ニコラス・ケイジの俳優人生は山あり谷あり。『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』で知られるフランシス・フォード・コッポラを叔父に持つ彼は、15歳で俳優として活動開始。叔父のほか、ノーマン・ジュイソン、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟、デヴィッド・リンチなどの映画に起用される。そして、1995年の『リービング・ラスベガス』でアルコール依存症の脚本家を演じ、32歳でアカデミー賞主演男優賞を獲得。その後はスター俳優として様々なハリウッド大作で主役を演じた。しかし、浪費癖により借金生活に陥るとキャリアも低迷。それでも近年、『スパイダーマン:スパイダーバース』の声優や『ザ・フラッシュ』のカメオ出演を経て、キャリアが徐々に回復してきた。
そんな彼の最新作がAmazonの新作ドラマ『スパイダー・ノワール』。ドラマ初主演となるニコラスが演じるのは、私立探偵ベン・ライリーだ。かつて“スパイダー”の名で知られる若きスーパーヒーローだったベンは、次第にヒーローとしての活動が重荷となり、ある悲劇をきっかけに引退。しかし、常識を超えた重大な事件が起き…。1930年代のニューヨークを舞台にした本作は、フィルム・ノワールの世界観とヒーロー・ドラマが交差。カラー版だけでなく、フィルム・ノワールらしいモノクロ版もリリースする、野心的な作品だ。
ニコラスが、そんな最新作のことはもちろん、「ずっと出たくなかった」はずのドラマに出演した理由、様々な噂などについて語っている。
-

ニコラス・ケイジが新スパイダーマンに!『スパイダー・ノワール』5月配信へ
ニコラス・ケイジがテレビシリーズ初主演を務める注目作『スパイ …
チャーリー・シーンがくれた、不安を解消するアドバイスとは?

――フィルム・ノワールがお好きなんですよね? お気に入りは?
「リチャード・ベースハートが出演していた1948年の映画『夜歩く男』は本当に素晴らしかった。子どもの頃に観たんだ。『スパイダー・ノワール』に大きな影響を与えた作品は、やはり『三つ数えろ』のテンポや高速の会話劇、それから『マルタの鷹』や『孤独な場所で』だね。ハンフリー・ボガート作品は大いに参考にした。自分の好きな古典俳優たち――ボガート、ジェームズ・キャグニー、エドワード・G・ロビンソン――のエッセンスを取り込みたかったんだ。白黒映像の中で成立する演技を目指した。撮影監督や衣装担当も同じ方向性で取り組んでいたよ。すべてが融合して、白黒版の『スパイダー・ノワール』を観ると、本当に別の時代へ連れて行かれる感覚が味わえるようにしたかったんだ」
――あなたが演じる私立探偵ベン・ライリーは、『ロング・グッドバイ』のエリオット・グールド版フィリップ・マーロウを少し思わせました。おしゃべりで皮肉屋で、人をからかうのを楽しんでいる感じとかが。
「それは分かるよ。ボガート的な要素で僕が注目していたのは、彼が妙に面白がっているところなんだ。『三つ数えろ』でファム・ファタールが悪事を働いていても、彼はどこか楽しそうなんだよね。他人の危険な部分を見るのを楽しんでいる感じがある。それを少し取り入れたかった。エピソードが進むにつれて、ほかの影響も見えてくると思う。連続ドラマの贅沢さって、こういう小さな“種”を植えて、後で花開かせられることなんだ。ショーランナーのオーレン・ウジエルと僕は、ベンがなぜああいう人間なのかを掘り下げていった。蜘蛛のDNAが体内にあるせいで、人間性を再プログラムしようとしているんだ」
――役作りではどんなことをしましたか? 蜘蛛の研究は?
「僕が古いドイツ表現主義映画が好きなのは有名だと思う。『吸血鬼ノスフェラトゥ』のマックス・シュレックが最後、光を浴びて煙になる前に、こういう動き(手を傾ける仕草)をするんだ。あれこそ、ドイツ表現主義的な身体表現だと思う。それが蜘蛛っぽい動きに見えたから、身体を使って動物的な感覚を作り上げた。蜘蛛のことは研究していないけど、少しは知っているよ。蜘蛛って筋肉がなくて、脚はストローみたいな構造で、(空洞部分に)液体を送り込んで動くんだ。それが動きのアイデアに繋がった」

