『ブレードランナー』監督による和風ホラー『ザ・テラー』続編 戦時下の日系アメリカ人に忍び寄る恐怖

夏にぴったりの和風ホラーは海を越えて人気のようで、幽霊をテーマにした新作ドラマが現在アメリカで放送中だ。戦争下、アメリカに住む日系人たちが周囲の敵対的視線におびえているところへ、幽霊の呪いという二重の狂気が彼らに降りかかる。人気ホラーアンソロジーの第2弾となる『ザ・テラー』シーズン2は、米AMCで8月12日(月)から放送スタートし、日本ではAmazon Prime Videoで順次配信中だ。『ブレードランナー』『グラディエーター』監督のリドリー・スコットが前作に引き続き製作総指揮を務める。

ホラー企画続編、舞台を一新

昨年公開された第1弾は、19世紀に発生したイギリス海軍の失踪劇がモチーフだった。カナダ北部を通過する「北西航路」の開拓に旅立った船団が、極寒の極限状態で海の魔物の恐怖に震えるという内容。鉛中毒や人肉食など史実に基づいたサバイバルドラマとして息をのむだけでなく、北極に生息する不気味なモンスターが恐怖を加速した。

第2弾となる今作では舞台を一新し、第二次大戦中の日本人コミュニティにスポットライトを当てる。主人公はサンフランシスコのコミュニティに暮らす、写真愛好家のチェスター(デレク・ミオ)。日本から移住してきた父・ヘンリー(宇佐美慎吾)と母・アサコ(森尚子)の間に生まれた彼は、戦争下という肩身の狭い状況で、純粋な日本人でもアメリカ人でもない自分のアイデンティティに悩んでいた。

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チェスターは写真撮影に没頭して苦境を忘れるが、それもつかの間、ラテン系のガールフレンド・ルツ(クリスティーナ・ロドロ)に予想外の妊娠が発覚。悪い報せは重なるもので、日系人の強制退去を可能にする大統領令9066号が発令され、チェスターのコミュニティは存続の危機に追い込まれる。そんな折、チェスターが各地で撮る写真に、顔がない女(祐真キキ)が続々と写り始め...。

敵地で生きる日系コミュニティの恐怖

『ザ・テラー』シリーズ第2弾となる今シーズン。前期と同じく、異種の恐怖のかけ合わせというテクニックを踏襲している。シーズン1では北極圏を舞台に、物資も食料も尽き始めるという現実の恐怖を主軸に設定。それに加え、ホッキョクグマに似たどう猛なモンスターの存在を匂わせることで恐怖を増幅した。

今作のケースでは、大統領令9066号が現実の恐怖に相当する。ただでさえ戦時下のアメリカ社会から敵対的な視線を受けていたチェスターたちだが、発令により強制退去が目前に迫る。英米の兵士たちに拘留され、ショック状態に陥るコミュニティの人々。その目線から語られる物語であり、兵士たちとの埋めがたい溝を描いた作品だと米Varietyは紹介している。

軍部による監視が強まると、チェスターとその友人・ウォルト(リー・ショーテン)は誰かに見張られているような感覚を日常的に覚えるようになる。得体の知れない視線について語り合う二人のシーンを、米Entertainment Weeklyはピックアップ。悲惨な日々を笑い飛ばそうとするウォルトの気丈な態度が健気だ。全般に緊迫感にあふれる作品だと評価している。

人知を越えた女の影

コミュニティの置かれた状況に加え、人知を超えた恐怖がストーリーを盛り上げる。Entertainment Weeklyは不気味な女の影を指摘する。チェスターの撮る数々の写真には、首から上だけが不自然にぼやけた和装の女性の姿が...。説明のつかない力を持った幽霊のような女、と同メディアは表現している。

やがてチェスターの人生は、その女性の力により望まざる方向に動き始める...。人種主義や不当な扱いと並んで、幽霊女の存在が彼を悩ませる。はじめはただひたすら恐ろしい存在だが、物語が進むと少しずつ正体が明らかに。ユウコという名があること、そして切ない過去を秘めていることが紐解かれると、ホラーとは一味違った感情が押し寄せるだろう。

二つの恐怖に戦慄する『ザ・テラー』シーズン2は、全10話構成で米AMCで放送中。日本では、『ザ・テラー』シーズン1と2をAmazon Prime Videoで独占配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ザ・テラー』シーズン2
(C)Ed Araquel/AMC
(C)Maxine Helfman/AMC