『キリング・イヴ/Killing Eve』フィナーレが「史上最も期待外れ」と言われる理由

英ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』は、ユニークな設定で他のスパイスリラー番組と一線を画して人気を博したが、「史上最も期待外れなフィナーレを迎えたシリーズ」に選ばれてしまったという。それは、なぜなのだろうか?

(以下、ネタバレを含みます)

 

原作者も批判

『キリング・イヴ』は、謎めいた暗殺者ヴィラネルの逮捕に執念を燃やす、英諜報員イヴ・ポラストリ(サンドラ・オー)を中心に展開。その執着は暗殺者ヴィラネル(ジョディ・カマー)も同じで、二人の攻防戦が進むにつれて彼女はイヴに少し弱みを見せるようになり、二人はお互いに対して同性愛的な関心を漂わせていた。

英JeffBetの調査によると、『キリング・イヴ』は、「史上最も期待外れなフィナーレを迎えたシリーズ」に選ばれたという。その理由は、シーズン4最終話「やあ 負け犬ども」で、ついにイヴとヴィラネルがキスを交わして二人がお互いの関係に希望を持った瞬間、ヴィラネルが狙撃兵の銃撃で命を落としてしまったからだ。

番組では、英諜報員とスパイという対立する立場にいながら、イヴとヴィラネルのお互いに抱いた同性愛的な関心が常に根底に存在していた。米Screen Rantは、そんな二人の想いが最後の最後で実を結んだのに、その幸せが一瞬で奪いさられてしまい、ファンにとって侮辱的なラストとなってしまったと分析している。

映画やドラマシリーズで、LGBTQ+キャラクターが幸せを見つけた直後に悲劇が襲うストーリー展開を、「Bury Your Gays(ゲイを葬れ)」という表現で抗議するファンは少なくない。「ゲイを葬れ」とは、映画業界のヘイズ・コード(性や暴力、飲酒、犯罪描写などを制限する規制で、1934年から1968年まで適用された)に由来し、「LGBTQ+キャラクターは幸せに値しない」という暗黙のメッセージを示唆していると言われる。

このフィナーレについては、ドラマシリーズの基になった小説の原作者ルーク・ジェニングスでさえ批判している。彼は、「ドラマ版は慣習に屈している」と指摘し、「真に反骨的なストーリー展開であれば、TVドラマで同性愛者のカップルが許されるのはほんの一瞬の関係だけで、その後にどちらかが殺されてしまう定番の展開に逆っていただろう」と意見していた。

また、シーズン1で高い評価を得たシリーズが、そのクオリティを最終シーズンまで維持できなかったのは、シーズンごとにショーランナーが交代したことも原因だと見られている。

『キリング・イヴ/Killing Eve』シーズン1~3は、BS10スターチャンネルEXで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:【 BBC AMERICA】Villanelle and Eve - Killing Eve BBCA