今だからこそ伝えるべきメッセージ！『マーキュリー・セブン』直撃インタビュー【3】

2020年11月6日 2020年11月6日 ※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます

1958年から1963年にかけて実施されたアメリカ初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」に抜擢された宇宙飛行士7人、"マーキュリー・セブン"の実話を描くナショナルジオグラフィックのドラマシリーズ『マーキュリー・セブン』が、Disney＋（ディズニープラス）にて10月16日（金）より日本初独占配信中だ。原作はトム・ウルフによるベストセラー「ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士」で、1984年には映画化もされている。そのキャスト＆スタッフの直撃インタビューをお届けしよう。

米ソ冷戦の中で「マーキュリー計画」に選ばれた宇宙飛行士たちは、国家の重圧に耐えながらも、仲間との絆を深め、一躍有名になっていく一方で、宇宙飛行士に求められる"ライトスタッフ（己にしかない正しい資質）"とは何かを追い求めながら、挑戦し続ける姿を描き出す。彼らの不安や心の葛藤を抱えながらも夫を懸命に支えた妻や家族、彼らの周囲の人々の心の動きや絆も見どころ。"普通の人間がいかにして非凡なことを成し遂げられるのか"というテーマを、実話を通して語りかける。

キャストは、『SUITS／スーツ』のマイク役で知られるパトリック・J・アダムスをはじめ、ドラマ版『リミットレス』のジェイク・マクドーマン、『ワンス・アポン・ア・タイム』のコリン・オドナヒュー、『MAD MEN　マッドメン』のアーロン・スタトン、『One Tree Hill／ワン・トゥリー・ヒル』のジェームズ・ラファティ、『エスケープ・アット・ダンネモラ～脱獄～』のマイカ・ストック、『マーベル　インヒューマンズ』のマイケル・トロッターなど。製作総指揮には、プロデューサーとしてもアカデミー賞ノミネート経験のあるレオナルド・ディカプリオのほか、『ホワイトカラー』や『キャッスルロック』の脚本を手掛けたマーク・ラファティも名を連ねる。

今回登場するのは"マーキュリー・セブン"を技術面で支えたスタッフたち、ジョシュ・クック（ロウドン・ウェインライト役）、パトリック・フィスクラー（ボブ・ギルース役）、エリック・ラディン（クリス・クラフト役）、そして脚本家のマーク・ラファティ。"マーキュリー・セブン"との再会や作品にこめられたメッセージの重要性について語ってもらった。

――エリック、あなたはすでに『フォー・オール・マンカインド』で宇宙ものを経験されていたわけですが、続けての宇宙ドラマはいかがでしたか？

エリック：たしかに別の宇宙ドラマに出て間もなかったけど、マーク・ラファティによる本作の脚本を読んだ途端、どうしても参加したくなったんだ。俳優として脚本で最初に気になるのはセリフなんだけど、マークは優れた手腕を発揮しているよ。もともと彼のファンではあったんだけど、これを読んだ時は、「参加したい」じゃなくて「なんとしても参加しないと」という強い思いに駆られたくらいさ。前の作品とはまた別の宇宙にまつわるストーリーを伝えることができて嬉しいよ。

――パトリックは様々なドラマに出演されていて、『SUITS／スーツ』『ワンス・アポン・ア・タイム』『MAD MEN　マッドメン』にも参加されていましたね。つまり、"マーキュリー・セブン"のうちパトリック・J・アダムス、コリン・オドナヒュー、アーロン・スタトンとすでに共演したことがあったわけですが、その経験は本作に生きましたか？

パトリック：演技というものは俳優同士のケミストリーが大切で、共演相手のことを知っているに越したことはないんだ。実は僕はエリックとも、これまで共演したことこそなかったけど、ずっと前からの知り合いだしね。彼とは別々にキャスティングされたんだけど、すでにお互いのことを知っているというのは演じる上で助けになったよ。相手との間にケミストリーがあれば、そのシーンはものにしたも同然なんだ。それと同じように、コリン、パトリック、アーロンとすでに一緒に仕事をしていて知り合いであるということも、プラスでしかなかった。「やあ、会えて嬉しいよ。調子はどう？」といった初対面の時のやり取りがもはや必要なくて、スムーズに演技に入れるからね。同じことはジョシュにも言える。一緒に仕事をするのは初めてだけど、前から知り合いだったんだ。だから、僕にとっては本当にやりやすい環境だったよ。

――本作で大変だったことは？

ジョシュ：みんな何かしらの苦労があったと思う。僕に関しては、「正当にやるんだ」と自分に言い聞かせていたね。歴史的にとても重要な出来事であり、多くの人たちの努力を伝える作品なので、とにかく正しくやりたかった。人間関係を細かく描き、途方もない使命を背負った人たちは血が通った人間であることをちゃんと描きたかったんだ。

