オープニング、ラロ・シフリンが手掛けた『ダーティハリー2』のテーマ曲(だよね?)からいきなり始まり、テンション爆上げ! 1970年代の犯罪映画をバイブルに、警察官と詐欺師、その詐欺師の命を狙う殺し屋、そして全員まとめてぶっ殺しにやって来る冷酷サイコパス野郎と…めくるめく攻防戦をスリリングに描いたサバイバルアクション『炎のデス・ポリス』(本日より公開)が爆裂的に面白い!【映画レビュー】
『炎のデス・ポリス』あらすじ
舞台は、砂漠地帯に佇む小さな警察署。ある夜、暴力沙汰を起こした詐欺師テディが連行されてくる。マフィアに命を狙われているテディは、避難するためにわざと逮捕されたというのだ。だが、マフィアも馬鹿じゃない。殺し屋ボブが泥酔した男に成りすまし、難なく留置所に潜り込んできた。「隙を見せたらテディが殺される」…事態を察した新人警官ヤングはボブのテディ抹殺計画をなんとか阻止するが、今度は新たな刺客として得体の知れないサイコパス野郎アンソニーが現れ、署員を次々と血祭りにあげていく。大惨事となった警察署、かくして孤立無援のヤングと裏社会に生きる3人の男たちによるサバイバルバトルの火蓋が切って落とされる。
まず注目したいのが、悪党三人衆のクセの強いキャラクターだ。アルコール臭ムンムンのむさ苦しい殺し屋ボブをジェラルド・バトラー(『ジオストーム』『300<スリーハンドレッド>』)、何を企んでいるかわからないミステリアスな詐欺師テディをフランク・グリロ(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)、冷酷無比なサイコパス野郎アンソニーをトビー・ハス(『ハロウィン』)がそれぞれ怪演し、警察署内を血の海に染める。
そんな中、孤軍奮闘するのが新人の女性警官ヤングだ。『ブラックパンサー』やドラマ『ウォッチメン』などに出演した新鋭アレクシス・ラウダーにとって大抜擢(ある意味主役)となったが、腹の出た怠慢な先輩警官をよそに、独り気を吐く彼女のガッツとアイデアが本作の原動力となる。
また、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』やドラマ『ブラックリスト』のジョー・カーナハン監督が今回メガホンをとっているが、“小さな警察署”というワンシチュエーションをフル活用した演出も秀逸だ。留置所に邪悪なものを溜めて、溜めて、どんどん溜めて、サイコパス野郎登場をきっかけに、全てが爆発するという「密閉」と「解放」、ローからトップへのシフトチェンジは見事。ウトっとしている人(いないと思うけど)もここで一気に全細胞が開き、アドレナリンが大沸騰! さらに吹き抜け構造を生かした迫力の銃撃戦や炎上シーン、スローを効果的に入れ込んだサム・ペキンパーばりのバイオレンス描写が観客を釘付けにする。
『炎のデス・ポリス』というタイトルが実にB級っぽく、宣伝サイドの狙いがはっきりとしているが、筆者は、緩急をつけた無駄のないストーリー展開、濃すぎるくらいの強烈キャラクター、そしてCGに頼らない体を張ったアクションと70年代風の熱を帯びたダイナミックな描写は、A級認定したいところ。この夏、間違いなく劇場で楽しめる極上エンタテインメントの1本だ。
映画『炎のデス・ポリス』は、本日7月15日(金)よりTOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
(文/坂田正樹)
Photo:映画『炎のデス・ポリス』©2021 CS Movie II LLC. All Rights Reserve