「ネバーエンディング・ストーリー」の作者として知られるミヒャエル・エンデの小説「モモ」の映画版について、米Varietyがレビューしているので紹介したい。本作には、『SHERLOCK/シャーロック』でおなじみのマーティン・フリーマンが、時間を操るマイスター・ホラ役で出演している。
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現代社会への警鐘! 児童文学の金字塔『モモ』が豪華映像化
1973年の小説「モモ」は、現代の時間感覚や生き方を問う寓話として知られている児童書。10月2日に公開を予定している映画版は、クリスチャン・ディッターが監督・脚本を務め、幻想的な世界観をゴージャスに映像化している。
本作は、その幻想的な世界観をゴージャスな映像技術で再現。また、マーティン・フリーマンが、物語の鍵を握るマイスター・ホラ役で出演している点も大きな話題となっている。
主人公モモ(アレクサ・グッドール『デビルズ・アワー ~3時33分~』)は赤毛の謎めいた少女で、名前も年齢も不明なまま、ヨーロッパのどこかの都市にある円形劇場に住んでいる。人々の話を聞く才能を持つモモに誰かが悩みを打ち明けると、相手は自然と本音を語り、話し終えた後には安心感と癒しを得られるのだ。情報過多な現代社会において、人々が心を落ち着けられる貴重な時間となっている。
物語の主要ヴィランは、「グレイ社」の従業員である時間泥棒たちだ。彼らは人間から時間を奪うことで生きる存在で、人々に装着させたブレスレットを通じて、いつ時間を生産的に使い、いつ楽しみのために浪費するかを監視し、貯められた時間は自分たちのものとなり、愛する人や趣味に使えると考えている。本作は、現代の経済システムが効率や消費を重視し、人々の充実した時間を奪っていることへの警告として描かれている。しかし、時間がどのように奪われ、また戻されるのかといった仕組みは明確に示されず、核心部分の説明不足がやや残念だ。
概念的な主人公像と友情の描写
モモの出自は謎に包まれており、家族も存在しないことが示されている。しかし、すべての人々を時間泥棒から救う使命を受け入れると、彼女は自分の過去や未来について深く考える余地を与えられない。子どもとしての普通の生活を経験したいという葛藤は描かれず、モモは概念的なキャラクターとして表現されている。それでもグッドールの魅力的な演技は光り、決意を貫く主人公像として印象的だ。
劇場の清掃員ベッポとの交流をはじめ、モモの最も重要な関係は、複数の仕事を掛け持ちして家族を支える少年ジーノとの友情だ。グレイ社は彼にデジタルスターとして成功する機会を提供するが、これはSNSが現代人の時間感覚や価値観を歪めることを象徴している。
マーティン・フリーマンの存在感と幻想的な世界観
物語の中盤では、モモは文字が光る亀とともに異次元世界へ旅立ち、マイスター・ホラ(マーティン・フリーマン)と出会う。ホラは善良な魔法使いで、ナレーションを通じて物語の補足説明を行い、巨大な振り子が水面にかかる世界観は、時間の流れを象徴する装置として印象的だ。VFXを駆使した演出により、旧世界の魅力と技術主義的なディストピア感が融合した幻想的な都市が描かれている。

Vatietyより
全体として『モモ』は、時間の尊さを訴えるテーマを軸に、現代社会における生産性へのプレッシャーや責任感が、人々から本当に価値ある時間を奪っている問題を示唆している。しかし、経済格差や企業の強欲など、なぜ人々が時間を奪われるのかという深い背景には踏み込まず、キャラクターの内面描写も限定的なため、テーマの掘り下げはやや浅い印象だ。
クライマックスでは、モモが時間を止め、グレイ社のリーダーと対決して世界を救う。時間の価値に気づいた人々は増えたものの、彼らの生活環境が変わったのかは明確に描かれていない。それでも、マーティン・フリーマン演じるマイスター・ホラの存在や幻想的な演出により、物語全体は視覚的にもテーマ的にも楽しめる作品となっている。
映画版『モモ』はドイツで10月2日(木)より公開中。日本への上陸は未定。(海外ドラマNAVI)