ケヴィン・コスナーの渋さと凄みが光る『イエローストーン』 現代が舞台の西部劇

63歳を迎えてなお活躍の場を広げ続ける名優、ケヴィン・コスナー。これまでに複数の西部劇に出演しており、自身が監督・プロデューサーを務め、出演も果たした2003年の『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』は特に有名。今回紹介する『イエローストーン(原題:Yellowstone)』では、開拓時代ではなく現代に生きるカウボーイを演じる。ゴルフ場開発を阻止すべく行動するなど、従来の西部劇では存在しなかったプロットが目新しい。

無敵の一族に忍び寄る危機

広大な草原が広がる、モンタナ州のイエローストーン牧場。アメリカで最も広いとさえ言われるこの一帯を取り仕切るのは、カウボーイハットを被り愛馬に跨がった現代の荒くれ者、ジョン・ダットン(ケヴィン)。ジョン率いるダットン家の財と権力たるや凄まじく、仮に殺人を犯したとしても罪に問われないだろうと囁かれるほど。

向かうところ敵なしに見える一家だが、土地を巡る争いは頭痛のタネ。はるか遠くまで広がる敷地の境界では、不動産デベロッパー(ダニー・ヒューストン)が虎視眈々とゴルフ場建設を目論んでいる。加えて牧場内に存在するネイディブ・インディアン居留地では、部族長のトーマス・レインウォーター(ギル・バーミンガム)が、牧場の家畜の所有権を主張し始める始末。

ジョンは子どもたちと共に、土地を守るべく立ち上がる。その面子は、彼のお気に入りで気性の荒い長男リー(デイヴ・アナブル)、勝気な長女のベス(ケリー・ライリー)、力の弱さを頭脳で補う弁護士のジェイミー(ウェス・ベントリー)と、いずれも個性派揃い。彼らは悪知恵と、時に暴力を駆使して難関を切り抜けてゆく。

ケヴィンの演技は説得力あり

ドラマの見どころの一つは、もちろん渋さの奥に凄みを感じさせるケヴィンの演技力。彼のパフォーマンスについて米Washington Postは、「危険なほど影響力の強い、イエローストーン牧場の主であるジョンとして、かなり印象的かつ説得力がある」と讃えている。

一方、ケヴィンの脇をかためるキャストも優秀。米Varietyは、長女ベス役のケリーに注目。徹底した無慈悲ぶりに加えて、かなりの好色家というキャラクター像に男兄弟も霞んでしまうほど。従来の西部劇には見られないタイプの人物であり、伝統的なジャンルの枠を超えて楽しませてくれる。

このほか、先住民の部族長を演じるギルの熟練した演技も素晴らしい。米Rolling Stoneは、彼をケヴィンと並ぶ本作の見どころとして紹介している。テキサスを舞台にしたクライム・ムービー『最後の追跡』でも存在感を示していただけに、西部劇はお手の物といったところだろう。

シェリダン監督だからこそ可能だった時代設定

『Yellowstone』を語る上で欠かせないもう一人の人物が、本作で脚本・監督・製作総指揮を担うテイラー・シェリダン。実は俳優出身という経歴の持ち主で、バイカーズ・クラブの抗争を描いたドラマ『サンズ・オブ・アナーキー』で警察の局長代理を演じている。脚本家としての手腕も確かで、本作以前にも西部を舞台とした映画『最後の追跡』と『ウインド・リバー』の2作品を手がけている。どちらも開拓時代の殺伐とした空気感を残しながらも、現代を舞台としている点が特徴的。Washington Postは、現代の西部事情に詳しいシェリダン監督だからこそ作品に信ぴょう性を与えることができた、と絶賛している。

荒々しいストーリーの合間に見せるモンタナ州とユタ州の大自然がひと時の安らぎを与えてくれる、ケヴィンの勇姿眩しい現代版西部劇『イエローストーン』は米Paramount Networkで放送中。日本では現在WOWOWにて独占放送がスタートしている。(海外ドラマNAVI)(海外ドラマNAVI)

 

Photo:ケヴィン・コスナー(C) Debby Wong / Shutterstock.com