『(500)日のサマー』監督最新作で才能開花!『さよなら、僕のマンハッタン』カラム・ターナーに直撃インタビュー

ビタースイートなラブストーリー『(500)日のサマー』でセンセーショナルな長編映画デビューを飾ったマーク・ウェブ監督が、同作よりも前に出会い、そして恋に落ちたのが、本日より公開される『さよなら、僕のマンハッタン』。名手アラン・ローブの脚本を「忘れることができなかった」というウェブ監督が、実に10年以上の歳月をかけて念願の映画化を果たした。

そして、その主役を務めるのが、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(以下、『ファンタビ』最新作)で主人公ニュートの兄テセウス役を射止めた新鋭カラム・ターナー。「大人と少年の狭間で苦悩する青年を、絶妙のバランスで表現してくれた」とウェブ監督をうならせた彼が、本作に対する真摯な思い、豪華ベテラン俳優たちとの刺激的な共演などについて熱く語った。

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本作は、サイモン&ガーファンクルの「The Only Living Boy In New York」をはじめ、数々の名曲が本編を彩る都会派ラブストーリー。ニューヨークを舞台に、親元を離れた青年トーマス(カラム)が、謎の隣人との交流や恋人との駆け引き、父親と見知らぬ女性との不倫騒動を経て、大人の男として成長していく姿をエモーショナルに描く。

――あなたが演じるトーマスは、よりによって父親(ピアース・ブロスナン)の不倫相手ジョハンナ(ケイト・ベッキンセイル)に恋をする。この予想外の展開をどう理解し、表現しようと思いましたか?

カラム:トーマスにとってジョハンナは、父親の愛人であると同時に、自分を虜にする憧れの女性でもある。だから、振り回されるほどに復讐心みたいなものが芽生え、一筋縄ではいかない恋としてトーマスはパニックになるんだ。ところがジョハンナは、逃げ惑うことなくトーマスをそのまま受け入れ、きちんと向き合い、彼に男としての自信も与えてくれる。劇中、ジョハンナはトーマスにこう言うんだ、「世の中は"白"と"黒"だけじゃないのよ。あなたは若いから見えないだけ」とね。

――トーマスは未熟すぎて、何も見えていなかった?

カラム:確かにトーマスは若すぎて、父親のことを全く理解できずに、ただ怒りに身をまかせていた。母親(シンシア・ニクソン)が父親を遠ざけるシーンがあり、結婚生活はすでに破綻しているようにも見えるが、それだけが不倫の理由じゃないし、ただ単に父親が若い女性を追い求めていたわけでもない。トーマスのガールフレンド、ミミ(カーシー・クレモンズ)も、なぜか彼を「受け入れない」という点に関しても、裏にいろいろ理由はあるわけだよね。この映画は、犠牲者もいないし、悪者もいないけれど、白と黒で割り切れない微妙な関係性がある。その状況に翻弄されながら、未熟なトーマスは少しずつ大人になっていくんだ。

――あなたは、若者特有の繊細さとブレーキの効かない熱量を織り交ぜながら、トーマスを見事に表現していました。演じる上で何か工夫をされたのでしょうか?

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カラム:ありがとう、そう言っていただけるとうれしいよ。まず、自分の立ち位置をよく理解し、自分が演じるキャラクターがどういうエッセンスを持っているのかをよく考えて身を置くこと。この作品は、トーマスの精神的な旅を辿っていくものではあるけれど、時系列で撮影はしていないので、心の状態を保っておくことが大変だった。脚本をとにかく読み込んで、「いま、何が起きているのか」を常に把握しておくことに注力したよ。あとは、トーマスの父親が出版社を経営し、本人も作家を目指していることから、ベースとなる役づくりのためにアメリカ文学をたくさん読んで、詩を書いたりもした。あまり出来は良くなかったけれど、創作する気持ちは経験できたと思うよ。

――あなた自身も、トーマスのように、人生の中で目標や居場所の定まらない時期はありましたか?