――ドラマに出る決断をした理由は?
「ずっとテレビには出たくなかった。均質的で、誰かと同じことをする感じが嫌だったから。でもコロナ禍に息子が『ブレイキング・バッド』を見せてくれた。そこで、俳優が“時間”という贅沢を与えられていることに気づいた。ブライアン・クランストンがスーツケースをじっと見つめているシーンがあったんだけど、何分もそうしているように感じた。なのに目が離せなかった。映画ではそんなことはできない。時間がないからね。でも、(ドラマが描く)8時間の物語なら、映画では無理な“キャラクターの種まき”ができると思った。それが一番惹かれた部分だよ」
「『スパイダー・ノワール』では、自分が想像していたビジョンが完璧な形で実現した。怖かったし、リスクも大きかった。“クビになるんじゃないか”とずっと不安だったよ。古典俳優の演技スタイルと、スタン・リーの傑作『スパイダーマン』をぶつけて、ロイ・リキテンスタイン的なポップアート感覚を作ろうとしていたからね。8話すべてを観るまで、それが機能するか分からなかった」
――ドラマ出演にはかなり緊張したそうですね。
「本当にね。あるプロデューサーから、“Amazonにまだ完全には通ってないから読み合わせでモゴモゴ喋るなよ”と言われたんだ。それで不安になって、ドラマ経験が豊富な友人、チャーリー・シーンに電話した。“何がそんなに不安なんだ?”と聞かれたから、“プロデューサーにモゴモゴするなって言われた”と伝えたら、“そいつの名字はソニーか?”って。違うと言うと、“じゃあ、くたばれって言っとけ!”って(笑) それで大笑いして、読み合わせに行ったよ」
ジョニー・デップを俳優の道に誘ったのは「僕の金を盗み始めたから」
――あなたがジョニー・デップを俳優の道に誘ったというのは本当ですか?
「本当だよ。当時、僕らは同じ女性と付き合っていた。彼はギタリストで、最初は僕を嫌うつもりでロサンゼルスに来たけど、すぐ仲良くなった。ある日、二人でモノポリーをしていた時のことだ。その時の彼はかなり金に困っていた。確か、ペンを売っていたかな。僕のアパートに住まわせていたけど、酒を買うために僕の金を盗み始めた(笑) それで、モノポリー中に“俳優をやってみたら?”と提案してみた。彼は“演技なんてできない”と言ったけど、“できるよ。僕のエージェントに会ってみろ”と勧めた。それで歴史が始まったんだ」
――ケイジという芸名について教えてください。
「去年法的に改名したから、もう僕は本当にニック・ケイジなんだ。“他人の一族の端っこにいる道化の従兄弟”でいるより、自分自身の小さな家族の長でいたかった。だからケイジになることにした。コミック(ルーク・ケイジ)で見かけた名前で、響きがかっこ良かったんだ。芸術一家で育ったから、ジョン・ケイジの実験音楽の話も身近だった。ジェームズ・ディーンみたいに短くて強い名前が欲しかったんだ」

――サム・ライミ監督作の『スパイダーマン』でグリーン・ゴブリン役を断ったのは本当?
「本当。その件でサムとランチした時、“スパイダーマン役の俳優には、一人の時に本当に蜘蛛みたいに這い回るシーンをやらせてほしい”と言った。でも実現しなかった。彼は僕にグリーン・ゴブリンをやってほしかった。僕も『死霊のはらわた』シリーズが好きだから、彼と仕事してみたかった。でもその時、『アダプテーション』の話もあったんだ。だから、サムに『アダプテーション』を選ぶと言った。『ジム・キャリーはMr.ダマー』の時も『リービング・ラスベガス』を選んだ。この二つの選択は、僕にとって正しかったと思う」
――『TRUE DETECTIVE』のシーズン5に主演するんですよね?
「分からない。脚本は執筆しているみたいだけど、かなり前から何も聞いていない。契約もしていないし、まだ話している段階だよ。(クリエイターの)イッサ・ロペスが大好きだから、一緒に仕事できたら嬉しいけど、まだ具体的ではない。それに実はシーズン1も観たことないんだ。でも評判は聞いているよ」
――今回ついに“スーパーヒーローを自分のものにした”感覚はありますか?
「いや。僕はいつもアートからインスピレーションを得ている。『ワイルド・アット・ハート』ではアンディ・ウォーホルやエルヴィス・プレスリーのオーラを参考にした。今回はロイ・リキテンスタインを見て、“ポップアートのマッシュアップ”をやりたかった。僕は芸術の融合を信じている。一つの芸術形式でできることは、別の形式でもできる。だから僕が興味を持っていたのは、“スーパーヒーローを演じること”そのものじゃない。古典的な白黒映画の演技スタイルとスパイダーマンを衝突させられるか――そこに危険と興奮があったんだ」
『スパイダー・ノワール』はAmazon Prime Video(Amazon プライム・ビデオ)にて独占配信中。(海外ドラマNAVI)









