俳優という仕事は見られてナンボの職業だが、自分の演技をスクリーンやテレビで見直さない、あるいは見ることができないという俳優は、実は結構多い。例えば『スター・ウォーズ』シリーズのカイロ・レン役で知られるアダム・ドライヴァーは取材中、アカデミー賞にもノミネートされた『マリッジ・ストーリー』で自身が歌うシーンを取材相手から見せられそうになり、席を立って出て行ってしまったという逸話の持ち主だ。
自分の出演作を見たり聞いたりしたがらないことで有名なアダムは、その理由について「(作品における)僕の演技で変えたいもの、変えたかったものが原因で、自分自身や周りの人をクレイジーにさせてしまう」と語り、自分の演技を見ることで周りにも影響を与えるほど気分が悪くなってしまうと説明している。
米Entertainment Weeklyが報じた、そうした自分の演技を見たがらない俳優20人をご紹介しよう。
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ホアキン・フェニックス
『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を射止めたホアキンは、これまでおよそ40本の映画に出演してきたが、そのうち2本しか見たことがない。『her/世界でひとつの彼女』と『ザ・マスター』だ。ホアキンは自分の失敗から学ぶためにそれらの作品を見てみたが、「いまだに慣れることができない」という。
メリル・ストリープ
数多くの賞を獲得してきた大物女優のメリルは、自分の作品は一度しか見直さないという。何度も見直すかと問われて、「そんなことはしないわ。いつも前を見ているから」と、聡明な言葉を返している。
ヘレナ・ボナム・カーター
『英国王のスピーチ』や『ハリー・ポッター』シリーズ、『ザ・クラウン』などで存在感を放つヘレナ。彼女は常に、過去作ではなく次の作品に集中しているという。「翌年に全く同じ役をやるわけでもないのに、(自分の演技を見ることに)何の意味があるの? 私が役者をしているのは、演じるのが好きだから。私の演技は、見たい人が見ればいいのよ」
マシュー・フォックス&ナヴィーン・アンドリュース
『LOST』で人気を博したジャック役のマシューとサイード役のナヴィーン。彼らはどちらも撮影だけで十分だとして、同作を一度も見たことがない。「もしかしたら20年後に見るかも」と言うナヴィーンに対し、一度も本編を見ていないにもかかわらず同作のファンだと語るマシューは、「ストーリーに惚れ込んだよ。でも、自分を見るのは好きじゃないんだ」と語っている。
アンドリュー・リンカーン
『ウォーキング・デッド』のリック役で知られるアンドリューは、同作を見ないことで有名だ。それは、リックが話の中心ではないエピソードでも同じ。というのも、彼は映像を見ると、自分がした失敗にとらわれてしまうから。「僕の仕事は役にできるだけ真摯に相対すること。メディアの記事や批評を読まないことと同じなんだ。良いものだけ手に入れて悪いものは置いておく、なんてことはできないからね」
ジュリアン・ムーア
『アリスのままで』で5度目のアカデミー賞ノミネートにして初受賞を果たしたジュリアンもまた、作品を作ることよりもそれを見る方に喜びを見出す俳優の一人だ。そのため、作品を作り出すことは「大きなスリル」だと語る彼女も、自分の作品を見たことは今まで一度もない。「自分の出演作を見たことがないの。プレミアとかでも席に座って見ることができないのよ」
ジェシー・アイゼンバーグ
『ゾンビランド』シリーズや『ソーシャル・ネットワーク』で知られるジェシーは、出演作を劇場で観客と一緒に見たくはないという。2016年の映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でのレックス・ルーサー役を顧みて、次のように語っている。「僕は作品を今作っているという感覚が好きなんだ。でもその感覚を味わうためには、自分の作品が時には大勢の人たちによって細かいところまでチェックされるということを考えないようにしないといけない」
エマ・ストーン
ジェシーと『ゾンビランド』シリーズで共演したエマは、出世作である2010年の映画『小悪魔はなぜモテる?!』での自分の演技を見るのが嫌で、その場から逃げ出した経験があるという。「友達や家族を招いての上映会に行ったんだけど、どうしても居心地が悪くて、その場にいられなかったの。長時間、自分を見たい人なんているの?」と振り返っている。
ニコール・キッドマン
他の俳優が自分の演技を見ることに耐えられず映画館から逃げ出す程度で済んだ中、ニコールは2008年の主演映画『オーストラリア』を見た後、なんと国外へ脱出することになったとか。オーストラリア出身のニコールはシドニーで初めて作品が上映された時、自分の席で身もだえしてしまい、上映後は飛行機に直行。この『オーストラリア』は、ニコールにとって『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督と再び組んだ作品であり、同作に続いて自分が見た2本目の出演作だったという。
