『ザ・シンプソンズ』をはじめ様々なアニメが作られてきたアメリカ。そこで長く愛されてきた作品の一つが、1997年に米Comedy Centralでスタートした『サウスパーク』だ。2023年3月までに26シーズン、通算300話以上が放送されており、30シーズンまで制作されることがすでに決まっている。
『サウスパーク』はコロラド州の小さな町サウスパークを舞台に、4人の小学生たちが様々な騒動を起こしたり、巻き込まれたりする姿を描くギャグアニメ。切り絵のストップモーションアニメで簡素化されているが、過激な描写も多く、社会風刺やブラックジョーク満載だ。これまで様々な賞を賑わせており、1999年に映画版が制作されてアカデミー賞主題歌賞にノミネートされた際には、故ロビン・ウィリアムズが同賞授賞式にてノリノリで歌っていた。
風刺やパロディ満載のため有名人がネタにされることも多く、トム・クルーズ、ジェニファー・ロペス、カニエ・ウェスト、ハリー王子とメーガン妃などもその標的となってきた。同作で取り上げられることを不快と捉える人もいる一方で、名誉だと喜ぶ人もいる。エルトン・ジョンやオジー・オズボーン、レディオヘッド、イーロン・マスクは本人役で出演(声を担当)しており、ジェニファー・アニストンやジョージ・クルーニーは別の役(ジョージは犬の役!)で登場している。
主人公4人の一人は凶悪犯?
風刺やパロディをする作品ではえてして、その毒を和らげるためか、主人公がおバカだったり幼かったりすることが多い。本作は後者に当たり、メインキャラクターはサウスパークの小学校に通う4人の少年たちだ。ともに小学4年生である彼らの中で最も平均的な少年と言えるのがスタン。普通の家庭で育ち、良識も備えているので、しばしば危機に陥った際にリーダーシップを発揮する。変わったところと言えば、好きな女の子を前にすると緊張で吐いてしまうことくらいだろうか。
ユダヤ人のカイルは、スタンの一番近しい存在だが、時々疎外感を覚えており、例えば舞台の『ライオン・キング』を観たいのにみんなが付き合ってくれないといったことを気にする。いつも緑の帽子を被っており、それを外すと赤くてクセの強い髪を見られるのがコンプレックス。
一番の問題児がカートマン。シングルマザーの母親に甘やかされて育ち、先生や周りの子どもを無視して好きに生きる。悪知恵が働き、怠け者だが悪いことに対する行動力だけはあるので、作中で起きる様々なトラブルのうち半分くらいは彼が発端になっていたり、事態を悪化させたものだと言える。これまでに殺人、放火、強盗、墓荒らし、銃器や薬物の所持、カニバリズム、動物虐待、テロ行為など様々な犯罪に手を染めており、逮捕歴も何度かある(発覚していない犯罪もある)。あまりにも多くの悪行を犯していることから、英Digital Spyに「ハンニバル・レクターとフェイギン(『オリバー・ツイスト』に出てくる悪党)を足したよりも多くの罪を犯している」と言われたほどだ。
4人目はケニー。いつもオレンジ色のパーカーのフードで口の周りを覆ったまま話すので何を言っているのかが基本的に分からず、特に活躍することもない。ただ、そんな彼にも大事な(?)役割があり、ケニーが毎回殺されるというのが『サウスパーク』の当初のお約束だった。毎回どこかのタイミングで彼が車に轢かれたり、落ちてきた物に潰されたり、凶暴な生き物に殺されたりすると、スタンが「大変だ! ケニーが殺された!」と叫び、カイルが「この人でなしー!」と殺した相手を罵倒するという流れ。『ドラえもん』のように基本的に回が終わるごとにリセットされるので、次の回になるとケニーは何事もなかったかのように登場する。ただ、しばらくすると製作陣もケニーを殺すのに飽きたようで、最近はあまり死ななくなっている。
