バットマンの相棒だった初代ロビンことディック・グレイソンを中心に描かれるDCドラマ『タイタンズ』は、DCコミックスが立ち上げた動画配信サービス「DC Universe」のオリジナル作品。だからこそ、他のDCドラマとは少し違ったダークでシリアスな世界観を持ち、DCドラマに新たな風を吹き込み、シーズン3への製作も決まっている。そんな本作で、主人公の吹替えを務める梶裕貴を直撃した。
梶は海外ドラマでは、『ゴシップガール』のエリック・ヴァンダーウッドセン役や『FAMOUS IN LOVE』のレイナー・デボン役でお馴染みだが、単独の主役では本作が初めて。役柄同様に座長として収録現場を引っ張る彼に本作のみどころと、様々なジャンルで活躍している彼だからこそ考える声優の魅力などをたっぷりと伺った。
――作品のみどころや魅力を教えてください。
実写でありつつ、アニメのようなスケールの大きさを感じる作品で、キャラクターの個性の強さが非常に印象的です。ドラマの構成にも伏線がたくさん張ってあって、それが少しずつ明らかになっていくところがたまらないですね。ライトに見ても、ディープに見ても、楽しめるつくりになっていると思います。
それからサイドキックたちにスポットが当たっているのがうれしいですね。きっと今後それぞれを主人公とした作品も展開されていくんだろうなあと思うと、期待が膨らみます。まずは本作でDCTVシリーズに興味を持っていただければと思います。
――そうですね、ドゥーム・パトロールやワンダーガールなど、個性的なキャラクターがたくさん出ていますからね。アメコミファン的には嬉しいと思います。
ライト層にも、DCマニアにも刺さるような、絶妙なところをついてくるシリーズが生まれたんじゃないでしょうか。
――吹替えを務めるロビンことディック・グレイソンの魅力とは?
まず、サイドキック(ヒーローの相棒)たちがメインに描かれているというところが、本作に惹かれるポイント。その中で僕が吹替えを担当するディック・グレイソン(ロビン)は、タイタンズの中心人物として、みんなを引っ張っていくリーダー的な存在。とても正義感が強い男で、真っ直ぐですけど、形を変えれば頑固で融通が利かないようなところもあります(笑) そのぐらい、自分の信念を貫いているところがかっこよくもあり、危うさを感じさせる役どころ。同時にそのあたりが個性的なキャラクターたちがたくさん登場する中で、やっぱり主人公だなと思わせてくれる部分だとも思います。
第1話に「バットマンがなんだ!」というセリフがあって、それがとても衝撃的でしたね。誰もが知っているヒーロー、バットマンに対してのこの言葉。ただ、その言葉にはちゃんと理由があって...。もともとサイドキックとして一緒に活動していて、彼らに何があったのかということも含め、本作の中で描かれていくわけですけど、第1話としての引きは物凄かったなという印象があります。
――本作にどのような気持ちで挑みましたか?
僕も含めアフレコに携わっている人間は、収録するそのエピソード一話分しかストーリーを知らないんです。収録の数日前に台本をいただき、それとともに初めて明らかになるという形でした。なので、先の展開がまったく分からない。その都度、そのエピソードの中からキャラクターのヒントを探っていかなくてはいけなかったので、とても難しかったですね。特にドラマ冒頭では、俳優さんがどういう意図でそのシーンを演じ、セリフを言っているのかを自分で推理して汲み取る必要があったので。
先ほど言った「バットマンがなんだ!」だけ聞くと、悪役まではいかないものの、どこかダーク成分が強い人物なのかなというような印象を持ってしまいますが、でもきっとそれだけじゃないんだろうというところを、表情や言動の端々から拾っていかなければなりませんでした。
――DC関連作品は初めてではないということですが?
これが不思議なご縁で、アニメ『ニンジャバットマン』でも、僕はロビンを演じさせていただいたんです。その時は5代目ロビンのダミアン・ウェインだったんですけど、ロビンっていうくくりでいうと2度目。あと新人の頃にも、ゴッサムシティを舞台にした劇場版『バットマン ゴッサムナイト』に出演させていただきました。
――そんな運命的な出会いで今回吹替えを務めると決まった時はどんな心境でしたか?
とても嬉しかったですね。メインキャラクターとしてのシリーズ出演は経験させていただいたこともありましたけど、ディックを中心に進んでいく本作において、そのキャラクターを演じさせてもらえるということ、そして僕も子どもの頃から知っているバットマンシリーズという作品に関わるということは本当に嬉しかったです。
――初日の収録はいかがでしたか?
