「BBC史上最も怖いドラマ」『レクイエム』レビュー 過去の名作を彷彿とさせる理由は?

「レクイエム」とは、死者の魂を鎮めるための曲だ。そして、「BBC史上、最も怖いドラマ」と評価されているBBCの新作ドラマのタイトルでもある。

【関連記事】スティーヴン・キング×デヴィッド・E・ケリーの最強タッグが贈る戦慄のミステリー『ミスター・メルセデス』

◆「オーメン」や「ハマー・ホラー」を彷彿と
『レクイエム マチルダ・グレイの秘密』は、BBC1で2月2日に放映が開始となった連続ドラマだ。英紙のTelegraphやMetroは、「BBC史上、最も怖いドラマ」と描写している。映画やドラマのデータベース・サイトIMDbによると、心理ホラーであると同時に、超常現象を扱う作品でもある。主人公はロンドンで活動するチェロ奏者のマティルダ・グレイ(リディア・ウィルソン)。彼女の生い立ちと、1994年にウェールズで起こった幼児の行方不明事件との関係を紐解きながらストーリーが展開していく。

ドラマは、ウェールズのマナーハウス(領主の大豪邸)で、男性が自殺するシーンから始まる。そして場面はロンドンに変わり、マティルダの母親(ジョアンナ・スキャンラン)がマティルダの目の前で喉をかき切って自殺する。自殺の理由は不明だ。母の死の謎を解明しようと、マティルダはウェールズへと向かう...。という具合に、ドラマの幕開けと同時に、ものすごいスピードで話が展開していくようだ。英紙Guardianは、「ドラマが始まってまだ15分も経っていないのに二人も自殺した」と速い展開ぶりに驚きを隠せない。同紙はまた、この作品を見て「もしあなたが『オーメン』のシリーズものだと勘違いしても無理もない」と、その怖さを表現している。『オーメン』とは、1976年に公開されたアメリカ映画で、その後もシリーズで映画が作られたり、テレビドラマが作られたりと人気を博したホラー映画の定番だ。

一方でTelegraphのレビュー記事では、「ハマー・ホラーを高級志向にした感じ」と表現している。ハマー・ホラーとは、1950〜1970年代にイギリスでホラー作品を世に送り続けたハマー・フィルム・プロダクションズが手がけたホラー映画を指す。ホラーの古典的なキャラクターとも言えるフランケンシュタインやドラキュラ、ミイラなどが題材の作品を手がけ、「ブリティッシュ・ホラー」の代名詞ともなった。

◆Netflix配信で英国外でも視聴可能に
脚本を手がけるのは、オーストラリア出身のクリス・マークサだ。BBCとのインタビューで、影響を受けた映画として「1960年代から1970年代初頭の作品」と述べている。オーストラリアで一晩中、古い映画を放映していたチャンネルがあり、その時代の作品をよく見ていた、と語っている。『レクイエム』の例えとしてハマー・ホラーやオーメンというこの時代の作品が挙がっているのも偶然ではないのだろう。

番組は今のところ、全6話で構成されるシリーズ1のみ。しかし雑誌Radio Timesとのインタビューでマークサは、シリーズ2の可能性もほのめかしている。現在、BBCのサイト上で英国内のみで視聴可能だが、日本でもNetflixにて3月23日(金)より配信となる。ホラー作品好きは、配信開始を楽しみに待とう。

(松丸さとみ)

Photo:『レクイエム マチルダ・グレイの秘密』
©Adrian Rogers/Netflix