この4人以外にも個性的な子どもたちが集う。スタンのガールフレンドだがオレオをきっかけにカートマンと恋に落ちたこともあるウェンディ、みそっかす扱いをされながら時に思わぬ能力を発揮するバターズ、カイルの5歳の弟で神童と呼ばれるアイク、我が強い車いすの少年ティミー、スタンダップコメディアンを目指す松葉杖の少年ジミー…。そのほかにも、かなり人間くさいイエス・キリストやブッダなどの神、フレンドリーなエイリアン、タオルの大切さを説くタオルの妖精タオリーといったバラエティ豊かな面々が集う。
ギャグを通して社会のひずみに光を当てる
『サウスパーク』ではエピソード終盤で「今日は大切なことを学んだよ」というのがスタンの口癖で、実際には“そんなこと学んでねーよ”と視聴者に思わせるためのフリの台詞なのだが、時々真理をついているのがこの作品の深いところ。ひとたび騒動が持ち上がった時の少年たちの保護者や学校の教師をはじめとした大人たちの姿を通して社会のひずみや偏見を描き、そこに10歳の少年たちの純粋な目で疑問や気づきをぶつける。そうした視点はしばしば、私たちが見落としがちなものなのだ。
クリエイターは、ともに『モンティ・パイソン』が好きなマット・ストーンとトレイ・パーカー。二人とも、1999年に大きく報じられた高校での銃撃事件が起きたコロラド州で学生時代を過ごしており、マイケル・ムーアが撮ったこの事件を扱ったドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』にも登場している。同作や別のインタビューで語る様子を見ていると非常にまっとうな人たちだ。
ここ最近の世の中では、あるテーマについて誰が(どの立場の人が)発言するかがデリケートな問題となっており、特に多様性の国アメリカでは、“ナイスガイ”の代表格マット・デイモンであっても「彼は言うべき立場にはない」として発言を批判されることがある。しかしそんな中、白人男性のパーカーとストーンは臆することなく様々な話題に切り込んでいく。例えば、学校の男子トイレの個室の少なさからゆっくりウンコできないことに怒ったカートマンが、トランスジェンダーを名乗って女子トイレを使うという暴挙に出ることをきっかけに、ジェンダーというデリケートな問題がゆえになかなか口を出せない学校側の態度を皮肉ったりもする。そのように人種、宗教、LGBTQなど、“当事者”以外が触れるのはNGと見なされがちなテーマも果敢に扱うため、コンプライアンスなどの様々なしがらみが多い現代において、彼らが空ける風穴は心地良い新鮮な空気をもたらしてくれるのだ。批判されることを恐れてそもそも多くの人が口にすることすらしない話題を敢えて扱うことで、その件に向き合う機会を与えてくれているとも言える。
『サウスパーク』はそのフットワークの軽さも特徴で、放送当日まで制作チームが作業しているため、現地アメリカで数日前に起きたばかりのことをネタにしたエピソードが放送されることもある。まさに「アメリカの今を切り取ったアニメ」なのだ。とはいえ、引き際も心得ており、2017年にドナルド・トランプがアメリカ大統領に選出された際には、それまでさんざんネタにしてきた彼のことを今後は取り上げないと表明した。というのも、「風刺が現実になってしまった」から。「(政治家たちに)コメディをやらせておいて、僕らは僕らのコメディをやることにしたよ」と当時パーカーは話している。
大ヒットドラマ『ウォーキング・デッド』のダリル役で知られるノーマン・リーダスは、2019年に来日した際、「明日人類が滅亡するなら何をする? つらい時の乗り越え方は?」という質問に「『サウスパーク』を見る」と答えている。一話20分程度だが、見始めるとどんどんクセになる同作、日本ではWOWOWオンデマンド内のParamount+にてシーズン15~23が配信中なので一度ご覧になってみてはいかがだろう?
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(海外ドラマNAVI)
Photo:『サウスパーク』(番組公式Xより)