ジャレッド・レトー
『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞した後でも、ジャレッドはこの映画を見ていない。「(俳優というものは)演じ終えてしまったら、その作品の完成に向けて何かを足したり調節したりなんてほぼできないからね。それだったら、もう関わらない方がいいと思うんだ」と述べている。2016年の『スーサイド・スクワッド』で演じたジョーカー役が批判されたことを考えると、たしかに同作は見ない方がいいかもしれない。
マギー・スミス
伝説的女優のマギーも自分の演技を見るのは好きではないが、『ダウントン・アビー』は例外だという。なぜかというと、「DVDボックスをもらったの。これからはそういうことをどんどんやっていくわ。だって今の私は自由だから」と語っている。マギーは2010年に始まった同作で全6シーズンにわたって愛すべき先代グランサム伯爵未亡人を演じたほか、2001年から『ハリー・ポッター』シリーズ全8作でマクゴナガル先生に扮していた。
ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク
役者の多くが自分の出演作を見たがらないのは作品の制作過程に深く関わり過ぎているからだと説明するのに対し、ジェームズが『ドーソンズ・クリーク』のラストをいまだに見たことがないのは同作との距離感を感じていたからだ。「僕は『ドーソンズ・クリーク』の世界に浸りきってはいなかった。あくまでも僕が演じたものであり、僕が書いたものではなかったから」と、ジェームズは述べている。「僕はたまたまそこに乗り合わせた乗客の一人みたいにいつも感じていたんだ」
ハビエル・バルデム
『ノーカントリー』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したスペイン人俳優のハビエルは、スクリーンに映る自分に耐えられないと打ち明ける。「キャラクターを創造するのが好きなことと、自分が作ったキャラクターやその演技を見るのが好きということは違うからね」と発言。自分にコンプレックスがあるのか、「あのくそったれの鼻や声、バカげた目を見るのが耐えられない。やってられないよ」などと悪態をついている。
ミーガン・フォックス
ミーガンは自分の出演映画はもちろん、自分が写った写真ですらも、それに直面すると尋常でないほど動揺してしまうという。「だから私は何も見ないの」と告白する彼女は、「もし部屋にモニターがあったら、見た瞬間パニック発作に襲われる」というほど症状が酷いそうだ。そのため、出演作の『トランスフォーマー/リベンジ』を見るためには、その前にシャンパンを一気飲みしなければならなかった。
ザック・エフロン
『ハイスクール・ミュージカル』シリーズや『グレイテスト・ショーマン』で知られるザックは、これまでの様々な経験に感謝しているとしながらも、自分の作品を試写で初めて見た時は大抵、自分が犯した「一つひとつのミスすべて」にとらわれてしまうと吐露している。
ジョニー・デップ
ジョニーは、自分の作品を見ないことに対する反対意見があることを理解している。「多くの友人の素晴らしい演技を見逃すことになるからね」。しかし最終的には、自分の正気を保つことを優先している。というのも、出演作を見ることは「悪影響しかもたらさない」そうで、「自分が関わったものの結果に対してできるだけ何も知らないでいる方を選ぶよ。なぜなら自分の演技が終わってしまえば、それはもう僕には関係ないことになってしまうんだからね」と語る。
ロバート・パティンソン
映画の中の自分を見ることは「自らを鞭打つようなもの」だと表現するロバート。大ヒットした『トワイライト』シリーズでティーンのアイドルになる直前に出演した『天才画家ダリ 愛と激情の青春』で実在の画家サルバトール・ダリを演じたことを振り返り、「変な帽子を被って現れる初登場シーンは見るに堪えない」と述べていた。
リース・ウィザースプーン
近年は『ビッグ・リトル・ライズ』『ザ・モーニングショー』といったドラマに主演しているオスカー女優のリースにとって、自分自身の仕事を見直すことは「拷問」だ。「なんで自分がバカみたいで他の誰かのフリをしているのを見たいと思うわけ?」と語っている。
グウィネス・パルトロー
『アイアンマン』シリーズでペッパー・ポッツを演じたグウィネスが『スパイダーマン:ホームカミング』を見ていないのは、そもそも自分が出演していることを忘れていたから。「ちょっと混乱しちゃったの。互いに繋がっているマーベル作品っていっぱいあるのよ」と語る彼女はいまやライフスタイルブランドgoopの創設者でもあるため、出演作を見返す暇はないようだ。