「模倣は最大の賛辞」と言われるが、テレビの世界ではオリジナリティが大きな価値を持つ。インパラを駆り、全米を旅しながら怪物狩りに身を投じるウィンチェスター兄弟の物語は、いまやホラー・アクションの金字塔だ。しかし、その誕生の背景には、1シーズンで打ち切られた伝説のホラーSF『事件記者コルチャック』の存在があった。驚くべきことに、初期の企画段階で『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』は、この名作の“模倣作”として動き出していたのだ。
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「模倣」から始まった壮大な旅路
『事件記者コルチャック』は、シカゴを舞台に事件記者コルチャックが巻き込まれる怪奇現象を描くテレビシリーズで、初期の段階から『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』のクリエイターに大きな影響を与えていた。クリプキは2014年の米Varietyのインタビューで、当初のアイデアが、このクラシックなホラー捜査ドラマに、さらに人気アニメの要素を加えたものだったと明かしている。
「基本的には、バンで旅をしながら都市伝説に立ち向かう若者たちという、『スクービー・ドゥー』のパクリのような企画を売り込もうとしていたんです。このアイデアはずっと手放せず、数年おきに何度も提案していました。最終的にワーナー・ブラザースと契約できた時、その形は記者になっていたんです。正直、『事件記者コルチャック』のパクリでしたが、世界観をしっかり作り込み、神話的な要素も盛り込みました」
『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』は、1話完結型の構成や週替わりの怪物といった点で『事件記者コルチャック』と共通しているが、類似点はそのくらい。とはいえ2018年には、『スクービー・ドゥー』とのクロスオーバー回が実現し、クリプキの原点回帰とも言える楽しいエピソードとなった。もっとも、この試みが可能になったのは、『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』がすでに独自のアイデンティティを確立していたからこそ。この長期にわたるシリーズの前提をどう構築したのだろうか？
運命を変えた“会議中の即興ピッチ”
最終的に完成した『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』は、一話完結の怪物退治（モンスター・オブ・ザ・ウィーク）という形式こそ『コルチャック』と共通しているが、その中身は全くの別物だ。2018年には、かつて自身のアイデアの種だった『スクービー・ドゥー』とのクロスオーバーも実現したが、それが可能だったのは、本作がすでに確固たるアイデンティティを確立していたからに他ならない。
では、このシリーズを成功へと導いた「独自のアイデンティティ」はどう生まれたのか。それは、企画会議という土壇場で放たれた“即興のアイデア”だった。
サム（ジャレッド・パダレッキ）とディーン（ジェンセン・アクレス）は、社会の裏側で生きるアウトローなハンターだ。偽造IDを使い分け、時に連邦捜査官、時に聖職者に成り済ます彼らの設定は、クリプキが崖っぷちの状況でひねり出したものだった。
「（記者設定では）もうダメそうだ、と感じた瞬間、私は即座に話を切り替えました。そして“記者設定はやめて、クラシックカーで旅をするクールな男たちが、都市伝説を追う話にしよう”と提案したんです。その場でふと思いついて、しかも、彼らは兄弟だと付け加えました。家族の問題を抱えながら、悪と戦う物語だとね」
CWの幹部たちが、この即興アイデア、特に兄弟という要素を気に入り、企画は承認された。こうして誕生した『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』は15シーズンにわたって放送され、前日譚スピンオフ『ウィンチェスターズ』も製作。『事件記者コルチャック』の模倣として始まった企画が、大成功を収めたと言えるだろう。
『SUPERNATURAL スーパーナチュラル』全シーズンはU-NEXTで配信中。（海外ドラマNAVI）
