デトロイトに生まれ、アメリカ国民に愛されてきたモノ...といえば、やっぱりクルマ。2009年の今年は、1908年に大衆車の代表選手となったT型フォードの発売から101年目の節目?のはずなのに、最近どうにも旗色がおかしい。原油高や金融危機、環境問題がいろいろな問題を巻き込んだ挙げ句に行き着いたビック3の経営不振だけど、それでもこの国ほどクルマを必要としている人々はいないんじゃないの?っていうくらいアメリカはクルマ社会。そんな身近なクルマたちだけど、そういえば海外ドラマではあんなクルマやあんなクルマが登場していた!

海外ドラマの中のクルマって、たいていは主人公の思い入れが強く、それこそ趣味として傾倒しているように描かれることが多い。そして、主人公の相棒的な役割を担う場合も少なくはない。
その代表例が『刑事コロンボ』。コロンボ警部の愛車は、フランス車プジョーだ。ブルーの車体がクリーム色に見えてしまうほどに色あせたそのクルマは故障車と見間違うばかりのヨレヨレ。そんなくたびれたクルマだけど、彼が愛用するレインコートとともに"コロンボ警部"という人物像に独特の味を与えることに成功している。
彼の乗るプジョーは1959年式の403カブリオレ。カロッツェリア・ピニンファリーナが初めて手がけたプジョー車としても超有名なクルマだが、このカブリオレ(幌屋根付きのクルマ)の生産台数は意外に少ないのだ。現存する403カブリオレにいたっては非常に希有な存在となっており、マニアの間でも取引されることはまずない1台なのだとか。オンボログルマに見えて実は名車というところが実にコロンボ警部らしい。

登場人物が執着したクルマなら、イギリスの超メジャードラマからもこの1台を! 強烈な個性とこだわりが笑いのツボを刺激するBBCコメディの雄『Mr.ビーン』のビーンが愛用するのは、オースティン・ミニ。2001年にBMWに買収されたのが記憶に新しいMINI(こちらは『チャームド~魔女3姉妹』のフィービーの愛車)だけど、ビーンのミニは1969年製のモーリス・ミニMKIIで色はオレンジ。ドアに南京錠を付けたり、盗難防止グッズを搭載するなど、真似するにはちょっとためらうカスタマイズがビーン流?
ミニは街乗りメインな実用車だけど、実はレースシーンでも大活躍していた。特に、1965年のモンテカルロ・ラリーの伝説は有名で、山岳コースに激しい雪が舞うという、ミニにとっての好条件!?も手伝い、2位のポルシェに大きく差を付けて優勝したんでした。

スーパーカーを日常の足代わりに使い倒して埃まみれにしてしまうのは、やっぱりアメリカ流かな。
『私立探偵マグナム』でマグナムが操るフェラーリ308GTSや、『特捜刑事マイアミ・バイス』でソニーが駆るフェラーリ365GTSなんかはその典型。彼らにとってのクルマとは、いわば鋼鉄の跳ね馬。注いだ愛情に見合う見返りを求めているわけ?だからスーパーカーだろうと容赦なし、いやスーパーカーだからこそのド派手なドライブが小気味いい!
そういや、マグナムとソニーの2人が乗っていたフェラーリをデザインしたのもピニンファリーナ。コロンボ警部の愛車と一緒なんです。ご存じでした?
それにしても海外ドラマでのフェラーリの出現率の高さはちょっと異常なほど。特に二枚目俳優にフェラーリ率が高い!? 『特攻野郎Aチーム』のフェイスマンもフェラーリで美女をナンパしていたし、『ダンディ2 華麗な冒険』のヤンキーダンナの愛車もフェラーリ。

その『ダンディ2 華麗な冒険』は、英国ドラマでヤンキーのダンナことダニー・ワイルド(アメリカ人青年実業家)とブレット・シンクレア(英国紳士にして侯爵)の2人のダンディが難事件を解決するというドタバタコメディなのだけど、アメリカ人のフェラーリ好きはイギリスでも一般的なのかね。そして、ブレットの愛車は英国紳士らしくアストン・マーティンDBS V8。侯爵の位を持つブレットはダニーから殿様と揶揄されているけど、この2人の負けず嫌いは半端なくて、ことあるごとに競い合うやんちゃぶりを発揮。そんなわけでディーノvsアストン・マーティンのカーチェイスを見ることができるのもこのドラマの中だけかも!?

さて、そんなスーパーなクルマにハイテクを搭載し、さらに超スーパーにしてしまったドラマといえば、我らが『ナイトライダー』。マイケルのかつての愛車ポンティアック・ファイヤーバード・トランザムをベースに改造されたナイト2000にK.I.T.T.(Knight Industries Two Thousand:キット)という人工知能を搭載した、もはや何でもありのドリーム・カーだ。車体をジャンプさせて障害物を乗り越えるターボブーストを始め、ロケット弾や火炎放射器といった重火器を備えたあたりはボンドカーも真っ青。ちなみに、アメリカだけでなく日本でも一部の熱狂的なファンが当時のトランザムを改造してナイト2000を作っていて、実際に公道を走らせているとか!
そして、2008年には待望の続編『ナイトライダー2008』が。今度のマシンはナイト3000でフォードマスタングGT500KRをベースに派手に改造され、人工知能Knight Industries Three Thousand(K.I.T.T.と略称は一緒)が搭載されている。新型のK.I.T.T.は変形機能を備えており、ナイト3000をノーマルのマスタングに戻すだけでなく、SUVのフォードF150にも変形できる。トランスフォーマーもびっくり!?

