★人々を魅了!『ブルー・ブラッド』の舞台・NY
一口に「アメリカ」と言っても広い。
アメリカ最大の都市:東のニューヨークと第二の都市:西のロサンゼルスは、直線距離でおよそ4,000km。日本列島よりずっと長い。東京―大阪間なら5往復できる。
二都市は物理的に離れているだけではない。気風も人々の服装もアクセントも、緊張感もぜんぜん違う。LAは年中暖かくて晴れているせいか、全体的に大らか・・・というかユルい。
NYも夏は耐え難いほど暑いが、感謝祭シーズンは街全体が秋色に染まるし、クリスマスはちゃんと寒いから生木のツリーが枯れることもない。真冬には雪だって降る。
季節ごとにいろんな顔を持ち、ファッションもカルチャーも都会的で洗練。一目でわかる特徴的なランドマークが密集するニューヨークは「アメリカで最も画面映えする街」といえる。
そんな巨大都市で市民の安全を守るのが《ニューヨーク市警察=NYPD》。この街で起こる事件や社会問題は時代を映す鏡。日々それらと対峙する警察官は、まさに身近なヒーロー。彼らの活躍を描く物語がドラマティックにならないはずがない!
★NYPDドラマで犯罪ドラマの系譜がまるわかり!?
往年のNYPDドラマは、個性的なヒーローひとりをフィーチャーしたものが多かった。
ニューメキシコの保安官がNYPDであれこれやらかす『警部マクロード』(1970-77)、ハードボイルド系ダンディハゲの主人公が人気を得た『刑事コジャック』(1973-78)などがそれ。
80年代には、当時のバディものブームに乗った作品が登場。
『女刑事キャグニー&レイシー』(1982-88)は、就業に関する男女の垣根が低くなったことやワーキングマザーの増加を反映。性格もライフスタイルも正反対の女性刑事二人がヒロインだった。
90年代以降の主流は群像劇。
前半で警察の捜査と容疑者逮捕までを・後半で検察の起訴から判決までを描く『LAW & ORDER』(1990-2010)は、その特徴的なフォーマットと硬派な作風で20シーズン続き、多くのスピンオフも生んだ。
ロウワー・イーストサイドの分署で犯罪と向き合う刑事たちを描いた『NYPDブルー』(1993-2005)、NYPDとFDNYの消防士・救命士たちの奮闘ぶりを追う『サード・ウォッチ』(1999-2005)も複数の登場人物がメインのアンサンブル型。1話に複数のストーリーが並行して存在する「モジュラー形式」で脚本も複雑に。
2000年代に入ると、犯罪者の心理に迫る『LAW & ORDER クリミナル・インテント』(2001-11)や性犯罪を扱う『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』(1999- )、最新科学で事件の真相を究明する『CSI:NY』(2004- )など専門分野に特化していったが、ここ数年は主人公のキャラを重視する方向にシフト。
ベストセラー作家がNYPD殺人課の美人刑事と事件を解決する『キャッスル 〜ミステリー作家は事件がお好き』(2009- )や、超記憶症候群の元女性刑事が、恋人だった元同僚との再会を機にクイーンズ分署で現場復帰。完璧すぎる記憶力で捜査に挑む『アンフォゲッタブル 完全記憶捜査』(2011- )などがその流れを汲む。加えて、パートナー男女の「相棒以上恋人未満」な関係にやきもき・・・というのも、近年の刑事モノによくあるパターン。
こうした中、久々に「ザ・警官ドラマ」と呼べるNYPDモノが登場。それが『ブルー・ブラッド~NYPD 正義の系譜~』。代々、ニューヨーク市の警察官として街の治安を守ってきたレーガン一家を中心とする正統派クライムドラマだ。
★家業は「警官」! NYPDの血を受け継ぐレーガン家とは?
犯罪ドラマには『サード・ウォッチ』のデイヴィスのように「警察官だった父に憧れて・・・」というキャラがよくいるが、レーガン家の人々は筋金入り。
父:フランクはNYPDトップの本部長、リタイアした祖父:ヘンリーも元本部長というエリート。息子たちも警官としては血筋が良すぎるサラブレッド。長男:ダニーはグレード1の刑事、同じく刑事だった次男:ジョーは殉職。ハーバード・ロースクール卒の三男:ジェイミーも法律家にならず警官に。フランクの孫まで早くも警官に憧れている様子で、もはや「NYPDの警察官」はファミリービジネス。唯一の例外は長女:エレンだが、彼女も、法と秩序を維持する側の検事補。もう家族の中だけで『LAW & ORDER』状態が出来上がっちゃってるのだ。
そんなレーガン家の面々だが、各世代には隔たりも。
ヘンリー、フランク、ダニーは元海兵隊員という共通点があるが、従軍していたのは朝鮮・ベトナム・イラク。昔気質だったり、冷静な理想主義者だったり、暴走気味の熱血漢だったり・・・と警官のタイプにも違いが。祖父からひ孫までが集い、家族の結束を象徴する週末のディナーでも、警官哲学や正義観がぶつかり合う。家族間の世代差が絶妙なファミリードラマである点からすると、『ザ・ソプラノズ』のアイルランド系NYPD一家バージョンといった感じかも?
★昔ながらの刑事ドラマ好きも納得! リアリティ重視の硬派ドラマ
ストーリーもビジュアルも過激化が進む昨今の犯罪ドラマ。しかし『ブルー・ブラッド』には、猟奇的な犯罪や無残な死体が出てくるショッキングな事件も、露骨なセクシーシーンもめったにない。作品全体を貫くミステリーである、「次男殺害に関わった(かもしれない)警察の秘密組織《青の騎士団》」へのアプローチも丁寧。
先輩にダメ出しされながらのパトロールや夫婦ゲンカの仲裁など、「こんな毎日のほうがメインなんだろうな」と想像させるところにも現実味がある。
また、NYが舞台でも実際はLAで撮影している番組は少なくないが、『ブルー・ブラッド』はほとんどのシーンをニューヨークの街角やスタジオで撮影。このことも街の空気がリアルに伝わる要因ではないだろうか。
先述の『LAW & ORDER』もニューヨークで撮影されていた。その長年の功績を称え、ロケでよく使われたチェルシー・ピアの道に番組名が付けられている。本作もロングランとなれば、マンハッタンやブルックリンの通りに名が刻まれる可能性も・・・?
数字が取れなければすぐに打ち切られてしまうことが多いアメリカテレビ界。その中にあって『ブルー・ブラッド~NYPD 正義の系譜~』は2012年秋にシーズン3に突入する。このまま人気と高評価を維持すれば、名実ともにNYPDドラマの雄となるに違いない!
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『ブルー・ブラッド~NYPD 正義の系譜~』
DVD-BOX<Part.1・2> 9月7日(金)発売
DVDレンタル 9月7日(金)開始
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『ブルー・ブラッド~NYPD 正義の系譜~』(c)2012 CBS. CBS and related marks are trademarks of CBS Broadcasting Inc.All Rights Reserved. TM, (R) & (C) by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『LAW & ORDER』(c)1995 Universal Network Television LLC. All Rights Reserved.
『キャッスル/ミステリー作家のNY事件簿』(c)ABC Studios.