やはり緊張はありました。アニメ作品では、これまでにも座長という立ち位置を経験してきていますが、吹替えの現場としては初めてだったので、自分は一体どういったスタンスで現場と向き合うべきなのかは考えましたね。
しかし、何よりもまずは主役として...芝居の軸として、しっかりとその場に存在していなければ皆さんを不安にさせてしまうと思ったので、最終的には、あまり難しく考えすぎずに、とにかく「役を全うしよう」という強い想いを持って臨みました。
第一話ということで、役づくりに対する不安も多少ありましたが、そのあたりに関しては、自分の構築したディックとスタッフのみなさんのイメージされていたディックにズレがなく、スムーズに作品に入れることができたので一安心でした。
話数を重ねるごとに出演キャストもどんどん増えて、現場はとても賑やかになっていきましたね。すでに<シーズン2>の収録も終わっているタイミングなので、今では"タイタンズ"らしい空気感ができあがっているように感じますね。ドラマの展開と同じように、収録現場における役者同士の絆も次第に強くなってきていると思います。
――アクションシーンも多い作品です。役作りの上では、ここだけは意識していることはありますか?
アクションシーンは毎話ふんだんに盛り込まれていて、これも本作の魅力の一つだと思います。ダークな要素も強いので、画面自体は暗かったりするんですけど(笑)、そうなるとアクションも「ここでパンチして、よけて」とかの準備が大変でしたね。なのでどこを殴られたらどういう声が出るのか、どういう攻撃をしたらどんな音が出るのかというのは、事前にしっかり準備しておきました。
ディックは一見クールに見えて、実はそうではない人だと思うんです。結構青臭い部分というか、子どもっぽいところがたくさんあって、だからこそ憎めなくて。そういったところが、最終的に周りのメンバーも行動を共にしたくなる理由なんだと思います。あれだけチームワークを大切にって、普段本人も思っているし、みんなにも鉄則として言っているのに、意外とすぐに怒ったり、一人で勝手に行動してしまうことがあって(笑) ディックは誰かを守るためなら仕方がない、みたいなところが根底にある人なので、むしろ「彼がそうしたことによってみんなバラバラになっちゃっているけどな」なんて思うことは多々ありますけどね(笑) でも、そのがむしゃらな感じこそがディックだし、可愛い部分かなとも思いますね。
――そんなディックに共感することはありますか?
今の話をした上で、似ている点を話すのは難しいですけど(笑)...僕自身にも"こうでありたい"という、自分の中での正義感みたいなものは強くありますね。もちろん、大人として、社会人として、守らなきゃいけないものがちゃんとあることは理解していますが(笑) でも、その上で「ここはどうしても譲れない」というように、そういったものを度外視するようなところもあるので...、自分でもガキっぽいなとは思うんですが、ディックの気持ちはわかります。
――お気に入りのシーンがあれば教えてください。
最終話の冒頭部分の台本をもらったときは、「あれ、違う台本をもらったかな?」「幸せな未来...。あれ?」って(笑) これまでの展開はどうしたのかなと思ったのと、それまでああいったディックを演じたことがなかったので、どこか違う作品に出ているような気持ちになりましたね(笑) とはいえ、こんな気になるところで終わるんだ!というようなラストなので、その結末も含めて早く<シーズン2>をご覧いただきたいなと思いますね。
――本作には次世代スターがキャストに名を連ねますけど、演じているブレントン・スウェイツの魅力は?
役柄もあると思うのですが、元々の顔立ちもあって、とても清潔感溢れる男性という印象ですね。最初ブレントンさんの顔や体格を見たときは、自分の中で、しっかり声から作らないといけないキャラクターだと思いました。でも物語が進めば進むほど、人間ですから当然色んな表情が出てきて、「意外と子どもだな」と思う部分にも気付けて。それ以降は、とにかくエピソードごとの彼に、違和感がないような声とお芝居をあてることができればなと思っていました。
――<シーズン1>だとバットマンであるブルース・ウェインの姿は一度も出てこなく、声だけでした。ブルース・ウェインにこだわっているディック、どういう姿・人物像を想像して演じてらっしゃいましたか? (<シーズン2>で、『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョラー・モーモント役で知られるイアン・グレンが演じる年齢を重ねたブルース・ウェインが登場)
<シーズン2>の収録をしているので、僕はすでに知っていますけど、イメージ通りでしたね。ディック・グレイソンが思わずいらだってしまうような、本来もっている人間的で感情的な部分を引き出されてしまうような人物なんだなという印象でした。シニカルで達観していて。
――DC作品の中で好きな作品やキャラクターなど影響されたものはありますか?
やはりバットマンですね。小さい頃から触れてきたヒーローですから。自分の声優人生においても、気づけば節目節目でお世話になっていますし。現実社会の生々しさ、闇や問題点というのを上手に汲み取って描かれているところが好きなポイントです。
それからジョーカーのような敵サイドにも魅力を感じますね。ヴィランという言葉では片付けられないような背景が秘められていて。そういったところも含めて、バットマンという作品はやっぱり印象強いです。
――歳によって、惹かれるキャラクターは変わってくると思うのですが、昔と今ではいかがですか?
