太陽王ルイ14世の愛と欲望を描く豪華絢爛のドラマ『ヴェルサイユ』

ヴェルサイユと聞いて日本人が一番に思い出すのは、池田理代子原作の「ベルサイユのばら」だと思うが、ベルばらが好きならこのドラマにハマることは間違いなし。日本初上陸となるシーズン3をはじめ、全シーズン一挙放送となる歴史ドラマ『ヴェルサイユ』の魅力について語ってみたい。

太陽王と呼ばれたルイ14世の若き日々を描いた『ヴェルサイユ』は、サイモン・ミレン(『クリミナル・マインド』)とデヴィッド・ウォルステンクロフト(『MI-5 英国機密諜報部』)の企画・製作総指揮による、仏Canal+(カナルプリュス)オリジナルドラマだが、台詞は英語で英国俳優が多く出演する。

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シーズン1より
ルイ14世役は、ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012年)のグランテール役を務めたジョージ・ブラグデン。透き通るような青い瞳の端正なルックスで、自信に溢れた国王を演じる。ルイの実弟オルレアン公フィリップ役にはアレクサンダー・ヴラホス。ファンタジードラマ『魔術師 MERLIN』やウェストエンド(舞台)で活躍する俳優だ。

ドラマのはじまりは1667年のフランス。親政を開始したばかりの28歳のフランス国王ルイ14世がパリ郊外の狩猟場であるヴェルサイユの地に壮麗な宮殿の建設を命じる。このヴェルサイユ宮殿を舞台に、王と貴族たちのドロドロの愛憎劇と陰謀、欲望、権力争いが繰り広げられていく。

ポイント1 幸せとは何か?など普遍的なテーマを追求した人間ドラマ

『ヴェルサイユ』はあくまでフィクション・ドラマであり、シリーズ独自に作られたストーリー展開も多いが、大まかなところは歴史に忠実に描かれている。

フランス絶対王政を築き上げたルイ14世は、貴族たちをヴェルサイユ宮殿に住まわせ、国王の監視下に置くことで貴族たちを統制したという。貴族はおろか、王族までもゲームの駒のような扱いで、本人の意思とは関係なく、政治や陰謀や政略結婚に利用されていく。贅沢に何不自由なく暮らしている彼らだが、実は自由意思はなく、ヴェルサイユ宮殿は監獄同様だったのだ。

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シーズン1より
一方、パリで暮らす庶民たちは貧しいながらも力強く自由に生きており、王や貴族たちの贅沢な暮らしや不公平な世の中に疑問を持ち、やがてそれが後世のフランス革命へと繋がっていく。人間群像ドラマ、社会派ドラマ的なディープな面もあり、薄っぺらい宮廷恋愛ドラマに終わらないのも魅力の一つだ。

ポイント2 不倫や乱行もアリの過激な官能シーン

イギリスで『ヴェルサイユ』が一躍話題になったのは、その濃厚でリアルな性描写。シリーズ開始時はセンセーションを巻き起こした。ルイと女性たちの絡みが中心だが、同性愛者であるフィリップもエロさでは負けていない。貴族たちの乱交パーティ、不倫、男色など、とにかくエロティックなシーンが多かったが、この時代のフランス宮廷では結婚していても異性・同性を問わず複数の愛人をもつのが普通だったそうなので、ある意味ドラマは史実を忠実に描写しているともいえよう。シーズン3では少し官能色が薄れ、代わりにルイ14世の出生をめぐる謎を探るミステリー的展開となり、また違う面白さを打ち出した。

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シーズン1より
 

ポイント3 愛と欲望に生きる魅力的なキャラクターたち

ルイ14世には正妻マリー・テレーズ妃がいるものの、ルイーズ・ラ・ヴァリエール、モンテスパン夫人、マントノン夫人など周りの女性と次々に関係をもち、フィリップの妻であるアンリエットとも恋に落ちる。そんな王の寵愛を一番に受けたいと思う女性たちの争いもすごい。

しかし、ルイの女性遍歴以上に注目なのが、ルイとフィリップの兄弟関係だ。兄ルイは自由奔放に生きるフィリップを妬む。一方、幼い頃から王弟として常に兄の影にあったフィリップは兄の存在を疎ましく思う。しかし実は、誰よりも兄を愛し、陰ながらサポートしているのがフィリップだ。その兄弟愛がどのように変化していくかがドラマの裏テーマでもある。

