5月2日、ひかりTVで配信スタートとなった日本初上陸のドラマ『アーミー・ワイフ』は、米国軍人の妻たちを描いたドラマですが、日本の視聴者としては「米軍」や「軍人の妻」ってなんだか違う世界の話に聞こえてしまいがちですよね。
ということで、ドラマをもっとリアルに楽しんでいただけるよう、米軍横須賀基地で勤務する軍人の夫をもつ「妻」のみなさんにお集まりいただきました。『アーミー・ワイフ』ならぬ『ネイビー・ワイフ』ですが、"軍人の妻"であるからこそ語れる話をぜひお楽しみください。
お話を伺ったリアル「妻」のみなさん
(写真左から)
ニーナさん:ノースカロライナ出身。ご主人は大尉(0-3)。ニーナさんも元軍人。
ひろみさん:宮崎県出身。ご主人の階級は少佐(0-4)。
レイチェルさん:マサチューセッツ出身。ご主人の現在の階級は最上級曹長(E-9)。
――今日はよろしくお願いいたします。今回先に『アーミー・ワイフ』を見ていただいてから集まっていただきましたが、そもそもこのドラマ、ご存じでしたか?
レイチェル:知らなかったわ。どこでやってたの?
ニーナ:確かLifetimeTVでやってたよね。女性が主人公のドラマが多いTV局。『デスパレートな妻たち』もlifetimeじゃなかったっけ?
ひろみ:実はアメリカ人は軍人であることに、ものすごいプライド(誇り)を持っているんです。だから『アーミー・ワイフ』というこの作品、「陸軍」が舞台でしょ? レイチェルやニーナは「海軍」の妻だから、「海軍」関係のドラマはチェックするけど「アーミーもの」はめったに観ないのよ。「海軍」であることが誇りだから。
――ちなみに本国にいた時は、どんなTVドラマを見てたんですか? お好きなドラマってありました?
ニーナ:私は『バーン・ノーティス』が好きだったわ。
レイチェル:『ヴァンパイア・ダイアリーズ』は観てたわね。好きよ。
ひろみ:私はやはり『NCIS』。『アーミー・ワイフ』を見て「あ、あの人『NCIS』に出てた人じゃない!?」って思いながら観ましたよ!
――皆さんがお好きな作品、どれも日本にも上陸しているんですよ!...ということで、そろそろ本題に入りますか! まずは、ご主人とのなれそめを聞かせてください。
レイチェル:(照れながら)私は同郷の友人の紹介で。フランスで出会ってその6か月後に結婚しました。友人は当時ヴァージニアに住んでいて、ヴァージニアで船に乗っている彼の友人と知り合い、彼らも結婚したんです。でも彼らは後日別れてしまいましたが。(苦笑)
ニーナ:私たちは大学で知り合いました。私が2年の時、彼が1年で入ってきたんですが、卒業年は一緒でした。卒業して半年ぐらいして婚約し、結婚したんですよ。
ひろみ:私はもちろん日本で。知人の紹介です。福生市で出会いました。
――米軍は転勤ってどの程度ありますか?日本の自衛隊は3~4年周期で転勤があるんですが。
レイチェル:ノーフォークに私は7年、彼は15年いて、横須賀...というか海外のポストに来たのはこれが初めてなんですよ。
ニーナ:何度も転勤しましたね。フロリダに3年...メリーランド南部にも3年いたわね、横須賀は2年になるわ。大体2・3年ごとに転勤してます。
――『アーミー・ワイフ』では基地の中に家族が住んでいる光景が描かれていますが、皆さんも横須賀基地の中に住んでいるんですか?
全員:いえいえ!
レイチェル:アメリカでも必ず基地内に住むわけではないです。基地内の家の数は限られているので。かなりの順番待ちですよ。
ひろみ:今は基地の外に住んでいる人の方が多いと思いますよ。外でも官舎のように一か所に固まって住んだりもしないですね。でも今では、どこでも好きなところに住んでいますよ
ニーナ:以前は、軍人のために建てられた家に住んだことがあるわ。ここの基地内でも、同じ建物の中でも、ランクや勤務年数、あるいは家族の人数によって、官舎内のどういう家を借りられるかは限られているのよ。
――そうなんですか! ところでドラマの中で夫の階級が奥様たちの関係性にも何かしら影響が出ている...そんな場面が何度かあったのですが、実際のところはどうですか?
