近年最も有名なゾンビ作品といえば、やはり『ウォーキング・デッド』だろう。一方、B級感が素晴らしいとして根強いファンを持つのが『Zネーション』である。今回Netflixより配信された『ブラック・サマー:Zネーション外伝』は、そのスピンオフ。といっても『Zネーション』とは少し毛色が異なるので、同じようなトーンを期待している視聴者は肩透かしを食らわされるかもしれない...良い意味で。あのスティーヴン・キングが絶賛した『ブラック・サマー:Zネーション外伝』は、ゾンビの新しい可能性を導き出した作品である。
世紀末を駆け抜ける人間とゾンビのスピードチェイス
死んだ人間がすぐさまゾンビと化して生きた人間を襲う。そんな終末へと向かい始めた世界で出会った見ず知らずの人々は、それぞれの事情と思惑を持ちながらも、力を合わせて生き延びようとする。
ローズは夫、娘とともに軍のチェックポイントへたどり着くが、夫の腹には傷が...。安全地帯であるスタジアムへの輸送を断られた夫にローズは寄り添うが、そうこうしている間に娘を乗せた軍用車両は出発してしまう。やがて夫はゾンビ化し、妻を見つけると全速力で襲ってくる。フェンスによじ登るローズを助けたのは軍人スピアーズ。どうして軍人がここに? スピアーズにも何か事情があるのだろうか。
キャラクターの魅力が画面から伝わるドラマ
ウェブメディアの米IGNは、本作を「これまで経験した中でも強烈さでは指折り」の作品で、「ゾンビ作品として初めての試みや、多くのアップグレード」が詰まっていると評す。数あるゾンビ作品のいいとこ取りをしたものが『ブラック・サマー:Zネーション外伝』であるとしている。
IGNの言う「初めての試み」は、本作の構成についても言える。通常、ドラマの構成要員にはメインキャラとメインの味方として現れるサブキャラ、敵対するキャラなどと役割が分かれているものだが、本作では誰がメインキャラなのか分からない。メインだと思っていたキャラクターが次の瞬間にいなくなったり、サブだと思っていた人物が次のエピソードでフォーカスされたりするのだ。IGNはこれを「携帯を数秒いじって顔を上げたら、誰かがどこかへ行ってしまっている」状態であると書いている。この構成はすべてのキャラクターが魅力的でないと成し得ないだろう。
米New York Times紙は、「8つのエピソードすべてがそれぞれ独立した形ででき上がっている」と分析。エピソードごとに登場人物一人ひとりに焦点を当てる構成は、一つの話を作るだけの魅力をそれぞれのキャラクターが備えているという証拠だ。
ローズやスピアーズだけでなく、同じゾンビにおよそ15分間追われ続けるランス、耳が聞こえないライアン、韓国語しか話せない上に字幕がつかないので登場人物同様に視聴者の多くも本人の話す内容が分からないサン。それぞれの個性が混ざり合い、全力疾走するゾンビとともにハリケーンとなって視聴者を襲う。息もつかせぬ展開は、ネタバレサイトを覗かず楽しんでほしい。
斬新な構成で展開する『ブラック・サマー:Zネーション外伝』は、Netflixで配信中。(海外ドラマNAVI)
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Netflixオリジナルシリーズ『ブラック・サマー:Zネーション外伝』