カラム:20歳前後の頃に経験したよ。袋小路に入り込んで、どこに行けばいいのか、自分がどこにいるのか、わからなくなるんだよね。父親を他人のように感じてしまい、頭は凄く混乱している。劇中、ミミ以外が全員"嘘"をついているわけだけれど、トーマスは真実を探しながら、いつの間にか自分探しの旅になり、自分が「何者なのか」を見つけ出そうとしている。僕の人生にもそういうフラストレーションを感じることはあったよ。まるで七面鳥が地面に頭を突っ込んでバタバタしているようにね(笑)

――ウェブ監督にとって、本作は10年以上企画を温めた大切な作品。彼との初タッグはいかがでしたか?

カラム:ウェブ監督は共同作業を凄く尊重してくれる人。「こうでなくてはダメだ!」という独裁者的な態度をとったことは一度もない。とにかく映画を良くするためだったら、僕たちのアイデアもどんどん受け入れてくれて、それがたとえ撮影直前でも、彼の心を動かすものなら、脚本を平気でリライトしてくれるんだ。本当にオープンで、ここまで柔軟な監督はなかなかいないと思う。撮影は常にリラックスした雰囲気で、ストレスは全くなかったよ。

――ニューヨークの街も魅力的に描かれていましたね。

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カラム:僕自身、ここ3~4年、多くの時間をニューヨークで過ごしてきた。本当にすごく好きな街で、僕にとってはもう1つの故郷といった感じ。ガールフレンドと出会って、別れて...とか、いろいろあったし、"家族"と呼べる親しい人たちもたくさんいる。『浮き草たち』(16)という作品もここで撮影した。でも、今回の作品では、映画のマジックを感じたね。僕が知っているニューヨークよりも、さらに魅力的で、まさにウェブ監督の「こうあってほしい」という願望が映像で表現されていると思うよ。

――ピアースやケイト、シンシア、さらには謎の隣人としてトーマスを何かとサポートしてくれるジェラルド役のジェフ・ブリッジスなど、共演者が豪華ですね。

カラム:すごい経験だったよ。だって、元ジェームズ・ボンド(ピアース)がいて、『アンダーワールド』のセリーン(ケイト)がいて、『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダ(シンシア)がいる。そして、そこに僕が敬愛してやまない名優ジェフ・ブリッジスが加わるなんて、若手俳優にとっては夢のような現場だよ! 僕自身が演劇の教育を受けていないので、これだけ偉大な人たちと一緒に過ごせたのは本当にスペシャルなことだった。

――俳優として、かなり影響を受けましたか?

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カラム:特にジェフは僕の大好きな俳優の1人で、映画界のアイコンともいえる人。今回、ジェフとは2週間、リハーサルで一緒に過ごす時間があり、俳優としての心構えから髪型、服装にいたるまで、ありとあらゆるアドバイスをもらったよ。まず、自分を解き放ち、自分を自由にすること、そこから役に集中していくということ。緊張やプレッシャーとどう向き合い、どう折り合いをつけるか、というメンタルな部分に関しては、「とにかく、やり続けるしかない」と。「仮に作品自体が良くなくても、君にとってその経験は素晴らしいものになる。映画のヒットはおまけみたいなものだ。結果はどうであれ、プロセスを楽しむこと。常に成長すること。とにかく、やり続けろ!」って言ってくれたんだ。あの、渋い声でね(笑)

――この作品であなたが一番伝えたいことは?

カラム:やはり、精神的な成長かな。自分の中にある"力"を信じて進んでいく。他人から「君はこうだ」と決めつけられたり、過小評価されたりしないためにも、自分というものをきちんと持って生きていくことの大切さを伝えたい。

――今後、『ファンタビ』の最新作も控え、ますます活躍しそうなご自身にエールを。

カラム:今、とてもいい状況で、これからの俳優人生に凄くワクワクしている。ただその反面、人間として、俳優として、保守的にならずどんどん成長していきたいという気持ちもあるので、この先も、方向性の違う作品に積極的にトライしていきたいと思っている。自分のイメージを固定せずに、線引きをしないこと、それが自分を飽きさせないで成長する、一番いい方法だからね。

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『さよなら、僕のマンハッタン』は本日4月14日(土)より公開。

(取材・文:坂田正樹)