Netflix『マインドハンター』や映画『セブン』、『ファイト・クラブ』などで監督を務めた名匠デヴィッド・フィンチャーが、Netflixの大ヒット韓国ドラマ『イカゲーム』の米版リメイクを手がける可能性が報じられた。これを受けて米Screen Rantが、そのバージョンが不安な理由を挙げているので紹介したい。
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フィンチャーの作風と異なる?
フィンチャーといえば、『セブン』や『ゾディアック』といった重厚なサスペンスのほか、『ゴーン・ガール』や『ドラゴン・タトゥーの女』といったスタイリッシュなスリラーで知られる名匠だ。ここ10年ほどNetflixとは密接な関係を築いており、ドラマ『マインドハンター』や映画『Mank/マンク』、『ザ・キラー』などを手がけている。
とはいえ、『イカゲーム』の米版リメイクについては、多くの懸念が指摘されている。第一に、世界的な社会現象になったオリジナルの『イカゲーム』は最終章となるシーズン3が配信されたばかりで、リメイクは時期尚早との声が多く挙がっている。
さらにフィンチャーの作風が、オリジナルの『イカゲーム』と大きく異なることも不安材料のひとつと言える。『イカゲーム』は社会的格差や生存競争、韓国社会の歪みに対する痛烈な批評を含みながら、ポップで衝撃的な美術や緊張感のあるゲーム描写で支持を得た。一方、フィンチャーの作品はどちらかというと陰鬱で、冷徹なリアリズムと心理描写に重きを置いたトーンで知られている。彼がリメイク版を手掛けることで、あまりにも作風が変わりすぎてしまうのではないかとの懸念もある。
フィンチャーは、Netflixで他にもいくつか大型プロジェクトを抱えており、そのひとつがアルフレッド・ヒッチコックの『見知らぬ乗客』のリメイクと、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に登場するクリフ・ブースを主役にしたスピンオフ作品だ。このラインナップはまるでフィンチャーのファンによる妄想のようで、同時に「本当に全部実現可能なのか?」という疑念も湧いてくる。
またフィンチャーについては、かつて製作した『ドラゴン・タトゥーの女』の続編や、『マインドハンター』シーズン3を実現できなかったという事実も懸念材料だ。とくに『マインドハンター』のキャンセルは、ファンの間で大きな落胆が広がった。にもかかわらず、Netflixは『イカゲーム』のリメイク版や他のビッグプロジェクトにはゴーサインを出していることから、選定基準の不透明さにも疑問の声が出ている。
もちろん、フィンチャーが『イカゲーム』を全く別物として再構築し、彼ならではの視点で再創造するのであれば、新たな魅力が生まれる可能性もゼロではない。しかし、オリジナル版でファン・ドンヒョクが生み出した世界観や、メッセージ性が損なわれてしまう危険性もはらんでいる。
結局のところ、問題は「フィンチャーがこの作品に何を持ち込み、何を捨てるのか」に尽きるだろう。スタイルの融合が“化学反応”になるのか、それとも“ミスマッチ”になるのか、いずれにせよ今のところは見守るしかないだろう。
『イカゲーム』シーズン1~3はNetflixで独占配信中。(海外ドラマNAVI)