HBOから挑戦的なコメディ『A Black Lady Sketch Show』 陽気な4人組を襲う理不尽...

アメリカで新たに登場したコメディ『A Black Lady Sketch Show(原題)』は、全6話で贈るスケッチショー。日本のコント番組のように、短いシーンを重ねる形式のコメディ・シリーズだ。番組にはアフリカ系アメリカ人の女性4人がレギュラーキャストとして出演するほか、多彩なゲストがシーンを賑やかに演出する。8月上旬から米HBOで放送中。

悲劇に笑いが止まらない

共同製作のロビン・テードは、作家業と同時に女優業もこなす。その多才ぶりを活かし、劇中でメインキャラクターのひとりとしても出演している。彼女を筆頭にした陽気で仲の良い4人組が、不合理な状況に遭遇。毎回ドタバタ騒ぎを引き起こしてゆく。

基本的には短いシーンを次々に見せてゆくスタイルだが、なかには複数のエピソードにまたがって継続するシチュエーションも。4人が山の上に密かに集い、ドミノに興じながらワインを傾けるくだりは必見。シリーズの縦糸となるこのシーンでは、楽しかったはずの集まりがやがて大惨事へとメンバーたちを導く。

枠にとらわれない思想とモチベーションの向上を説く怪しげな博士(ロビン)や、存在感がなさすぎて気づかれないことだけが取り柄のスパイ(アシュリー・ニコール・ブラック)など個性豊かなキャラクターがずらり。女優のアンジェラ・バセット(『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズ)や歌手のパティ・ルポーン(『ナイトメア』シリーズ)など、豪華ゲストの登場も楽しみのひとつだ。

傑作でウィットに富むシリーズ

番組は愉快かつ挑戦的で、そしてエネルギーに満ちている、と米Hollywood Reporterは表する。悲惨な出来事が毎回4人に降りかかり、その後の顛末をオーバーに誇張しながら描くという形式。4人が切羽詰まるほどに、気の毒に思いながらも笑いがこみ上げてしまう。ダークなユーモアと滑稽な演技が面白く、さらに互いに独立した挿話ごとにトーンを変えてくる点も巧みだ。シリーズ監督のダイム・デイヴィスの指揮の下、コメディの技巧が詰まった作品だと同メディアは感服している。

シリーズのユニークさを歓迎するのは米USA Today。ほかのコメディアンには考えつかないようなジョークに満ちた、傑作で機知に富む番組だと評価している。もし職場にメイクなしで通ったら...という親しみやすい設定から、マニアックなネタまで多くを取り揃える。惜しむべくは、シーズン1が6話しか用意されていない点だ。ストリーミングに登場したあかつきには、ファンはあっという間に視聴してしまうだろうと同メディアは述べている。良質なコンテンツならではの贅沢な悩みだ。

脚本もお手の物 才能あるアシュリー

キャストはみな逸材だが、あえてひとりを挙げるならば、スパイを演じるアシュリーの良さが一歩抜きん出ている。コメディアン兼ライターとして活躍する彼女は、2016年から続くニュース風刺番組『Full Frontal with Samantha Bee(原題)』の脚本にも協力するなど、さまざまなフィールドで挑戦を続けている。作中では平凡すぎて人に気づかれにくいというスパイを演じる彼女だが、その演技力は決して平凡ではない、とUSA Todayは評価。

本作への彼女の参加に、Hollywood Reporterも期待を高めている。前掲のニュース風番組では、時事のネタを取り入れ、作中のスタジオに架空の論戦を巻き起こしたことで人気を呼んだ。同番組の脚本への参加は昨冬で終えており、本作が彼女の新たな活躍の場となりそうだ。

新作コント・シリーズ『A Black Lady Sketch Show』は米HBOで放送中。アシュリーが脚本を共同執筆していたニュース番組風コメディ『Full Frontal with Samantha Bee』は、日本でもYouTube公式チャンネルで英語版だが視聴可能だ。(海外ドラマ)

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