米CBSで放送中のコメディ・ドラマ『God Friended Me(原題)』は、SNSが結ぶ奇妙な縁を描く作品。無神論者の青年マイルズの元に、ある日「神」を名乗るFacebookアカウントから友達申請が。リクエストを許可したことがきっかけで、常識では説明がつかない不思議な出来事が起こり始める。
■自称「神」からフレンド申請
マイルズ(ブランドン・マイケル・ホール)は牧師の息子でありながら、神の存在など毛頭信じない青年。自らホストを務めるポッドキャスト番組では、熱心な信徒たちを小馬鹿にしたトークが今日も絶好調。そんなマイルズの元に、突如「神」を名乗るアカウントからFacebookの友達申請が届く。
しつこいリクエストに根負けして承認すると、問題のアカウントはジョン(クリストファー・レッドマン)という人物の名前と顔写真に変化。折しも街頭で似た人物を見かけたことからマイルズが後を追うと、ジョンは地下鉄構内で飛び込み自殺を図ろうとしているところだった。反射的に止めたことで、二人は実際の顔見知りに。
ジョンをフレンド登録したことで、続いてFacebookの「知り合いかも」の欄にカーラ(ヴァイオレット・ビーン)の名前が現れる。オンライン・マガジンでライターとして働く彼女は、解説記事の連載という仕事のプレッシャーに頭を抱えている。母親との再会という幸せを感じたのもつかの間、不慮の交通事故で瀕死に。そこへ通りがかったのは、かつてマイルズが自殺を食い止めたジョンだった。医師という彼の職業が幸いし、カーラは一命を取り留める。こうして、マイルズがジョンの命を救い、そのジョンがカーラの命を救った構図に。神を否定するマイルズは、不思議な連鎖を生んでいる見えざる仕組みの正体に興味を持ちはじめる。
■あくまで無神論者
ここまで人知を超えた偶然が重なれば、大抵のドラマの主人公は神の存在を信じ始めるもの。ところがそうはならないのが本作のポイント。米Voxは、マイルズのユニークな行動を紹介。無神論者の彼らしく、身の回りで続々と起こる不可思議な出来事を目にしてなお、誰が仕組んでいるのかという視点で一連の成り行きに説明を付けようと調査を始める。
マイルズの反応には米Varietyも注目。彼の周囲で不可思議な現象が続くなかで、コンピュータにランダムに写真が表示され、操作不能となる一幕も。こんな状況を目にしても、熟練のハッカーに狙われているのではないかという視点で不思議な出来事に説明を付けようとする。
信仰心というよりは、テクノロジーにスポットライトを当てた本作。若者向けのアピールを試みた作品だと見ることもできる。Varietyは、マイルズの親友で同僚のラケシュ(スラージ・シャルマ)が流行りのデート・アプリを馬鹿にし、そんなモノもう誰も使っていないとでも言いたげな態度をとる、と紹介。流行に敏感なミレニアル世代を表現した一場面だが、とはいえ作品の主題を振り返れば、若者離れが指摘されるFacebookこそ本作のテーマ。そこには小さな自虐が込められているのかもしれない。
■突飛な設定はアリ? ナシ?
作品の一番の特徴は「神からフレンド申請が」というプレミス。しかし、若干突飛な感も否めない。VarietyはCBSドラマの主な視聴者層が50代であることを念頭に、SNSを中核に据えた本作に視聴者がどこまで興味を持てるかという疑問を呈する。Facebookというテーマを一枚剥げば、そこには成功の見込みのあるドラマが脈々と流れている本作だけに、必要性のないテーマに縛られているのが歯痒い、と所感を綴る。
ただ、作品に対する評判は上々。神から友達申請が届くという筋書きにこそ現実離れした印象はあれど、実際に観てみると悪くない出来栄え、と前述のVox。もしも同じ題材を冷めた視点でシニカルに描いていたのなら関心は持てなかっただろうが、ときに安っぽくも誠実な姿勢で描いていたことでドラマとして良い結果を出しているとし、作品の製作姿勢を評価している。
超自然的な偶然が重なる世界に足を踏み入れたマイルズ。誰かがストーキングして行動をコントロールしているのではとの疑念さえ芽生えているが、シーズン終盤までに見出す真実やいかに。『God Friended Me』は米CBSで放送中。(海外ドラマNAVI)
Photo:ブランドン・マイケル・ホール
(C)ABC/Bob D"Amico