人気ホラーコメディドラマ『プリーチャー』のクリエイター、セス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグが製作総指揮を手掛け、米Showtimeが贈る『Black Monday(原題)』は、1980年代の株式市場で活躍するプロを追うコメディシリーズ。時は1986年の10月、「ブラック・マンデー」のちょうど1年前。世界経済に壊滅的な影響を与えた暗黒の月曜日に向け、物語は動き出す。
■何も知らない絶好調トレーダー社長、暗黒の月曜まであと365日
CEOのモーリス(ドン・チードル)率いるジャマー社は、ウォール街の一角で株式の仲介を手掛けているブローカー企業。マーケットのプロと言えば聞こえは良いが、お調子者に肉体派の社員など、うだつの上がらないトレーダーたちの寄り合い所帯だ。一匹オオカミでCEOの元カノであるドーン(レジーナ・ホール)と、慧眼を持つ若手のブレア(アンドリュー・ラネルズ)が、モーリスの下で会社を支えている。
アフロがトレードマークのモーリスは、会社をウォール街で11番目の企業にまで成長させた実力の持ち主。ドラッグに興じ、女性と熱い一夜を過ごし、財力のすべてを使い、今この一瞬を謳歌している。株式市場の未来を見抜く直感の鋭さはさておき、ご自慢のランボルギーニ社製リムジンを乗り回し、ライバルをあざけり、肩で風を切って歩く態度は頂けない。物語は「ブラック・マンデー」の365日前からスタート。先見の明を持つモーリスでさえ予想だにしなかった月曜日が、刻一刻と近づく......。
■暴走CEO、唯一の天敵は元カノ社員?
垢抜けないオフィスの面々の中で、モーリスの元カノであるドーンは一人輝きを放つ存在。下ネタ好きでぶっきらぼうな性格は他の男性社員と大差ないが、傲慢なモーリスの手綱を握ることのできる貴重なメンバーでもある。理路整然と(または理路整然と聞こえる話に仕立てて)モーリスを説き伏せ、事業と彼の私生活の両方を安定させようと試みる。また、他の個性的な社員たちもそれぞれ予想外の一面を見せる。卓越した脚本とキャストの実力が掛け合わさり、終始面白いドラマになっている、と米Chicago Sun-Times紙は賞賛する。
ドーンについては米Wall Street Journal紙も中核の一人として紹介している。古典的なシットコムである本作の中でひと際目を引く彼女。2018年のコメディ映画『Support the Girls(原題)』で主役を務めたレジーナが演じる、キリリと引き締まった性格が心地良い。他にはアンドリューも取引のプログラムを完成させたウォール街の天才として登場。マーケットとは人間が動かすものである、という持論を唱えるモーリスだが、秀才プログラマーとの折り合いはいかに。
本シリーズで注目したいもう一つのポイントは、まるで1980年代に時を戻したかのような、入念に作り込まれた世界観。衣装からヘアスタイル、そして車まで、当時の派手なファッションを鮮明に思い出させてくれる、とChicago Sun-Times紙。モーリスの誕生日に毎年、部下からコカインでパンパンになった袋が贈られるというのも、当時のウォール街の空気感を伝えてくれるエピソードだ。マイケル・ジャクソンがパーティに乱入するなど、少し取ってつけたようなシーンも気にならないではないが、緩急のあるストーリーのおかげで楽しい作品にまとまっている、と同紙は述べている。
一方でWall Street Journal紙は、当時のカルチャーを自然に登場させていると評価。前述のコカインはもちろんのこと、キャラクターの行動の端々に、現代の感覚からするとおかしく感じられる所作が見え隠れする。当時のウォール街に飛び込んだかのような異文化体験を楽しみたい。
波に乗ったブローカー企業に大暴落の足音が迫るコメディ『Black Monday』は、米Showtimeで1月下旬から放送中。(海外ドラマNAVI)
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ドン・チードル
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