ジョージ・クルーニーが『ER』以来のTV復帰!戦争の狂気をユーモアで包む『Catch-22』

副業のテキーラ会社が好調で、映画出演なしでもハリウッドの収入ランキングトップ(2億3900万ドル)に君臨するジョージ・クルーニーが監督・製作総指揮・出演を担う新作ドラマ『Catch-22』。第二次大戦中の軍隊内部の様子を、ユーモアの中に狂気を潜ませた独特のテンポで表現する。ジョセフ・ヘラーによる1961年刊行の小説「キャッチ=22」を原作とする全6話のミニシリーズは、5月中旬から米Huluで配信中だ。

狂気の自陣こそ最大の敵!?

アメリカ空軍の爆撃部隊に所属する、若き兵士のヨッサリアン(クリストファー・アボット)。第二次世界大戦の勃発により生命の危険を感じる日々が続くが、彼が真に恐れているのは敵の部隊ではなく、身内の軍内部にはびこる不合理な官僚主義そのもの。一刻も早い除隊を願うが、退役のために達成しなければならない飛行回数は日増しに高く設定し直されるばかりで、一向に実現の目処が立たない。時折キャンプに姿を見せる上官(ジョージ・クルーニー)の的外れな振る舞いも、戦時の混乱を泥沼化させるばかり。

空爆の任務から逃れたいヨッサリアンは精神の異常を装おうと画策するが、そこに立ちはだかるのがタイトルにもなっている軍規第22項に潜む落とし穴。精神異常を発症すれば任務を免除すると認めつつ、しかし出撃の恐怖を感じることのできる者の精神は十分に正常だと定義している。さらには「危険な任務に応じるような隊員の精神は異常だと認められるが、任務の解除を申請した時点で、申請できるだけの判断力があると認められる」との規定も。原作小説のヒット以来、この「catch-22」は俗語として定着し、板挟みの状況を象徴する単語として現在でも辞書に掲載されている。本作は、戦争と軍隊の狂気を前に、哀れなヨッサリアンがユーモアたっぷりにあがくミニシリーズだ。

反戦メッセージをユーモアで包む

反戦メッセージの込められた名作小説の映像化について、意外なほどに心に残るシリーズ、と米Hollywood Reporter誌。戦争をテーマにしたドラマというと生々しいタッチになりがちだが、そこを巧妙なユーモアでうまく緩和しているのが本作の特色だ。兵士たちの生命を軽視し、暴力的なアプローチで作戦を遂行する軍部そのものが、ヨッサリアンの目には敵と同じくらい危険な存在として映る。上官との軽妙なトーンの会話の中に、彼の感じる恐怖と失望が繊細に表現されている。

原作小説は、哲学的なモノローグやパラドックスなどを数多く散りばめた映像化の難しい材料だが、本作ではヨッサリアンの苦悩が十二分に伝わるドラマとして見事に再現している。難易度の高い素材に野心的に挑んだ作品、と米Variety誌は評価する。

主演はクリストファー・アボット(『GIRLS/ガールズ』『The Sinner -記憶を埋める女-』)。長くくすぶっていた才能の開花を本作でついに感じる、とVariety誌は評価。空中戦のシーンでは派手さはないものの、無表情のクリストファーがヨッサリアンの惨めな状況を雄弁に語っている、と同誌は論評する。

そしてヨッサリアンの上官の一人を演じるジョージにとっては3年ぶりとなる俳優活動。本格的なドラマの仕事としては、出世作『ER 緊急救命室』以来だ。

戦場の混乱を独特のユーモアで描く『Catch-22』は、米Huluで配信中。(海外ドラマNAVI)

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ジョージ・クルーニー
(C) James Warren/Famous