古くは『ドリフの大爆笑』から気になっていたあの笑い声。人それぞれでも、脳内再生される笑い声は何となく似通っているのではないだろうか。「笑えよ」っていうポイントで投下され、一見親切そうな合いの手にも見える。しかし自分の笑いのツボと違うと、一気にわざとらしく聞こえてしまう不思議な笑い声。子ども心にどうせ録音だろうと聞き耳を立ててみるが、微妙に笑い声が違うような気がして確信が持てない。そのまま時は流れ、ついに初老近くになってしまった。ここ最近は特にシットコムと呼ばれるアメドラで気になるようになった。
アメドラは笑い声だけではない。登場人物が、どや顔で見得を切ったときは拍手の喝采。キスをすると口笛、拍手である。アメドラの笑いは、作者と大きくズレることが多いので特に気になってしまう。
国民性の違いか、自分の感性の違いか。私の笑いの感性が著しく劣っているのか、ずれているのか?
実はずっと気になっている。私以外の方々は、家でもあんなに声を出して笑うものだろうか...
自分が試された時があった。結果は惨敗。2年前、 ロサンゼルスで行われたFOXでの試写会スクリーニング。そのスクリーニングはシットコムばかりが8本、9本と続いた。
私と一緒に参加したアメリカ生活の長い先輩ライター以外はノン・ジャパニーズ。広い劇場の中、日本人は我々だけであった。そこで上映されたシットコムの会場の反応は上々。スクリーニングで映し出されるシットコムの笑い声に呼応するように会場中は笑いに包まれるのである。
無表情の私。
すがる思いで隣に座る先輩の反応を暗がりの中探ってみると、アメリカ人ばりに「ガーッハッハ」と笑っているのだ。目を見張って隣の先輩ライターを見つめる。その会場で笑っていないのはおそらく私ひとり。相当な敗北感であった...
段々とあの笑い声は絶対に録音じゃないような気がしてきた。私がただ捻くれているいるだけだ。捻くれていない世の人々は、きっと朗らかに楽しく、ウィットに富んだ会話で笑われておられるのだ。でないと録音の笑い声を入れるにしても、あそこまで本当の笑いのタイミングにびしばし挟めない筈だ。
そんな思いを抱きながらある日、居間で自分の子とぼんやりとディズニーチャンネルで『ジェシー!』を見ていた。
『ジェシー!』はローティーン向けの3シーズン続くディズニーチャンネルの人気バラエティシットコムである。テキサスの田舎から親に反発して自分の夢を叶えるためにニューヨークに出て来たジェシー(デビー・ライアン)が、大金持ちの4人の子どものベビーシッターをしながら、大切なことを学んでいくハートフルコメディーだ。
相変わらず飛び交うどや顔と、それに続く笑い声、喝采、そして自分の子の笑い声...。それを相変わらず無表情に聞いていた刹那、まるで持っていた(実際は何も持っていないが)コップをスローモーションで床に落とし割ってしまうくらいの重要なことに気が付いたのである。
「笑い声が子どもの声じゃねー!」
このドラマが子どものために作られたものであれば、当然それを見ているのは子どもで(現に自分の子も喜んで見ているし)、笑うのも子どもの筈だ!!
それがこのドラマの笑い声は大人の笑い声だ!!!!! 策に溺れたなハリウッド!!!! 30年振りに再び頭をもたげてきた笑い声やらせ説。しかし性急な結論は身を滅ぼす。ここは大人らしく、冷静に検証をしてみたいと考えた。
ドラマに被る笑い声はガチかやらせか?
この命題の明快な解はひとつ。
実際にドラマの収録現場に足を運ぶことだ。この目で見て、耳で聞いて、実際に感じたことが真実を教えてくれる。
そしてそこで学んだことを皆様にシェアしたいと思う。
何気にこの探求は自分の存在価値も掛かっているので重要なミッションである。ただ私がズレているだけか、私はアリか。皆様に情報を提供出来る資格があるかどうかが試される。
さてどのように撮影現場に入れてもらうかだ。これは単純にドラマの撮影の観覧希望に応募するのが近道であると考えた。調べてみると意外にもドラマの観覧希望は結構募集しているのである。これは考えてみれば、笑い声が本物であることを証明しているかもしれない。やらせの笑い声であれば、エキストラなどの仕込みで済むからである。むしろ録音を使え回せば良い。いきなり少しへこたれそうになる...。
グーグル先生で色々調べた結果、いくつかのサイトが見つかり、実際に登録してみた。いよいよ次回は、スタジオに実際に乗り込む話を書く...いや、書きたいので、まずは観覧権をゲットしないと!
続報を待っていてほしい。
40近くで自分探しの旅に行ってきます!