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シーズン3より
主役のルイを上回るほどの存在感を放つフィリップ。女装して舞踏会に出席し、愛人のシュヴァリエ・ド・ロレーヌと昼間からいちゃつく、パーティ好きのナルシストなのだが、兄へのラヴ&ヘイトな想いに翻弄されるところがいじらしい。そうかと思えば、オランダ侵略戦争で軍を指揮してフランスに勝利をもたらすという男気溢れる一面もある。シーズン3では、フィリップと2番目の妻リーゼロッテ、シュヴァリエの3人が信頼と絆を深め、恋愛を超えた奇妙な三角関係を結んでいくのも見ものだ。さらに、警察長官のファビアン・マーシャル、王に忠実な側近ボンタンなど、渋い脇役もとても良い。

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シーズン3より 一番左:ファビアン・マーシャル、右から3番目:ボンタン
 

ポイント4 とにかくゴージャスな衣装と映像美

絶対的権力を持ち、好色な君主が主人公のドラマというと、ジョナサン・リス・マイヤーズがヘンリー8世に扮した歴史ドラマ『THE TUDORS ~背徳の王冠~』を思い出すが、イギリス王室がどこか質実剛健なイメージであるのに対し、フランス王室はどこまでもきらびやかで豪華絢爛。そう、このシリーズを一言で表すとすれば、「ゴージャス!」に尽きる。

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シーズン3より
撮影は実際にヴェルサイユ宮殿を中心に行われ、有名な鏡の間や噴水が美しい広大な庭園、部屋の内装や調度品の美しさにうっとりするばかり。

コスチュームも豪華だ。貴婦人たちのレースやリボンがいっぱいのドレス、キラキラの宝石、縦ロールのヘアスタイルが"ベルばら"気分を盛り上げる。男性陣は当時流行したロングヘアをきれいにカールしたスタイル。閣僚たちが着用するレース襟もお洒落だ。また、宮殿で行われるイベントの描写も美しい。毎晩のように繰り広げられる舞踏会や晩餐会、野外での遊戯、庭園での打ち上げ花火など、映像の美しさは特筆に値する。

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シーズン2より
 

ポイント5 豪華な宮廷生活の裏に隠されたヴェルサイユの闇とは?

豪華絢爛な反面、宮廷の暗部をもドラマは描く。例えば、ヴェルサイユ宮殿のトイレ事情について、貴族たちが従者に陶製の容器を持ってこさせ、各部屋の裏にある隠れ廊下にしゃがんで用を足すという衝撃的なシーンもあった。隠れ廊下は逢引の場になったり、廊下を行き交う使用人を使ってのスパイ工作が行われたりと、裏の世界での様々な取引に使われていたようだ。

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シーズン2より
また、この時代は残虐な拷問など当たり前。ルイ14世は若いときに貴族や民衆が反乱を起こしたフロンドの乱でパリから逃亡を余儀なくされたこともあって、王に謀反を図ろうとする動きのある者たちを容赦なく逮捕・死刑にした。冷静に仕事に徹するファビアンが反逆者に与える拷問シーンは思わず目を塞いでしまうほどの凄惨さだ。ほかにも、黒魔術、毒を盛っての暗殺、賭博、ドラッグでハイになる貴族たちなど、フランス宮廷の光と闇を映し出している。

 

『ヴェルサイユ』放送情報

CS放送チャンネル銀河にて
4月12日(月)24:00よりシーズン1から全シーズン一挙放送
シーズン3は日本初放送。お見逃しなく!
公式サイトはこちら

(文/Yoshie Natori)

Photo:

『ヴェルサイユ』[S1]©CAPA DRAMA - ZODIAK FICTION & DOCS - INCENDO VERSAILLES PRODUCTION INC. - CANAL + - 2015/[S2]©CAPA DRAMA - ZODIAK FICTION & DOCS - INCENDO VERSAILLES 2 PRODUCTION INC. - CANAL + - 2017/[S3]©CAPA DRAMA - BANIJAY STUDIOS FRANCE - ENTRE CHIEN ET LOUP - CANAL + - RTBF (Télévision belge) - PROXIMUS - ZODIAK BELGIUM - 2017