女性過激集団が「女の敵」を血祭りに...ブラック・コメディ『ダイエットランド』

ドラマ『ダイエットランド』は、理想の体型を強いられる世の女性たちの憂いを描いた、米AMCで放送中のTVシリーズ。本作は、コメディタッチながら、ふくよかな女性を冷遇する世間への痛烈な批判を描く。フェミニズム運動の高まりを背景に支持を得ているが、意に沿わない男性たちを殺害する女性集団の行動には賛否両論が巻き起こっている。

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◆体型に悩むゴーストライター、過激なフェミニズム活動へ
プラム・ケトル(ジョイ・ナッシュ)は、ニューヨークのファッション誌のゴーストライター。編集長の元に寄せられる読者からの声を取り上げ、愛情のこもった返信を誌面に載せている。ある日、彼女のちょっとした返信内容がフェミニズム集団の関心を引くことに。実はこの集団は、女性に危害を加える男性に対して復讐を実行する危険なグループ。レイプ犯を囲んで告白文を読み上げさせることは序の口、時に男性たちをビルや飛行機から突き落とす、過激派組織だったのだ。プラムが掛け持ちで菓子職人として働く職場を訪れたのは、リータと名乗る謎の女性(エリン・ダーク)。女性はいきなりプラムの腕に「ダイエットランド」と書きつけて立ち去る。ダイエットランドとは減量法のひとつで、体重に悩むプラムが過去に実践していた方法。この出来事がプラムと過激派集団を結びつけ、彼女はテログループの仲間入りをしてしまう。

◆女性の敵にリンチ――爽快? 不快?
ドラマでは主人公プラムを通じて、外見の悩みと男性からの視線に苦しめられる女性たちの苦しみをうまく表現している。米Newsdayは、主役を務めるジョイ・ナッシュの演技に好感が持てると評価。体重と食事に悩む姿は、理想とは異なる体型で生きているプラムと、そんな彼女に冷徹な視線を向ける社会を対比させ、ストーリーにリアリティを持たせている。米Hollywood Reporterは、肥満を悪とする認識を変革する社会運動「ファット・アクセプタンス」が広まる中、タイムリーなドラマだとしてその価値を認め、体型への批判と嘲笑は性差別だと、本作の問題提起には理解を示す。とはいえ、暴力に訴える女性集団の行動には批判の声も。男性たちを突き落とす様子は、観ていてあまり気分の良いものではないと指摘。人知れず苦しむ女性を取り上げたまではよかったが、暴力を正当化するような内容は抵抗感を生む結果となってしまったようだ。

◆集団での復讐はユニーク
セクハラを告発するムーブメント「#MeToo」の広がりを受け、女性の権利をテーマにしたドラマは増えてきている。女性が子を産むだけの存在として扱われる衝撃作『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』や、女性型アンドロイドが人間への復讐を試みる『ウエストワールド』などはその代表格だ。米Timeは、その流れに乗った、最新かつ最も邪悪なリベンジ・ファンタジーとして本作を紹介。前掲の二作では男性陣に反旗を翻す女性は孤立した存在として描かれているが、本作では結託して立ち向かう点が新しいと評価している。マスクを着用した女性たちが集団でレイプ犯を取り囲む様子は、原作小説よりもリアリティがあり、一層恐怖を感じさせる仕上がりとなっている。

具体性も本作の大きな特徴。Hollywood Reporterは、『ハンドメイズ・テイル』では女性を支配する男たちがその内面に密かに抱える、どこか漠然とした恐怖感を扱っていたと振り返る。対する本作は、女性差別をする人々に復讐を遂げるという形で、男性側が味わう恐怖をより具体的に設定。コメディながら痛烈な主張を感じさせるシリーズになっている。

『ダイエットランド』は日本ではAmazonプライム・ビデオにて配信中(海外ドラマNAVI)

Photo:『ダイエットランド』
(C) Erik Madigan Heck/AMC