ロサンゼルスでは季節の変わり目になると、ビバリーヒルトンというホテルで、TV批評家協会(TCA=Television Critics Association)のために新作お披露目会が行われる。1週間ほど続くお披露目会では、日替わりで大手スタジオがホテルの部屋を何部屋も借り切って、キャストたちと記者たちのグループ・インタビューが実施されたり、スタジオの責任者や主要キャストが新シーズンについて記者からの質問に答えたり、大広間で新作の試写が行われたりするのだ。今回はスターチャンネルを通じて、日本の海外ドラマファンの皆さんとも関係が深いHBOのお披露目会にお邪魔してきた。
20年以上にわたり名作ドラマを多数輩出
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HBOといえば、この春に完結した『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界的ヒットが記憶に新しいが、1990年代から『OZ/オズ』『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』『SEX AND THE CITY』などで批評家・視聴者の双方から好評を得てきた。『GOT』が終わった現在も『TRUE DETECTIVE』『FARGO/ファーゴ』『ウエストワールド』といった人気シリーズを擁している。
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HBOは話題作りにも長けている。『GOT』が社会的現象となったのはもとより、その最終シーズンと時を同じくして話題を集めたのが『ビッグ・リトル・ライズ』だ。シーズン1での二コール・キッドマン、リース・ウィザースプーンという大物女優の共演も注目されたが、今年放送されたシーズン2は大御所メリル・ストリープが出演ということで大変な話題となった。なお、メリルがアル・パチーノ、エマ・トンプソンらと共演した2003年のミニシリーズ『エンジェルス・イン・アメリカ』もHBO作品だ。
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5月より全米で放映されたミニシリーズ『チェルノブイリ』も大変な話題を巻き起こした。あまりにも凄惨なことからこれまでハリウッドが手をつけなかったチェルノブイリ原発事故の体験手記を元にした本作は、見た人たちから「意を決して見るように」という口コミが出回ったほどで、原発事故の恐ろしさはもとより、被害拡大の裏に隠された旧ソビエト連邦側の恐ろしい画策と、事故の真実を葬らせまいと命をかけて奮闘した関係者たちを見事にドラマ化している。
新ストリーミングサービスが与える影響とは
『GOT』が完結した今、HBOはどう進んでいくのか。本年度のエミー賞で歴代最多のノミネート数を記録した同局だが、頂点に君臨し続けるには絶え間ないヒット作と新機軸が不可欠だ。
『GOT』放送中から進められていた同作のスピンオフ企画に関しては、複数ある企画のうち1作の第1話撮影がすでに終了しているそうで、『GOT』旋風はまだ続きそうだ。
また、NetflixやAmazonに続き、11月から「Disney+」が参戦するストリーミングサービスにも、HBOの親会社である巨大マスメディア企業、ワーナーメディアが「HBO Max」というストリーミングサービスを展開させると7月上旬に発表している。
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そんな「HBO Max」の出現は、HBOにどんな影響を与えるのだろうか? パネルディスカッションで番組編成担当代表のケイシー・ブロイズ氏が以下のように答えている。「HBOには45年の歴史があり、素晴らしい番組を提供するというブランドとして成り立ってきた。(「HBO Max」に)HBO の名前が冠されたのはある意味、誇らしいこと。ワーナーメディアの社長たちからはHBOをこれからも中枢と見なすと言われているし、最高な番組を作っていけるように資金も用意してくれている。諸々の詳細は、彼らの用意が整った時点で知らせてくれるはずだが、HBOの番組作りや編成への影響はないはず」
「HBO Max」は10月下旬にその全容が発表される予定だ。今年いっぱいはβ(試用)期間とし、一般的に使用できるのは来年から。スポーツやニュースに加え、ワーナーが所有する人気シリーズの『フレンズ』や『プリティ・リトル・ライアーズ』が配信される。さらに、ワーナー傘下の民放チャンネルCWの番組も見られるほか、『ゴシップガール』のリブートやSF映画『デューン』のスピンオフドラマ、ホラー映画『グレムリン』のスピンオフアニメといったオリジナル番組も多数待機している。
こうしたラインナップを見ると、「HBO Max」は「HBO」というレーベルが付いてはいるものの、ケーブル局のHBOとは完全に別個のものであることが見て取れる。
「質」を最優先に、新たな動きも
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HBOの目玉作品は日曜の夜(『GOT』の枠)に放送されるものだったが、その傾向は変わりつつある。ブロイズ氏はオリジナル番組の時間数を、今年度の150時間から来年度の2020年は160~165時間に増やす予定だと明かした。それまでオリジナル番組の入っていなかった月曜夜に放映された『チェルノブイリ』や『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』が成功したことを受けての判断だ。
もちろん時間が約1割増えるとはいえ、HBOの特徴の一つであるクオリティは担保されていくはず。ブロイズ氏も「当然のことながら、我々が目指すのは量ではなくて質で、空いたスロットを番組で埋めるわけではない。番組の質が優先だ」と話している。
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2019年シーズンの前半は、『ゲーム・オブ・スローンズ』『チェルノブイリ』『ビッグ・リトル・ライズ』ら約10作ものオリジナル作品が放送された。シーズン後半も、今回の新作発表会で取り上げられた『His Dark Materials(原題)』『Watchmen(原題)』『The Righteous Gemstones(原題)』のほか、『キング・オブ・メディア』『DEUCE/ポルノストリート in NY』『シリコンバレー』などの新シーズンが待機している。これらのラインナップが翌年はさらに充実するわけだ。
アメリカで最も長く続いているケーブル局として、約50年の歴史を誇るHBOは、これからも劇場映画並みの高品質番組をたくさん見せてくれそうで、ドラマファンとしては引き続き期待大である。
明日は、大注目の新作ドラマ『His Dark Materials』と『Watchmen』についてお伝えする。お楽しみに!
Photo:『ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』 The Final Season. View exclusive photos from #GameofThrones Season 8. © Helen Sloan/HBO 『ウエストワールド』シーズン2 ©2018 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 『ビッグ・リトル・ライズ』シーズン2 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 『チェルノブイリ』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. ケイシー・ブロイズ氏 © FilmMagic for HBO 『His Dark Materials』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 『Watchmen』 ©2019 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved. HBO® and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.