英国アカデミー賞確実?ヒュー・グラントの「ソープ事件」ドラマ、英各紙が絶賛

英BBCの新ドラマ『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』は、イギリスで実際に起きた政治家のスキャンダルを扱った3話構成のミニシリーズ。ラブコメの帝王として名高いヒュー・グラントが、腹に一物を抱えた政治家ジェレミー・ソープを演じ、イギリス最悪とも言われる醜聞に、深みのある演技で切り込んでいる。

栄光から転落した党首

ジェレミー・ソープはかつて自由党党首としてその黄金期を築いたものの、1979年に元恋人、ノーマン・スコットの殺人未遂と共謀罪に問われることとなる。裁判で無罪を勝ち取ったソープだが、恋人が同性の男性であったことから、世間の偏見にさらされるようになり、やがて政界から姿を消す...。

交際当初の二人の関係は順調で、ソープは彼に住居と生活費を与えていた。しかし部屋で独り過ごす時間が長くなったスコットは、次第にソープに軽視されていると感じ、恨みを抱くようになる。怒りは限界を超え、ある日彼はソープの欲望の犠牲になったとロンドン警視庁に関係を告白。同性愛が違法であった当時の英国で、ソープの性的指向は保安局(MI5)の知るところとなってしまう。自由党復活の立役者としての栄光から一転、一連のスキャンダルによる没落の一部始終を描いたのが本作だ。

ヒュー、私生活のスキャンダルが武器に?

本作の主演を務める今年58歳になるヒュー。『ノッティングヒルの恋人』『ラブ・アクチュアリー』などラブ・ストーリーの印象が強い彼だが、本作ではお決まりの役どころを離れ、笑顔の裏に冷酷な感情を忍ばせる政治家役に挑戦。素晴らしい立ち回りを披露している。英Guardianは、多面性のあるヒューの演技がドラマの魅力になっていると分析。本作でさらに演技の腕を上げたと賞賛している。コミカルなシーンにも政治家としての神経質な気配を漂わせる芝居はさすがだ。

ヒューで思い出されるのが、1995年のスキャンダル。彼は、車中で売春婦とコトに及んでいるところを現行犯逮捕されている。英Independent紙は、この事件が配役の一助になった可能性を指摘。私生活でのスキャンダルを経験したヒューだからこそ、世間から非難を浴びる役に誰よりも入り込めるのかもしれない。もちろん主演俳優には演技力も不可欠。同紙は、ドラマの一番の魅力として優れたキャスティングを挙げ、中でもヒューがソープの不完全さをうまく表現していると評価。無精髭、親しみやすい態度、何気ない会話など、どこをとっても件の政治家らしさが滲み出ている。

秀逸な脚本、アカデミー賞ノミネート間違いなし?

実際の事件を扱ったドラマだけに、脚本には時代背景がうまく取り入れられている。同性愛の合法化や移民政策といった、この時代特有の背景が作品に深みを増していると評価し、脚本に欠点が見当たらないとGuardian紙は讃えている。「残酷なほど面白く、どこまでも巧みで、主人公ソープと同じくらい自信に満ちたドラマ」だとし、英国アカデミー賞(BAFTA)へのノミネートは間違いないだろうとみている。

脚本の秀逸さは英Telegraphも認めるところで、特にEU市場へのアクセスや移民問題など、今日も関心の高い話題をタイムリーに盛り込んだ点を評価している。人気真っ只中の党首のスキャンダルというドラマの本筋も興味を惹き、「ぞっとするほど面白い」と述べている。イギリスを震撼させた「ソープ事件」を振り返る『A Very English Scandal』は、ヒューの新境地を見ることができる秀作だ。(海外ドラマNAVI)

Photo:ヒュー・グラント
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