完璧と思える人間にも必ず欠点の一つや二つはあるもの。そう、ちょうどサイコ・スリラー『YOU ー君がすべてー』に登場する青年のように...。淡いラブロマンスを鑑賞していたつもりでも、いつのまにかサイコ・スリラーの世界に引き込まれているこのシリーズ。昨年末には、恐怖倍増のシーズン2がNetflixに登場した。もちろん日本でも視聴可能だ。
♦︎過去を捨て去り、西海岸の街へ
ニューヨークで書店を営む好青年・ジョー(ペン・バッジリー)と、店を訪れた作家志望の若き女性・ベック(エリザベス・ライル)がシーズン1の主人公。二人の出会いは運命の始まりに思えたが、ストーカー気質のジョーの行動は次第にエスカレート。恋を実らせるためネット上でささやかな情報収集をしたのを皮切りに、徐々に物理的な監視へと移行。ベックの元カレへの憎悪にも発展し、ジョーの周りには次々と死体の山ができてゆく。
新たに公開されたシーズン2でのジョーは、まるで過去の行為をきれいさっぱり精算するかのように、西海岸・ロサンゼルスへと移住。過去とは違う名前を名乗り、スーパーで新たな仕事にありつくが、同じ店の同僚女性・ラブ(ヴィクトリア・ペドレッティ)に一目惚れ。ジョーの危険な本性に再び火がついてしまい...。
♦︎ロマンチックコメディとスリラーの融合
米Lifetimeでの放送が終了した本シリーズは、続編の製作をNetflixが引き受けた。新シーズンを視聴したNew York Times紙のレビュアーは、ダークなテイストが堅持されているとして歓迎。まるで、一度食べたらやみつきになるが決して体には良くないキャンディーのようだと例えている。シーズン1放送時からすでに本作は、親しみやすさと恐怖感の絶妙なバランスが評論家たちを唸らせていた。ロマンチックコメディのような甘くポップな会話と、次々と妻を殺す残酷な童話「青ひげ」をミックスしたかのようなストーリーが作品の本質。同紙は本作をダークなコメディだと捉えているようで、劇中に漂うユーモラスな感覚が重たすぎるストーリーになるのを防いでいると評価している。ストーキングと奇行を重ねるにつれ、意中の女性・ラブの前で演じる「完璧なボーイフレンド」像にも徐々に綻びが。必死で取り繕うジョーの姿も見どころの一つだ。
もっとも今シーズンでは前回と同じ構図が繰り返されるわけではなく、USA Today紙はストーリー構造の変化を指摘している。ストーカー対被害者という図式だったシーズン1に比べ、今期は第三の人物が加わることでより複雑かつ興味深い構成に。シーズン1で姿を見せた意外な人物が物語をさらに混沌へと導くのでぜひ期待を。
♦︎ロスの設定をフルに活かして
ニューヨークを舞台にしたシーズン1では、ジョーは大都会に紛れてストーキング行為を働いていた。まさに舞台設定を最大限に活かしたストーリーだったわけだが、西海岸で展開するシーズン2でも舞台設定をフルに活用している。東海岸出身で格式を重んじるジョーが周囲とのギャップを感じたり、本の虫だった彼が徐々にヒッピーのカルチャーに染まってみたりと、現地らしさを取り入れた点をUSA Today紙は評価しているようだ。
ローカル色の強さについては、南カリフォルニアにまつわるイメージをうまく利用している、と米New York Times紙も述べている。あえて細かい点を挙げるなら、ジョーは職を得るにあたって身分を偽るが、そのくだりにもカリフォルニアの闇社会をテーマにした過去の映像作品の影響が感じられるとのことだ。
ロスの街で根っからのストーカーが再び動き出す『YOU ー君がすべてー』はNetflixで配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『YOU ー君がすべてー』© Tyler Golden/Netflix