謎の解明を心待ちにしている。

こうしてサスペンスとミステリーで楽しませてくれる『Cheat』だが、演出には若干の難もと表すのは英Telegraph。オープニング早々のベッドシーンなど、視聴者の注意を引こうとする安っぽい手法が使われている、と指摘。ほかにも落ち着かないBGMが緊迫のシーンを邪魔していたり、脇役の演技に粗が目立ったりと、細部のクオリティまで完璧とはいかなかったと述べているが、それでも一見に値する心理スリラー作品に仕上がっていると伝えている。(海外ドラマNAVI)

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キャサリン・ケリー&モーリー・ウィンザー
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