
フランス発の大人気犯罪ミステリードラマ『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』待望のシーズン5が、NHK総合にて4月6日(日)23:00より放送される。それに先駆けてキャストが来日し、記者会見に登壇。二人のアストリッドが対面を果たした。
日本のアストリッドとテツオが互いにインタビュー!?
3月5日(水)に行われた記者会見には、アストリッド・ニールセン役のサラ・モーテンセンとテツオ・タナカ役のケンゴ・サイトウ、そして日本語吹き替え版アストリッドの声を担当する貫地谷しほりが登場。作品の魅力や裏話を語り合う中で、貫地谷とケンゴが互いにインタビューし合うような流れになることも。終始和気あいあいとしていた会見を通して、アストリッド役のサラや貫地谷の細かい役作り、テツオ役のケンゴの天然キャラぶりも垣間見えた。
この日、アストリッド役のサラは、黒とブルーのシックなワードローブとプラチナブロンドのぱっつん前髪が特徴的な役柄とは大きく異なる、ブロンドのふわふわショートと華やかな黄色いパンツ&ハイヒール姿で颯爽とお目見え。テツオ役のケンゴは、劇中と同じような綺麗めカジュアル。そして途中から合流した貫地谷は、アストリッドのワードローブのブルーを彷彿とさせる色のシャツを身に纏っていた。
『アストリッドのラファエル』記者会見(全文)
――まずご挨拶をいただけますか。
サラ・モーテンセン:コンニチワ。本日はお越しいただきありがとうございます。この場にいられることを幸運に思っています。
ケンゴ・サイトウ:皆様、こんにちは。このような機会をいただいてどうもありがとうございます。これからいろいろとお話ししていくと思うので、どうぞお楽しみください。
――今回は寒い中での来日となりましたが、サラさんは日本の印象はいかがですか?
今はすごく寒くなったんですが、実は一週間前から日本に滞在していたんです。だから先週は春のようにいい天気でした。その後、急に寒くなりましたが、私のルーツの一つであるノルウェーを思い出しましたね。寒いのは慣れているので問題ありません。日本はとても素晴らしい国だと思います。文化や食事、皆さんの優しさやおもてなしの心に感動しています。
――このドラマが世界でヒットしていることはどのようにお考えですか?
サラ:この作品の成功を一言で言い表すのは難しいかもしれません。私自身、この作品を通して本当に素晴らしい経験ができています。もちろん、ドラマそのものの制作が素晴らしくうまくいっていることは間違いありません。この会場にも来ているプロデューサーのジャン・セバスチャン、メイン脚本家であるアレクサンドルや監督に囲まれて、素晴らしい撮影現場です。メインテーマが友情であるのが成功のもとだと思います。アストリッドとラファエルという自閉症の人と自閉症ではない人の友情や寛容さ、愛の物語がこの作品には含まれています。世界は優しくないような現状において、この作品には優しさがあふれています。それが成功の秘訣だと思います。
――シーズン2から参加されたサイトウさんは、この作品の魅力をどうお考えになりますか?
ケンゴ:普段あまり映画やドラマに出てこない人たちの活躍が見られるのも面白いと思います。僕が演じているテツオも数学オタクでちょっと変わり者なので、そういうキャラクターが主人公とどういう関係を築いていくのかも面白い部分です。
――フランスの撮影現場の雰囲気はいかがですか?
ケンゴ:日本の撮影現場の雰囲気を知らないので比較できるか分からないんですが、皆さんとても親切ですし、ほかの俳優さんたちもすごくフレンドリーです。僕の役は犯罪捜査の場面には出てこないので、いつも撮影現場にいるわけじゃないんですけど、僕がいる時はいつも過ごしやすい環境です。時々はちょっとしたトラブルもあるらしいと耳にしますが、僕自身は体験していないですね。そういう噂を、へえーっという感じで聞いています。現場入りしたら、たまにピリピリとした空気になっていることもあるので、そういう時には何が起こってるのかな?と思ったりします。時々サラさんもピリピリした様子なので、そういう時は余計なことを言わないようにしています(笑)
※ここで貫地谷が登場。サラと挨拶を交わす。
――お二人は今日が初対面なんですよね。
貫地谷しほり:(サラに向かって)綺麗…。
――アストリッド役のサラさんにお会いした感想は?
貫地谷:昨日、シーズン5第5話の吹き替えをしてきたんですけど、その劇中とはまた全然違って、アストリッドも綺麗なんですがサラさんもお綺麗です。
サラ:貫地谷さんも素敵ですよ。
貫地谷:すみません、言わせちゃって(笑)
サラ:アストリッドの声を担当している貫地谷さんに会えて嬉しいです。私自身は日本語を話さないんですが、貫地谷さんの声は自分の声と似てますし、アストリッドとしての彼女の声を聞いて信頼できると思いました。あと、今日のお洋服がすごく素敵なので、全部欲しいです。
貫地谷:メルシー。(反対側に座るサイトウさんを見て感慨深げに)テツオ…。いやー、なんか、本物って感じで。
ケンゴ:本物です(笑)
貫地谷:いつも劇中でフランス語を話す姿を見ているので、こうして日本語を喋られるのがすごく不思議な感じというか、最近日本語喋られます?
