人気ドラマ『POSE』シーズン2 深刻になるエイズ問題、LGBTQコミュニティに危機

「ボール・カルチャー」に生きる喜びを見出した、LGBTQ(性的少数者)のメンバーたち。ハウスと呼ばれるダンスチームを組み、大都会の地下で華々しい衣装とスキルを競い合う。しかしコミュニティ内ではエイズが流行し...。『POSE』シーズン2は、米FXで6月上旬から放送中。

【関連記事】『POSE』の他にもこんなにある、LGBTQドラマ一覧はこちら 

やっと「家族」を見つけたメンバーたちに、再び暗雲

80年代後半のニューヨークを舞台に、ファッションとダンスを競う「ボール・カルチャー」を描く本シリーズ。当時まだ社会に受け入れられなかったLGBTQのメンバーたちは、ボールルームに集い、華麗なテクニックを披露しては技を高め合っている。

物語の主役はトランスジェンダーのブランカ(MJ・ロドリゲス)。エレクトラ(ドミニク・ジャクソン)率いるハウス・オブ・アバンダンスというハウスに所属していたが、HIV陽性の宣告が。これを機に独立し、自ら「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」を設立する。同性愛者だと両親に知られ勘当を言い渡されたデイモン(ライアン・ジャマール・スウェイン)もエヴァンジェリスタに加わり、まるで一つの家族のように結束。同時に、二つのハウスの間に散る火花は熾烈になっていく。

時代を90年代に移したシーズン2は、重苦しい葬儀のシーンで開幕。ブランカはボールルームを取り仕切るプレイ(ビリー・ポーター)とともに、粗末な墓が集まるハートアイランドを訪れる。無念にもこの世を去った仲間に花を手向けるためだ。当時はLGBTQコミュニティを含め、エイズが猛威を振るっていた時代。ただでさえ社会の隅に置かれている彼女たちは一層困難な立場に追いやられてしまう。

エイズ問題をシリアスに扱う

活気に満ちたキレの良いダンスシーンに目を奪われがちな本作だが、メンバーの一部が悩まされるエイズ問題もシーズン2の大きなテーマの一つ。現実世界のアメリカでの経緯を振り返ると、シーズン1冒頭の時期にはHIVによる死者は年間約5000人だった。しかしシーズン2の時期に近い1990年になると、その数は一気に年間1万4000人に。当時いかに深刻な問題であったかがわかる。LGBTQのコミュニティ内では、問題がさらに深刻。誰か身近な人がHIVに感染しない限り、この痛みを一般社会の人々は知ることがないのだろう、とメンバーの絶望感をVulture誌は代弁している。

今シーズンではLGBTQのキャラクターが直面する危機をさらに深掘りしている、とEntertainment Weekly誌。エイズの大流行に加え、女性の性を選択したトランスジェンダーに対する暴行行為も発生。ボールルームでハツラツとしたダンスを舞い続けるメンバーたちだが、その笑顔の裏には、コミュニティに蔓延する深刻な事態が隠されている。

生命感溢れるドラマに感涙

シリアスなドラマパートが強化されているものの、シリーズの売りである賑やかで喜びに満ちた空気感も引き続き楽しめるのでご安心を。危機感を掘り下げると同時に、生き生きとしたボールルームでの見せ場と高揚感溢れるファミリードラマをミックスしている、とEntertainment Weekly誌。もったいぶった演出、ユーモアのセンス、そして心温まる家族の物語が、一つのシリーズのなかに同居している。涙を誘うシーンも毎話に盛り込まれており、さらにその手法は感動作『THIS IS US/ディス・イズ・アス』よりもさり気ない、と同誌は賞賛している。

絶望的な事態を茶化すようなブラックなユーモアと、トゲのある刺激的なキャラクターを評価するのはVulture誌。こうした組み合わせはエイズをテーマにした歴代の名作でもよく見られると分析している。同誌は、温かみと心地良さを感じるドラマ性にも注目。行き場のない者たちが互いに頼ることのできる「家族」を形成し、自分たちだけの社会を作り上げてゆくストーリーが共感を呼ぶ。

困難に負けない力強い生き様に心打たれる『POSE』シーズン2は、米FXで放送中。記事中に登場した『THIS IS US /ディス・イズ・アス』は、日本からもAmazon Prime Videoで視聴可能。(海外ドラマNAVI)

Photo:

『POSE』
(C) lev radin / Shutterstock.com