米Varietyが発表した2020-2021シーズンで最も視聴されたネットワーク&ケーブル放送のテレビシリーズランキングでは、米CBSの犯罪捜査ドラマ『NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班』が平均視聴数1270万人でトップに立った。ビデオオンデマンド(VOD)の浸透によりリニアTV(従来型のTV放送)の視聴率は下降傾向にあるのは事実で、5年前の『NCIS』は平均視聴数2,050万人だった。
しかし、2003年にスタートした『NCIS』は今秋からシーズン19が放送される予定であり、他にも米ABCの『グレイズ・アナトミー』(以下『グレアナ』)はシーズン18、米NBCの『LAW&ORDER: 性犯罪特捜班』(以下『SVU』はシーズン21への更新が決定しているように、長年放送されているTVシリーズも依然として絶大な支持を受け、世界中に根強いファンを獲得している。
ところが、テレビ界のアカデミー賞と言われるエミー賞においては、これらのシリーズには目も向けられていないのが事実。『SVU』が最後にエミー賞にノミネートされたのは2011年で、オリビア役のマリスカ・ハージティが主演女優賞にノミネートされた(マリスカは2006年に同賞を受賞している)。『グレアナ』が最後にノミネートされたのは2012年で、この時はアデル役のロレッタ・デヴァインがゲスト女優賞に輝いた。全米視聴率ナンバーワンの『NCIS』に関しては、長い歴史の中でエミー賞のノミネート数はわずか3にとどまり、直近は2013年にスタントコーディネート賞に名を連ねた時。
もちろん、エミー賞の有権者が長寿シリーズに飽きるのは今に始まったことではない。医療ドラマの金字塔『ER 緊急救命室』はシーズン1で23ノミネート(内8部門受賞)を誇ったものの、ファイナルシーズンではわずか2部門ノミネート。また、エミー賞常連のコメディシリーズ『モダン・ファミリー』も最高17ノミネートからファイナルシーズンでは3ノミネートにまで落ち込んだ。
また、エミー賞がネットワークから離れていることも数字で証明されており、2010年はABC、NBC、CBS、FOXの主要4局で合計215ノミネートだったが、2020年は約半分の121ノミネートだった。
ゴールデンタイムのTVシリーズの中、昨年5つ以上のノミネートを得たのは『グッド・プレイス』、『THIS IS US/ディス・イズ・アス』、『ふたりは友達?ウィル&グレイス』の3作(いずれもNBC)。エミー賞で強く支持されていた『THIS IS US』は、残念ながら来年放送予定のシーズン6をもって終了することが決まっている。
事前のプレゼンテーションにて注目を集めている来季のネットワークのシリーズは、『SVU』、『シカゴ』フランチャイズ、『FBI:特別捜査班』、『NCIS』、『9-1-1 :LA救命最前線』など。これらは一定の視聴者を獲得しブランドを確立しているものの、エミー賞の世界では活躍が期待されていない。
ラジオ界では、リリースされたから数ヶ月後、または数年経っても需要のある曲には特別なカテゴリが用意されているように、エミー賞においても主力であるTVで長年にわたり愛されている作品に目を向けることを期待したい。(海外ドラマNAVI)
Photo:
『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』(c)2019 CBS Broadcasting, Inc. All Rights Reserved.
『グレイズ・アナトミー』(C) ABC Studios