レイチェル:(夫の階級のことは)私たちは気にしませんね...。気にする人もいるけど、ごく少数よ。
ニーナ:ここ(横須賀)は狭いし、日本の中の米軍という特殊な状況だから少し違うと思うの。本国の基地は広いし、何をするのも自由ですから。夫が何してるとか、関係なかったわね(笑)
ニーナ:階級がかなり上の人の奥さんたちに会ったこともあるけれど、少し話をするぐらいで、親しい友人になったり、ひんぱんに家を訪ね合ったり・・ってことまではないんですよ。でもそれは、相手との年齢がずっと離れていたり、子どもさんもずっと年上だったり、共通の話題とかがないから、ってこともあるわね。
ニーナ:ああ、でも以前こんなことがあったわ。最初は普通に奥様同士で交流してたのに、あるとき相手の旦那さんが結構上の階級の方だったことを知って、もう一方の奥様が自然に距離を置くようになった...ってことが。
ひろみ:主人たちの世界に限らず、「上の階級にいるものは下の階級のものたちの面倒をみる」という考え方は、奥さんたちにもありますよ。私も2個上の階級の奥さんに「何か困ったことがあったらいつでも声かけてね」って言われたことありますし。逆に、下の奥様たちから上役の方の奥さんに積極的に交わろうとすることはないですね。ちょっと遠慮するっていう感じ。
レイチェル:私の場合、上司の奥さんと知り合いになったこともあるけど、彼らは本当にいい人で、何か困ったことがあれば必ず力になってくれるような人たちだったわ。船長の奥さんというのはたいがい本当に頼りになる人なのよ。きっと若い頃に同じ経験をしているからじゃないかしら。
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――『アーミー・ワイフ』をご覧になって、軍人の妻としてドラマの内容で共感できることや、これはちょっと現実とは違うわ...というようなことがあれば教えてください。
レイチェル:エピソードの中で「辞令の内容が変わる」シーンがあったでしょ? あれはわかるわ。...夫が違うところに赴任するという話がきて、その辞令を待ちながら引っ越しの準備していたら、最後の最後でキャンセルになって...。また元の生活に戻さなきゃならなくなったとか。そういう点でいうと、妻としては、いつも何かを待たされて宙ぶらりんになっているような気がするわね。彼が軍人であるという理由で。
ひろみ:最初は二人だけの家族だけど、子どもが生まれて家族が増えていくと、引っ越し自体も大変だし、子どもたちがその場所で築いた人間関係も考慮しないとならないし。かといって主人だけが赴任しておいてきぼり感を味わうのもつらいし。
ニーナ:番組の中では全てがドラマチックで、いろんなことがいっぺんに起こるけど、もちろん現実にはそんなことはないわよ(笑)。日常はもっとささいなことばかり。夫が赴任地に行く前にはときに言い争いになったりもするけど、それは悲しみを紛らわすためなの。それは私たちの間では習慣みたいなもの。でもドラマのような大げさな展開になることはさすがにないわね。周りの人も、だいたい(笑)いい人だし、みんなお互いを支えあってるわよ。(テレビのような)秘密の代理妊娠とか、監禁とか、家庭内暴力とか、まずないわ(大笑い)
ひろみ:共感できる点といえば、やはり軍人の妻であること。自分は日本人だけど、主人と結婚して一緒に暮らすうちに、私も彼と一緒にアメリカのために働いているという感覚になったの。「戦地に行く」といえば聞こえが悪いんだけど、「国のために働く」という点で私も家族も主人を応援しているし、ドラマの中で独立記念日の式典の場面があったけど、あのときのクラウディアのスピーチはすごく共感できたわ。
――ところでご主人が軍人だったことでよかったと思うこと、逆に大変だなと思うことってありますか?
ニーナ:娘は父親が海軍にいることをとても喜んでいます。お父さんはアメリカのために戦っているととても誇りに思っています。実は我が家はお祖父さんも軍人、父も海軍...軍人一家なんですよ。
レイチェル:とはいえ、子どもがいるので、夫がいつも一緒にいてくれないのはツライわね。でも夫が任務に行っている間も、私たちには友達や家族が周りにいるけれど、夫は1人だから、彼の方がもっと辛い。
ニーナ:あちこち転勤になるのは辛いけれど...でも、そうでなければこうやって日本に来ることはなかったわけだしね!
ひろみ:そうそう(笑)。外資系の会社に勤めている人なら経験するかもだけど、軍人の妻になったことで、普通は行けないようなところに行くことができて、新しい体験ができて、新しい何かを学んで...私の場合は日本を客観的に見ることもできるし。
ひろみ:そういえば、単身赴任って戦地以外はあまりない気がするけど、実際どうなの?