ケンゴ:そうですね。日本に来てからは日本語ばかり喋ってます。
貫地谷:劇中でもちょっと日本語が登場するんですが、それも嬉しかったです。
――貫地谷さんはこの作品の魅力をどう考えられますか?
貫地谷:シーズン1の時にはとにかく単純にお話が面白かったんですが、シーズンを重ねるにつれて、アストリッドとラファエルの友情がどんどん深まっているところも魅力です。今回テツオを演じるサイトウさんもいらっしゃっていますが、テツオとアストリッドの恋物語もすごくピュアで、見ているこちらがキュンとするような可愛さで応援したくなります。出ている人もみんな魅力的で、キャラクターがそれぞれ立っていて、話数を重ねるごとにそこの面白さも増しています。もっともっと見たいので、もっともっと作ってください。
――サラさんとケンゴさんに質問です。サラさんや番組公式のSNSからすでにシーズン6の撮影が始まっていることが分かりますが、この作品がこれからも続いていく中でどんな展開を期待しますか? やってみたいことはありますか? そして貫地谷さんはファンとしてどんなものが見たいと思われますか?
サラ:質問には矛盾する形になるかもしれませんが、どういうものを描きたいかというのはドラマの脚本家たちが決めることなので、私としては彼らの書いたものに応えたいと考えています。ただ、シーズンを重ねるにつれてアストリッドは新たな場所に行ったり新しい経験をしているので、これからも自分をアストリッドに明け渡して、新しい驚きに出会っていきたいと思います。ネタバレにならない程度にシーズン6についてお話ししたいんですが、シーズン6はパズルのピースを一回グシャグシャにしてバラまき、それをまた一から築いていくという内容になります。アストリッドにとってまた新たな挑戦が待ち受けているシーズンになると思います。
ケンゴ:シーズン6も半分まで撮影したので、そのことには触れないでおこうと思いますが、残りの半分はまだ脚本を読んでいないんですけど、なんとなくこんな感じになるって聞いてちょっとビックリしました。あと、時々冗談でですけど、僕にも何か犯罪に関わるようなシーンをもらえないか、日常以外の面白そうな場面があったらいいな、なんて言ったりしています。僕自身、今後の展開が楽しみです。
貫地谷:「シーズン6はパズルのピースを一回グシャグシャにしてバラまき、それをまた一から築いていく」って聞いて、今までもアストリッドとしていろんな経験をしてきたのに、何が起こるんだろうかと気になります。驚くような展開もあるらしいので。すごく楽しみですね。私の周りにもこのドラマのファンの方がすごく多くて、私が声かけられるんですよ。嬉しいです。楽しみにしています。
ケンゴ:「どうなるか知ってますか?」とか聞かれたりするんですか?
貫地谷:それは聞かれていないんですが、「すごく面白くて大好きです」とはよく言われますね。私は今シーズン5の吹き替えをしているところなんですが、シーズン6もあるんだと思って嬉しいです。
ケンゴ:テツオも山を登ったり下ったりするような、感情面で苦労させられています(笑)
貫地谷:ついこの前、テツオとアストリッドのとてもエモーショナルなシーンの吹き替えを収録したんです。ネタバレになるのでこれ以上は言えないんですが、すごく素敵でしたので、皆さんご期待ください。
サラ:ネタバレになることは言えないんですが、どのシーンのことを話しているのかは分かるので、美しいシーンだったなと思い返しています。
――貫地谷さんに質問です。難しい役柄だと思いますが、どんな風に役作りされたのですか?
貫地谷:最初は本当に緊張しました。ブースに日本のディレクターの方と一緒に入って、いろいろ指導していただいていたんです。今はサラさんの声を聞いて、そのトーンを再現するように心掛けています。サラさんに寄り添うというか、寄っていこうとしています。
――アストリッドは周囲との交流を通して少しずつ変化していきますが、そういう変化も意識されているのでしょうか?
貫地谷:アストリッドって感情表現がすごく苦手という役なんですけど、その中でもサラさんが目の表情や指先一つの動きをとってもそれが伝わってくるようなお芝居をされているので、私は声でそれが少しでも表現できるよう、ディレクターと一緒に考えて、気持ちを乗せながら取り組んでいます。
――サラさんは、自閉スペクトラム症のキャラクターという難しい役を演じるにあたってどういうことを意識されていますか?
サラ:アストリッドの役をやる時には本当にすべてに対して気を配っています。自閉症の当事者や周囲の人を誰も裏切らないように、傷つけないようにというのはもちろん気を付けています。あとは、アストリッドの喋り方や仕草、服の着方といったディテールにも気を配っています。撮影時には、その期間に収録するすべてのエピソードの台詞を覚えておいて、現場ではアストリッドがその時にどう反応するかを前もって考えておくのではなく、その時にアストリッドとして私の中から出てくるものを出すようにしています。
――サイトウさんに質問です。テツオ役を受けた経緯は? あと、役作りはどのように行いましたか?
