Netflixのオリジナル・シリーズ『Marvel デアデビル』で、盲目のヒーロー、デアデビルことマット・マードックを演じているチャーリー・コックス。プロモーションで世界中を飛び回る中、疲れも見せずに現れたチャーリー。写真撮影は苦手というシャイな一面をのぞかせつつ、インタビューではドラマの魅力から撮影の裏話まで大いに語ってくれた。
――シーズン1のマットはチームプレーより個人プレーの方が目立ってましたが、シーズン2ではチームプレーの方法を少しずつ学んでいっているように思えます。これから『The Defenders(原題)』(デアデビルやジェシカ・ジョーンズなどのヒーローがチームを組んでともに戦う作品)もありますが、彼のこの変化がどう影響していくと思いますか?
そうなんだ。シーズン2が終わる頃まで、マットはどちらかと言うと自分一人でやれると思っているんだ。彼はとても頑固だし、自分に近い人間を絶対に危険な目に遭わせたくないと思っている。彼らに危険が及ぶ事に怯えているんだ。だからあえて彼らを遠ざけ、自分一人で戦ってきた。そしてひとつ、ひとつ勝利を重ねる事で自信をつけ、自分一人でもできると思い込んでいたんだ。でもシーズン2では時に強いられ、時に操られ、チームプレーで戦う事を余儀なくされる。意外にもマットはそれを楽しんだんだよね。チームで戦うという事に喜びを見出し、共に戦う事も必要だと感じたんだ。『The Defenders』については、どういう内容になるかはまださっぱり分からないけど、もしかしたら彼はこのためにチームワークを理解し始めたのかもしれないね。
――フィスク役のヴィンセント・ドノフリオやフランク・キャッスル役のジョン・バーンサルなど、錚々たる俳優陣がヴィランを演じていますが、彼らと共演してどんな刺激を受けましたか?
二人とも大好きな俳優だったし、彼らの世代の俳優の中ではジョンもヴィンセントもヘビー級の俳優だと思う。共演できた事は素晴らしい体験だったよ。ヴィンセントは長い間活躍しているし、ジョンのことは『ウォーキング・デッド』や『フューリー』の演技を見て、本当に尊敬していたんだ。厳密に言うと、ジョンが演じるキャッスルはヴィランというよりもデアデビルとは対立的な立場にあるって感じなんだけど、いずれにしても彼らが参加する事で作品のステータスも上がるし、俳優としても演技のハードルが上がるから、彼らの出演が決まった時はいっそうワクワクしたよ。
――撮影中に印象に残っているエピソードはありますか?
シーズン2第3話の階段のシーンは、シーズン1で人気があった廊下のシーンのオマージュみたいなものだったから、撮影前は少しナーバスになってたんだ。シーズン1のあのシーンは本当に素晴らしいものになったから、それを汚すわけにはいかないという気持ちもあって、演じるのにちょっと躊躇していた部分もあったんだけど、一方で作品が始まってから1年が経ち、僕のアクション能力も上がったので喜びも感じてたんだ。一番覚えているのは、最初にジョン(・バーンサル)を2分間運ばなきゃいけなかった事。あれは最悪だったよ(笑) 本当にキツかった(笑) それと、デアデビルが銃を突き付けて笑みを浮かべるシーンがあるけど、あれはコミックス184巻の「No More Mister Nice Guy」からのイメージなんだ。以前ドラマのファンと会う機会があって、彼らの中でデアデビルというキャラクターがどう映っているのかを知ったから、このシーンを演じた時は「これは絶対にキメないといけない」と思ったんだ。
――撮影現場ではどんな風に過ごしているんですか? 共演者との関係は?
作品というのはそれこそ自分一人でできるものではなく、共演者あってこそのものだけど、特にジョンは僕と似ていると感じているよ。僕たちは二人ともひとつの事に執着と言ってしまうのもあれなんだけど、考えすぎる傾向があるんだ。午後は一緒に過ごして、夕食を食べながら話し合い、リハーサルをも入念にして、お互いにそんなにやらなくても...とからかい合うくらい(笑) それくらい僕たちはお互いに情熱的なんだ。(カレン役の)デボラ(・アン・ウォール)はキャストの中でも特に聡明な人だと思う。素晴らしい洞察力を持っていて、とても面白いアイデアを出してくれるんだ。彼女との共演シーンでは、黙っていても良いアイデアが出てくるから、あんまり頑張りすぎなくてもいいような気持ちにさせてくれるんだ。とにかくみんなプロだし、心が広くてまさにファミリーという感じだよ。ちなみにエルデン(・ヘンソン)はいつもリラックスしていて、本当にフォギーみたいなんだ。シーズン2から参加した(エレクトラ役の)エロディ(・ユン)は、途中から番組に参加するのはどの役者でも難しい事だと思うけど、そういう意味でとても勇気があるし、彼女自身すごくカリスマ性があるんだ。それは映像を見ても分かると思うけど、僕は彼女がすぐにスターになると見込んでいるよ。
――Netflixのマーベル作品は、人間ドラマに重きを置いているのがひとつの特徴ですよね。本作も完全無欠のザ・ヒーローというわけではなく、その苦悩といったものに焦点を当てていますし、そういう意味では正統派ヒーローとは違うものを演じる事で、大変な事もあったかと思うのですが、役作りの上で苦心したところは?
Netflixでドラマをやる最高の部分というのは、13時間あるという事。テレビでは視聴率に影響される事もあるけど、シーズン一挙配信というスタイルのNetflixなら13時間の映画を作るように物語を描く事ができるんだ。2時間の映画と違い、よりキャラクターをじっくりと描く事ができるのは素晴らしい利点だよ。伝統的な完全無欠という資質を持っているスーパーヒーローなら、善の力を持ち、すべての選択が正しく、他愛的でバランスが取れているけど、ある意味、理想主義に傾きすぎる危険性もあると僕は思っているんだ。それを13時間、シーズン2を含めれば26時間、さらに今後も続けられる可能性がある中で、ただそれだけを描いていたら面白くないよね。だから僕が一番大切にしていたのは、マットというキャラクターを人間として演じる事だったんだ。可能な限り、視聴者に共感してもらうためにも、彼の欠陥を見せていく事が一番の方法だと思ったから。そうすれば応援してもらえるしね(笑) もちろんマットだって正しい事をしたいと思っているし、優しい心を持ち、善の力として人々を助けたいと思っているけど、ちょっと短気な性格が足かせになったり、自分のやっている事に誇りを持ちすぎる彼自身のエゴな一面とも戦う事になるんだ。だからもしかしたらこのドラマの一番のヴィランは、マットの中のダークサイドなのかもしれないね。人間は誰しもそうだけど、マットもまた、それを乗り越えようとしているんだ。
『Marvel デアデビル』シーズン2はNetflixで好評配信中。
Photo:チャーリー・コックス
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