ニーナ:実は戦地だけじゃないのよ。海軍では3つのパターンね。1つはPCS、これは駐在地が変わるということ。この場合家族と一緒に移るわ。例えば日本への赴任でも、単身で来る人も少なからずいるの。これは2・3年ぐらいね。もう1つはデプロイメント(ある場所への配置)。船に乗って行くのでこれは単身赴任。6~9か月ぐらい。もう1つはIA、これは海軍軍人が陸軍に派遣されたり、通常の職務とは違うことをするので、これも単身よ。だいたい1年ぐらいね。
――素朴な疑問ですが、軍を変わることってあるんですか? 海軍から陸軍に、とか...。
レイチェル:めったにないですが、ゼロじゃないわ。主人の知り合いで海軍から陸軍に移った人がいたの。ずっと昇進がないと軍を解雇されることがあるのよ。それで彼は陸軍に入りなおしたの。でも気の毒なことに彼は陸軍に移ってすぐ戦車の任務で戦死してしまって。悲しいことでした。
ニーナ:直接の知り合いではないけど、軍を移った人がいるのは知っているわ。海軍ではヘリコプターのパイロットだった人。彼は昇進することになったんだけど、管理する側に回るともう現場でヘリの操縦ができなくなってしまう。でも陸軍所属のパイロットは海軍よりもっと飛ぶ機会が多いから...って彼は陸軍に移ったのよ。
ちなみに海軍のシンボルカラーはブルー、陸軍はグリーンなので、海軍から陸軍に移ることを「ブルー・トゥ・グリーン」っていうの。陸海軍と海兵隊ができたのは1775年ごろ。空軍ができたのはずっと後のことだから色で呼ばれることはないのよ。
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――ニーナさんは、ご自身も元軍人ということで、『アーミー・ワイフ』のジョーンとまさに同じような環境にいたと思いますが、女性として軍隊にいることをどう思っていましたか?あと女性だからこそ大変だったことは?
ニーナ:私は海軍の一員であることを誇りに思っていたし、海軍を心の底から愛してました。同僚たちのことも大好きでした。自分の仕事に誇りを持っていたし、これからもずっと死ぬまで大切にしていく思い出よ。
海軍で、女性であるから辛かったことはないわ。私のいたヘリコプターの部隊でもね。海軍の他の部署にも女性がいたからお互い助け合ったし。女性の軍人全ての代弁をすることはできないけど、私自身は海軍にいた男性とも女性とも、うまくやっていましたね。男女の間で緊張感がまるでなかった...とは言いませんが、私も、私と同じ部隊だった他の二人の女性も明るかったので、私たちの存在は皆にとってもプラスだったと思うわ。みんなで楽しく過ごしてたわ。
――『アーミー・ワイフ』に登場する4人の妻たちと一人の軍人の妻。ご自分は誰に一番似ていると思いますか?
レイチェル:私は出逢って数日で結婚しちゃった若い子(ロキシー)! 私自身も短い付き合いでさっさと結婚しちゃったから(笑)。でも結婚してもう7年になるのよ。
ニーナ:パメラかなあ。彼女は元警察官でしょ?そういう経験が似てるから。以前はある意味男っぽい職業についてて、今は母親って点が似ていると思うわ。
ひろみ:私はデニス。
レイチェル、ニーナ:デニスって...虐待されてる人? あなた、されてるの?
ひろみ:虐待はされてないけどね(笑)
――デニスはある意味昔ながらの日本の妻のようなところがありますよね。本音を言えずぐっとこらえてしまうところとか、自分に自信が持てないというか。
ニーナ:デニスは「私はいつも誰かの娘」とか「誰かの妻とかだった」って言ってたわね。
ひろみ:私は自分自身については何も言えることがないんだもの。夫の妻で、娘の母で、妻や母として努力はしてるけど、私自身のものはないなあって。
レイチェル:子供を持つと、誰でもそういう風に感じる時期があるわよ。
ニーナ:あなた(ひろみさん)がアメリカに来ればその感覚は変わるかもよ。あなたは「日本から来た人」になるから、それはあなた自身のことでしょ。皆があなたに日本のことを聞きたがるし。そのとき、あなたは「日本代表」になるのよ(笑)
レイチェル:そのときは『Real Housewives(of Beverly Hills)」とかをTVで観て、アメリカの妻はみんなあんな感じだとか、思ってほしくないわね(笑)(海外ドラマNAVI)
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『アーミー・ワイフ』
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5月23日から、シーズン1最終話までの配信がスタートします!