ラファティ：脚本を書いた側として、ジョシュの言ったことは正しいと思う。彼らは血が通った人間であり、その物語をきちんと伝える必要があるんだ。膨大な情報を処理できないと、人物の表面しか描くことができない。彼らはみんな興味深くて魅力的なのにね。だから、僕の場合は、そんな大量の情報をきちんと紐解き、それぞれの繋がりを見つけて、物語を綴っていかなければならなかった。とにかく時間がかかって、大変な作業だったよ。

エリック：夏のフロリダでウールのスーツを着るのも大変だったね（笑）

ジョシュ：たしかに（笑）

――1960年代を舞台にした宇宙がテーマの本作をこのタイミングで製作した理由は？

ラファティ：僕が考えるに、本作のアプローチは誰もが共感できるようなキャラクターを見せることなんだ。ここにいるパトリックやエリック、ジョシュのキャラクターはもちろん、"マーキュリー・セブン"も普通の人間だ。彼らを持ち上げたり、手の届かないような存在にしないよう、細心の努力を必要としたよ。その一方で、彼らが挑戦していることは偉大なことであると同時に命を落とす危険をはらみ、それまで誰もやったことがなかったことであることも見せなければならなかった。普通の人が偉大なことを成し遂げることもあると伝えたいんだ。それは僕ら一人ひとりに言えることであり、そのメッセージは今の世界ではいっそう伝えるべきメッセージだと思う。みんなで力を合わせて困難を乗り越えていかなければならないんだ。

――本作を通して視聴者にどんなことを伝えたいですか？

エリック：これはインスピレーションと希望の物語だ。彼らの時代は今ほどテクノロジーが進歩していなかったけれど、一緒に力を合わせることで素晴らしいことを達成することができた。今、絶望や断絶感を味わっている世界中の人々に伝えるべきストーリーだと思う。この作品を見た人には、自分たちが力を合わせればより強くなれることを思い出してほしいね。こういう風に自分の家から世界と繋がって取材が受けられるように、技術の進歩には目覚ましいものがある。でも僕らにはとても素晴らしいことをできる力があるんだ。この作品を通して、パンデミックから抜け出すための希望を伝えることができればいいね。

――今回は記録資料が多かったと思いますが、どのくらいリサーチを行ったのですか？

ラファティ：とにかく多かったよ。僕だけでこの話題について永遠に語ることもできるけど、みんなも自分たちのリサーチについて語りたいかな？

ジョシュ：マークたち脚本家チームはとにかく忙しかっただろうね。ほら、マークなんて（ラファティの背後に本がたくさん詰まった本棚があるのを示して）いまだに本に囲まれてるんだから！　きっとあそこの本は全部『マーキュリー・セブン』関連だね（笑）彼がさっき言っていたけど、たくさんある情報の中から適したものを見つけ出し、物語に当てはめる必要があった。本作は8時間あるけど、入れたかった要素を全部合わせると、それでは到底時間が足りないくらいの量があったんだ。

ただ、俳優である僕らは、自分の演じるキャラクターだけに集中すればいいから楽だったよ。例えば僕の場合は、演じたロウドンが書いたものに可能な限り全部目を通した。とにかくたくさんあったんだ。あとは、彼について書かれた本を読んだり、ロウドンの子どもたちが父親について話しているインタビュー映像を見たりした。そういう情報から彼の人物像に迫っていったんだ。とはいえ、脚本家たちの苦労には及ばないだろうけど。

ラファティ：ここにいる3人（ジョシュ、パトリック、エリック）は何度も僕のところへ来ては、「君はきっと知らないだろうけど、彼にはこういう情報もあったんだ」と、キャラクターに関する新しい情報を持ってきてくれた。それは毎回実のある内容だったよ。必ずしもその全部を物語に盛り込むことはできなかったけどね。でも知らされる内容はいつもビックリするようなものだった。そのくらい、みんながあらゆるソースを探してくれたんだ。本作に参加した俳優が全員、作品に全力を傾けていてくれるのは嬉しいものだね。おかげで僕の仕事もかなり楽になったよ。

――本作の最初の2話を見た限りでは、ジョン・グレンとアラン・シェパードについて多くが語られていました。毎話で一人のキャラクターに焦点を当てていくことになるのでしょうか？　登場人物たちが各自のストーリーを伝えられるように工夫したことはありますか？

ラファティ：いい質問だね。それこそ脚本家ルームで話し合われていたことなんだ。僕らは作品に柱となるものを与えたかった。大勢のキャラクターが登場し、それぞれのストーリーが綴られるが、グレンとシェパードのライバル関係を視聴者がずっと見続ける主軸のテーマに据えることにしたんだ。そういう風に軸となるテーマを決めることで、ほかのキャラクターについても掘り下げやすくなったんだよ。

僕らは、おそらく視聴者たちが知らないであろうこと、グレンとシェパードがいろんな点において対照的な存在で、心の中で競争し合っていたことを伝えたいと思ったんだ。それによってドラマにも厚みが増すからね。"マーキュリー・セブン"がアメリカで最初の宇宙飛行士であることは有名だけど、グレンとシェパードの頭の中に入って、表面に見えているもの以上のものがあると知ることは面白い経験だった。