日本で海外ドラマといえば、アメリカをはじめとした英語圏の作品の存在感が強いが、今、世界でブームになっているのがトルコのドラマだ。トルコ国内でも大ヒットを記録した宮廷ドラマ『オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~』はその好例と言えるだろう。同作は国内で数々の賞を受賞したほか、中東やアジア、北米などの世界各国で絶大な人気を博している。トルコは500以上のプロダクションを擁し、同作も含めたTVドラマ輸出額でアメリカに次ぐ世界第2位となるなど、良質なTVドラマ生産国としての地位をこの10年ほどで確立している。
◆トルコの豊かな文化を描くドラマ、海外局の視聴率が350%向上
2008年にわずか1000万ドル(約1070万円)だった海外での収益が2017年には35倍の3億5000万ドル(約375億円)に上るように、快進撃を続けるトルコドラマについて、文化と地の利の賜物だと分析するのは英誌Screen Dailyだ。トルコは民族性や宗教の面で豊かな文化的土壌を誇る上、洋の東西を橋渡しする地点に位置する。
特に目を引くのがロシアでの成功例だ。同誌によると、冒頭で挙げた『オスマン帝国外伝』を成人女性をメインターゲットに据えたロシアのチャンネル、Domashyで放送したところ、視聴率が350%も向上する結果となった。
現状での主な輸出先は中東とラテンアメリカだが、裾野は世界に広がりつつある。米誌Varietyは、ヨーロッパ、南アフリカ、アジアに向けた輸出が拡大中であるほか、北米など英語圏が次なるターゲットだとしている。
同誌によると、現在は特に韓国ドラマ界と良い関係にあるそう。トルコドラマが韓国で好調である上に、過去2年間で10本の脚本が韓国からトルコ側に輸入されており、共生関係がうまく成立している形だ。
◆輸出好調で好循環
そんなトルコドラマの勢いはとどまるところを知らない。トルコの日刊紙Daily Sabahは自国ドラマの躍進について、番組輸出額がアメリカに次いで世界で2番目だと讃える。放送国は140ヵ国を数え、有名俳優を多数起用したラブストーリー『Endless Love(英題)』が国際エミー賞のテレノベラ部門で最優秀作品賞を受賞した通り、品質の高さも際立つ。
Screen Daily誌は、好調な輸出を受けて制作規模がさらに拡大する好循環に入ったと捉えている。ドラマ一話あたりの製作費として80万ドル(約8700万円)が投じられるケースもあるほか、出演陣にも高額のギャラが支払われている。潤沢な資金のもと、「トルコのシリーズは、東ヨーロッパ、中東、そして北米で非常に成功している」と同誌は伝える。
ただし、スターの起用に頼りすぎるのは危険だ。Variety誌は、高額なスターを起用しすぎて破産したプロダクションの例を伝える。また、人気俳優の起用が高視聴率につながるとも限らず、面白いことに国内の政治を扱ったトルコ向けのドラマが世界で受ける例もある。
◆ますます強まる世界とのコネクション
トルコ製ドラマの伸びは当面続きそうだ。Daily Sabah紙は、78ヵ国を対象に行った調査の結果、特に輸入物のフィクション番組においてトルコ製の割合が顕著に高かったという事実を明かしている。各国で放映されているフィクション番組のうち、輸入番組は全体の30%ほど存在し、そのうち実に4本に1本がトルコ製だということが分かった。
Variety誌は今後の展開について、北米への浸透と新たなビジネスモデルの構築をポイントに挙げる。南アフリカ向けにLAで制作する英語吹き替え版を北米市場にも流通させるなど、既存の基盤を生かした試みが予定されている。
また、海外との共同製作部門を立ち上げ、世界のクリエイターが制作に参加できる場を作るといった新たな取り組みも出てきていると、記事では紹介している。世界とのつながりを深めるトルコドラマが日本でホットな話題になる日も近いかもしれない。(海外ドラマNAVI)
Photo:『オスマン帝国外伝 ~愛と欲望のハレム~』
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