【日本未上陸】『Fosse/Verdon』伝説の振付師ボブ・フォッシー、夫妻の夢とロマンス

20世紀アメリカの劇場に革命を起こした、二人の実在のプロフェッショナル。トニー賞受賞の振付師であるボブ・フォッシーは、映画監督としてもアカデミー賞を受賞した多才な人物だ。彼は芸術活動のパートナーとして、女優兼ダンサーのグウェン・ヴァードンを選ぶ。ブロードウェイの頂点を目指す二人は私生活でも伴侶となるが、これが創作に思わぬ影を落とすことに...。夢とロマンスの人生に迫るミニシリーズ『Fosse/Verdon(原題)』は、4月上旬から米FXで放送中。

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惹かれ合うアーティストたち

クリエイティブな作品を続々と生み出したボブ(サム・ロックウェル)とグウェン(ミシェル・ウィリアムズ)。二人の結婚生活は、ボブの死という形で終わりを迎えることになる。まさに永遠の別れが訪れようとする場面で本作『Fosse/Verdon』は幕を開け、まだ二人が活動的だった時分のステージの世界へと時を戻す。

当時映画監督として活動していたボブは、ミュージカル映画『スイート・チャリティー』と『キャバレー』の撮影の真っ只中。のちに前者は大ヒットを記録し、後者はアカデミー賞で8冠に輝くことになる。両作品の成功には女優グウェンの存在が欠かせず、二人は私生活でも惹かれ合ってゆく。決して現状に満足することのない二人は、数々の名作をともに創造することに。ドラマ『Fosse/Verdon』は彼らの高い芸術性と、そこに大きな影響を与えた舞台裏の生活に迫る。

創作とロマンスの複雑な関係

芸術家として相性抜群で、さらにプライベートの時間もともにするという稀有なパートナーを見つけた二人。理想的で充実した人生のように思えるが、事はそれほど容易に運ばない。ときには家庭での諍いに疲れ果ててしまうことも。そんなときにもなお、クリエイティブなパートナーとして互いを見ることができるだろうか、と米Hollywood Reporterは指摘する。人生のすべてを共有する二人だからこそ、長い結婚生活のなかで愛情が次第に冷めるにつれ、プロとしての活動基盤が揺らぎを見せることに――。

こうした危うげな魅力も秘めた本作は、ボブとグウェンの実の娘を制作の相談役に迎えるなどして真実味を追求している。妻グウェンの扱いが夫ボブよりも控えめになってしまっている点を米Varietyは惜しむが、実在したクリエイティブなペアの舞台裏を解き明かす興味深いシリーズになっている。

ミュージカル作品としても良好

脚本は、孤独な高校生を描いたミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』などで知られるスティーブン・レベンソン。今回のドラマ『Fosse/Verdon』は、その雰囲気から、『Glee/グリー』などヒット作を続々と手掛けてきたライアン・マーフィー脚本による作品を想起させるとHollywood Reporterは表する。本作は予告編からすでにミュージカルシーンを取り込み、マーフィーの作品『フュード/確執 ベティ vs ジョーン』などに近い空気を感じさせる。一方でダンスのリハーサルシーンを通じて新しい恋を表現するなど、オリジナリティ溢れる表現もみられる。

ブロードウェイ作家のスティーブンだからこそ、舞台芸術の世界には精通している。振付師・ボブとダンサー・グウェンの関係性がリアルに描写されている、とVarietyは絶賛。実際にボブが遺した作品の特徴までありありと再現されており、作中のダンスシーンからはそれが明確に感じられる。

『Fosse/Verdon』予告編はこちら

妥協なき創造性と危うげなパートナーシップの『Fosse/Verdon』は、米FXで放送中。(海外ドラマNAVI)

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サム・ロックウェル&ミシェル・ウィリアムズ
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