ナイト3000のベースになったフォードマスタングGT500は2005年モデルで1964年の初代から6代目のラインナップ。今回のフルモデルチェンジは、それまでのスポーティ路線と決別した初代を彷彿とさせる、武骨で挑発的なスタイルで登場。その勇姿はかつてアメリカ全土を震撼!させたマッスルカーそのもの。
マッスルカーとは、無駄にでかい鋼のボディにV8-5000ccといった大排気量&高出力エンジンを乗せて、その強烈なパワー&トルクで強引に振り回す、およそ燃費のことなど念頭にない体育会系筋肉質なクルマの代名詞。1960年代の後半から登場し、1970年代後半のオイルショックまでアメリカのクルマ産業を牽引してきた一大ムーブメント。しかもフォードを追随するかのごとく、2008年にはダッジ・チャレンジャーが、2009年にはシボレーカマロまでもがそれぞれの初代を彷彿とさせるマッスルボディをひっさげて登場。
エコカーがもてはやされる21世紀においてもなお、アメリカの根底にあるのは『力は正義』的思想なのか、全米で密かにネオ・マッスルカー戦争が勃発しているのだ。そのマッスルカーの本家、というか、元祖が(諸説いろいろだが)インパラであり、ダッチ、バラクーダであるといわれている。

インパラといえば、『スーパーナチュラル』の熱血あんちゃんディーンの愛車。失踪した父を捜しに、ディーンとサムの兄弟が悪魔退治しながらアメリカ中を放浪するというこのドラマの中で、インパラは飛行機恐怖症のディーンがどこに行くのにも乗り回すクルマだ。なので、『スパナチュ』ファンの間では第三の主役といわれるほど...? ちなみにインパラとは、最近世間をお騒がしていたGMのブランド、シボレーの最高グレードの総称。コルベットやムスタング、サンダーバードと並んで60年代から70年代のアメリカを席巻したドラッグレースシーンの中心的存在。ディーンが駆る1967年製インパラはまさにその血統を引き継ぐマシンで、まさに「大きいことは良いことだ」を具現化したマッチョなクルマなのだ。とにかくパワーを、何が何でもトルクをといった反エコロジーなこのクルマ、実はもともと父の愛車だったものをディーンがさんざん騒いで譲り受けたもの。緊急時でも弟のサムに運転させなかったり、などカーマニアならニヤリとするエピソードも満載だ。

そうそう、忘れちゃいけない、もう1つのマッスルカーが"バラクーダ"。といえば『刑事ナッシュ・ブリッジス』でナッシュがお乗りになっています。鮮やかな黄色の車体に真っ白の内装が目にまぶしいコンバーティブル(幌屋根付きのクルマ)だ。正確にはバラクーダのハイパフォーマンス仕様車の71年型ヘミ・クーダと思われるが、いずれにしてもマッスルカーであることは間違いなし。
もっとも、ドラマの中では飛び降り自殺を図った犯人に墜落されてぺしゃんこになったり、銃撃を受けて蜂の巣状態になったり、とさんざんな目にあわされていてちょっとかわいそう。なお、このバラクーダの姉妹車がダッジ・チャレンジャー。この時期のクルマはパワーばかりが目立つけど、実はデザイン的にも評価が高く、それゆえ今でも大事に乗っている人も多い。特にボディのグラマラスな曲線美はコークボトルラインともよばれ、一時代を築くほど。

さて、最近の海外ドラマに登場するクルマは?というと、意外に実用車が多くなっている。スポンサーとの兼ね合いかも。今はSUV(Sports Utility Vehicle)とよばれるアウトドア指向のヘビーデューティ仕様車がメイン。過去の海外ドラマのようなスーパーカーはほとんど登場しなくなってきた。クルマ好き海外ドラマファンからするとちょいと寂しい。
とはいえ、『The OC』などを見るとアメリカの上流階級におけるクルマの選びのあれこれを垣間見れて面白い。貧しい育ちのライアンの兄が盗むクルマはザ・アメリカンといわんばかりのでっかいクーペで、確かフォードの大衆車。そのライアンを引き取る弁護士サンディの愛車は成功者のシンボルでもあるBMWの7シリーズ、その奥さんの車は日々の買い物を山のように積み込める頑丈な(でも高級車の)チェロキー。ライアンの恋人にして隣人のマリッサは高校生らしくフォードのSUV(たぶん新車ね)をご愛用。
そういえば、人気ドラマ『SEX AND THE CITY』の映画版にはメルセデス・ベンツのコンパクトSUVのGLKクラスが登場していたっけ。ただし、コンパクトといってもそこはベンツ。かわいくてもちゃんと3000ccあります。
最近、GMがトヨタにハイブリッドカーの技術支援を求めた記事が世間を賑わせたけど、これからは海外ドラマにもハイブリッドカーや電気自動車がバシバシ登場してくるようになるのかも!