ケンゴ:オーディションで、事務所の方からこういう話がありますよ、と教えてもらって受けましたが、役のことはあまり知りませんでした。ちょうどシーズン2の「イレズミ」という話から入ったので、脚本に日本人の名前がたくさん出てくる中で、後ろの方にようやくテツオの名前が出てきて、日本食材を扱う店で働く人だということを知りました。アストリッドとの展開がありそうな感じだったので、どういうキャラクターなのかを想像しました。オーディションを受けた時はキャスティングディレクターの方から指示があったので、それも助かりましたね。そういう形で役作りを始めました。シーズンを重ねるうちにテツオというキャラクターについて分かってきたので、最初の頃よりは自然とできるようになった感じですね。
――この作品への出演はご自身にとってどんな経験になりましたか?
ケンゴ:いろんなものに対する見方が変わりました。私事になってしまうんですが、自分の子どもも自閉スペクトラム症だと分かって、正しい対応ができるようになりました。
――貫地谷さんに質問です。昨年末にご出産発表をされていましたが、そうしたことが仕事への向き合い方に変化を与えましたか?
貫地谷:昨日も吹き替えの仕事で3時間ほど家を空けたんですが、帰って会った瞬間に本当に愛おしくてですね。仕事が終わったら早く帰りたい、とはこのことかと体感している最中です。まだまだこれから体験していくと思うんですが、日毎に愛着と言いますか、そういうものが増しています。生まれた瞬間も可愛いと思いましたが、どんどんどんどん愛おしくなるものなんだな、と。今まで母親役をやったこともありましたけど、すべて間違っていたんじゃないかなと思うくらいの(苦笑)体験をした気がします。
――折角二人のアストリッドが揃ったので、最後にサラさんと貫地谷さんからシーズン5の見どころを教えてください。
サラ:ちょっと待ってください。(と言って、携帯電話を取り出して目を通す)今シーズン6を撮影中なので、メモを見てシーズン5のことを思い出さないといけないんです。シーズン4の最後、二つの大きな要素がありました。ラファエルの妊娠の可能性と、テツオが日本に帰国する可能性です。続くシーズン5はその二つを軸にまず進んでいきます。アストリッドは、親友の妊娠によって自分たちの友情が変化してしまうのか、さらにテツオが自分の人生からいなくなってしまうかもしれないという心配を抱えることになります。それによって生じる自分の感情の変化に対する葛藤、愛とは何かという葛藤に苦しみ、テツオは自分にとってかけがえのない存在なのかを自分に問いかけます。さらには、アストリッドの過去も浮かび上がってきて、その過去が今の自分に大きく影響しているということを自覚していきます。そこはシーズン5を通して関係していく要素で、アストリッドにとってたくさんの挑戦が待ち受けているシーズンになります。
貫地谷:今までもテツオとアストリッドの関係は美しく可愛いものだったんですが、今回それがさらにグッと進んで、アストリッドも一つの壁を越えます。そんな二人の関係もどんどん進みますし、今サラさんもおっしゃっていましたけど、アストリッドの抱える過去に向き合っていくことになります。これまでもアストリッドはいろいろな壁を乗り越えてきましたが、今回もたくさんも壁を乗り越えていきますので、ぜひぜひそこにもご注目ください。そして事件を解決する様は今回も痛快・爽快ですので、ご期待ください。
――最後、本作のファンだという漫画家・とよ田みのるさんからサラさん、サイトウさんへのプレゼントをお贈りします。
※プレゼントは、アストリッドとテツオのイラストが描かれた色紙で、笑顔で受け取ったサラとケンゴは見せ合う場面も。贈り主からのメッセージは次の通り。「シーズン2第6話でベンチに座る二人のシーン。テツオがアストリッドに黄金比の計算式の美しさを語り、それにアストリッドの心が初めて揺れ、その後アストリッドは母が残した空っぽの秘密箱にテツオの数式のメモをそっと仕舞います。そのシーンが本当に感動的で大好きなので、テツオの(イラストの)背景に数式を、アストリッドの背景に秘密箱の柄を描きました。大好きなドラマの二人に色紙を贈れて光栄です」
ケンゴ:とても素晴らしいプレゼントをいただいて、有難く思います。この数式のエピソードはかなり前なのですっかり忘れてしまっていたのですが、思い出しました。いい思い出です。
サラ:(サイトウさんに向かって)黄金比のこと、忘れてたの?(笑)
ケンゴ:(サラさんに向かって)今思い出した。
サラ:素晴らしいプレゼントありがとうございます。フランスに持ち帰って、家で額に入れて飾りたいと思います。テツオは黄金比、私の方は秘密箱の柄と、素敵なシンボルをピックアップしてもらえてとても嬉しいです。
『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』シーズン5は、NHK総合にて4月6日(日)23:00放送開始。それに先駆けた特番を3月22日(土)23:45などに放送予定だ。
(海外ドラマNAVI)