ユニバーサルチャンネルで、5月30日(水)に第1話が先行プレミア放送された『ALPHAS/アルファズ』。本作は、平凡な人間でありながら特殊能力をもつ人々"アルファ"の活躍を描くSFサスペンスドラマだ。
「人間離れした能力を凡人が手にする」――この設定を耳にして、6年前に大ヒットした『HEROES/ヒーローズ』を思い出す人も多いだろう。『HEROES』もやはり、スーパーヒーローなみの超能力をもってしまった平凡な人々をめぐる物語だった。それでは、『ALPHAS』は『HEROES』と、どのあたりが違うのか? その違いを比べることで、新作『ALPHAS』の特色がはっきり見えてくるはずだ。
★主要人物同士の掛け合いが最初から楽しめる
『HEROES』は、世界中の超能力者たちが単身で行動し、それぞれの道がしだいに交わっていく物語だった。その運命的な出会いが興奮を呼んだわけだが、時折、物語の方向性がはっきり見えなくなるリスクも負っていた。
『ALPHAS』では、大半の登場人物は冒頭からすでに、DCIS(防衛犯罪捜査隊:以下 "アルファ"チーム)と呼ばれる政府機関のメンバーになっている。"アルファ"同士が交流し、協力して事件を解決する美味しいシーンを、最初からテンポよく楽しめるようになっている。
もちろん、"アルファ"はあくまで普通の人にすぎないから、『X-MEN』のように、おそろいの隊員服を着て一致団結! というわけにはいかない。元FBI捜査官や軍隊経験者もいるけれど、それ以外は、NY高級街で気ままに一人暮らしをしてるお姉さんとか、クリーニング屋の娘とか、自閉症を抱えた青年という顔ぶれで、どう見ても、ピシッとまとまりようがない。上司・部下の関係や同僚とのかかわりはアメリカのオフィスワーカーと同じで、ミーティングルームや休憩室ではフランクで気さくなやり取りが交わされる。その日常描写は普通の人と何ら変わらず、親近感がわいてくる。
★特殊能力の設定がリアル
『HEROES』に登場する超能力は、アメコミのスーパーヒーローをモチーフとしたものだった。政治家がスーパーマンのように空を飛んだり、日本のサラリーマンが時空間をあやつるところに面白さがあったが、ともすれば、能力がすごすぎて"何でもアリ"の展開になってしまうリスクもはらんでいた。
一方『ALPHAS』の描写は、もっとリアルだ。本作に出てくる特殊能力は、『HEROES』の超能力とはかなり異なる。人間の通常能力の拡大として解釈され、「特定の知覚刺激に意識を集中し、知覚の精度をあげることにより獲得できるもの」というように裏付けが重視されている。だから、空を飛ぶ人は出てこない(少なくとも今のところは)。
そして、特殊能力の限界や弱点もきちんと描写される。例えば、驚異的な反射神経をもつキャメロンはプレッシャーに弱い。怪力男のビルは長時間怪力を発揮できない。超感覚をもつレイチェルは、五感のひとつを増幅する一方、ほかの感覚を抑制するので無防備になる。そして、あらゆる電磁波をあやつれるはずのゲイリーも、ノキアの電波だけは読み取れない(笑)。
特殊能力の限界をいかに乗り越え、弱点を互いにフォローしあうか――そこが本作の見どころであり、緊張感を維持する要素にもなっている。
★緊迫感やバラエティが満載の一話完結式
『HEROES』は、超能力者ひとりひとりの物語が壮大な運命につながっていくプロセスをじっくり描いた連続ドラマだった。一方『ALPHAS』は、"アルファ"チームが毎回挑む事件に比重をおいた、スピーディでバラエティあふれる一話完結式のドラマだ。事件の背後には、赤い旗(レッドフラッグ)と呼ばれる謎のテロ組織のもと、敵対する"アルファ"が暗躍していることが多く、"アルファ"同士の戦いにもスポットが当てられる。
しかも、民間人の寄せ集めである"アルファ"チームにとって、事件捜査は試行錯誤の連続。敵"アルファ"のほうが一枚上手で、作戦が破綻してしまうことのほうが多いくらいだ。ハラハラのし通しなのである。
もちろん、シーズン全体を通しての連続ストーリーも面白い。メンバー同士や家族の関わりが描かれるし、赤い旗(レッドフラッグ)との戦いは予測のつかない方向に展開し、チームの目的そのものに疑問を抱くメンバーも出始める。そして、事件の危機的性質が強まれば強まるほど、緊迫感はいやおうなしにヒートアップしていく。
★主要人物たちのまとめ役がいる。しかもこの人から目が離せない
超能力者のみんながいわば主人公だった『HEROES』に対して、『ALPHAS』には、リー・ローゼン博士という中心人物がいる。この人は、『X-MEN』のプロフェッサーXみたいな立ち位置で、"アルファ"たちの才能を最大限に生かせるよう、チームのまとめ役を買って出ている。
ローゼン博士自身は特殊能力をもたないようだが、その存在感はプロフェッサーXに勝るとも劣らない。一見とぼけた風貌や物腰といい、その内に秘めた鋭い知性やしたたかさといい、視聴者の目を引きつけて放さないオーラを放っている。それもそのはず、同役を演じるデヴィッド・ストラザーンは、映画『グッドナイト&グッドラック』(2005年)での演技が絶賛を浴び、ヴェネチア国際映画祭では男優賞を受賞、アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた実力派俳優なのだ。本作はそんな"ローゼン博士ウォッチング"も楽しい。
――『HEROES』が大ヒットしたあと、アメリカでは「人間離れした能力を凡人が手にする」という切り口で、『No Ordinary Family』(ABC:シーズン1で打ち切り)や、『Three Inches』(Syfy:パイロット版のみ)といった作品が作られた。そんななか、成功したのは『ALPHAS』のみ。過去作品の問題を検証し、『HEROES』からの徹底した差別化と、さらなるステップアップをはかったのが勝因だろう。アメリカではこの夏始まるシーズン2にも、期待が集まっているところだ。
最後に一言。パイロットエピソード(第1/2話)を見て、まだピンとこないという人はいるかもしれない。そんな人もぜひ、第4話までは見続けてほしい。『ALPHAS』の本領が見えて、アクセルが一気にかかるはず。そうなったらもう、ノンストップの興奮が待ち受けていることをお約束する。
●『ALPHAS/アルファズ』6月28日(木)22時より、レギュラー放送スタート!
【放送】ユニバーサル チャンネル
【二か国語】毎週木曜 22:00~23:00 他
【字幕】7月4日(水)23:00スタート! 毎週水曜 23:00~24:00 他
Photo:『ALPHAS/アルファズ』(c)2011 Universal Network Television LLC. All Rights Reserved. /『HEROES/ヒーローズ』(c)2007 Universal Studios.All Rights Reserved.