突如現れた巨大飛行体をめぐる、美しく切ない感動SF映画『メッセージ』。言語学者ルイーズが、人類に送られたメッセージの真相を探っていくこの物語は、実は主人公が女性だったからこそ成り立つ作品であったようだ。さらに今回、"彼ら"が上陸した12カ国のうち半数が著名な女性主導者を輩出しているという、現代社会との不思議な関係も判明した。
"娘を亡くした"言語学者ルイーズを演じるのは、アカデミー賞に何度もノミネートされている実力派女優のエイミー・アダムス(『魔法にかけられて』『アメリカン・ハッスル』)。彼女は今回の役について、「ルイーズは、自身の恐怖心や強い義務感を通して物事に取り組む。男性的で軍隊がいるような環境でも果敢に立ち向かっていくの。彼女は周囲の意見に流されず、人類が"彼ら"への攻撃に急ぐことは、皆が望む答えを得られないことを知っているのよ」と、実際に6歳の娘を持つ母であるエイミーだからこそ語ることのできる言葉を残した。
また、共にメッセージの解読に挑む数学者イアン・ドネリー役のジェレミー・レナー(『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』)は、"娘を亡くした母"である主人公を支えたいという思いから、自らサポート役を志願して出演に至ったようだ。
そんな芯の強い美しいルイーズを象徴するかのように、本作で"彼ら"が上陸した国の多くは、現代社会において女性主導者が活躍を見せる国家でもあった。イギリスではマーガレット・サッチャー以来二人目の女性首相となるテリーザ・メイ首相が就任。記憶に新しい昨年のアメリカ大統領選では、ドナルド・トランプ大統領と接戦を繰り広げた候補者ヒラリー・クリントンの存在があった。さらに日本でも、昨年8月に東京都知事となったのは初の女性都知事である小池百合子だったのだ。このほかにもデンマークやパキスタン、オーストラリアなどで女性主導者が活躍している。
『プリズナーズ』『ボーダーライン』などで知られ、今回が自身初のSF映画となった監督ドゥニ・ヴィルヌーヴは、「できる限りリアルに見える映画にしたかった。だから、たとえ見映えがしないとしても可能な限りリアリティから離れずに、現実に根ざした繊細なドラマを目指したんだ」と、現代社会との共通点の理由を明かしている。
果たしてこの女性との因果は、ただの偶然なのか。『メッセージ』は大ヒット公開中。(海外ドラマNAVI)
Photo:映画『メッセージ』