子どもの頃は、ジョーカーはただただ怖い存在でしかなかったですけど、今は色々な形で映像化もされていて、それぞれ描かれ方は違うものの、漠然とした怖さというより"人間の怖さ"だったり、どこか物悲しさといったものを年齢とともに感じるようになってきて、より『バットマン』という作品の奥深さが分かってきたような気がしています。そういった意味では老若男女問わず、どなたにも楽しんでいただけるタイトルなのかもしれませんね。
――ディック以外で好きなキャラクターは?
みんな本当に個性的で、どのキャラクターにも違った魅力があるので難しいですね。強いて言えば...ワンダーガールのドナですかね。ディックと幼馴染という設定も手伝ってか、他のキャラクターとはまた違った距離感で描かれているように感じます。ちょっとダークでシリアスな色が強い世界観の中で、ラブロマンスとはまた違うんですけど、等身大の若者の青春ドラマ的要素が感じられる会話が多くて好きですね。<シーズン2>を録り終えた今だから、というのもあるかもしれませんが(笑)
Donna Troy, played by @ConorLeslie, makes her @DCUTitans debut on 11/30! Head here for your first look at the new character: https://t.co/VFr8a7QXil pic.twitter.com/Xf7hg2Ruwk
-- DC (@DCComics) November 20, 2018
――昨年はミュージカルに初挑戦されて、ヤフー検索大賞声優部門にも選ばれて、大活躍の年だったと思います。今年挑戦したいことはありますか?
今まで通り"やらず嫌い"せずに、挑戦させていただく機会があれば、ありがたく踏み出していきたいと思っています。
同時に、そろそろ試しているだけではなく、もっと一つのことに対して、奥まで踏む込んでいくようなタイミングだとも思っているので、「自分は声優である」ということを大前提に、それを誇りに思いつつ、感謝しつつ、責任を持って、新たな表現にチャレンジしていきたいと思っています。
――梶さんにとって、声の仕事の魅力とは?
昨年、初めてミュージカルに挑戦させていただいたのですが、そこで、これまでの声優としてのお芝居では感じなかったようなハードルを感じたんです。歌唱はもちろんですが、あらためて意識したのは、殺陣やアクショ。声のお芝居だったら、僕らはすぐに最強になれてしまうんです!(笑) だけど、実際に身体を使ったお芝居となるとそうはいかない。それに見合う肉体作り、少なくとも、そう見えるような表現を身につけなければいけないわけで、本当に大変でしたね。でも、別のフィールドを経験したことで、逆に声優としてのお芝居の自由さというのを凄く感じました。
人じゃないものにもなれるし、年齢だって演じ分け次第でいくらでも変えられる。声優のお芝居って、おそらく「口パクに合わせなきゃ」「声だけで表現しなくちゃ」とか、そういう制約みたいなものがたくさんあるイメージなんじゃないかと思うんですけど、ミュージカルに挑戦したことで逆に、それだけじゃない、だからこその自由、みたいな部分を改めて感じるきっかけになりましたね。
――吹替えで挑戦してみたい役はありますか?
来るものを拒まずです。強いて挙げるとすれば、声質の問題もあるとは思いますけど、いずれは父親役とかをやってみたいですね。新しい役に挑戦し続けられるような自分でありたいなと思います。
――具体的にこういうお父さん像はありますか?
愛にあふれた、包容力がたっぷりなお父さんとかやってみたいですね。
あ、それから僕、『タイタンズ』みたいなシリアスな作品も好きなんですけど、コメディ作品も大好きなんですよ。『フルハウス』みたいな。『フルハウス』は僕が子どもの頃にTVで放送していて、晩ご飯を食べるときに見ていた作品で。なので、いつかそんなコメディシリーズで、父親に挑戦できたらうれしいですね。
――シーズン3の製作も決まっている本作を楽しみにしている方へメッセージをいただけますか?
自身初の単独吹替え主演シリーズということで、とても嬉しく、それが『タイタンズ』であることを非常に光栄に思っています。自分自身、小さい頃から親しんできた『バットマン』の世界観の中で、毎話たくさんのキャラクターたちがダークでシリアスなドラマを展開していきます。<シーズン1>を経て、それぞれのキャラクターのバックボーンもより見えてきました。戦いの規模もどんどん大きくなってきておりますので、このまま引き続き、期待していただければと思います。予習・復習を兼ねて、ぜひお手元に『タイタンズ<シーズン1>』ブルーレイをどうぞ!
『タイタンズ<シーズン1>』商品情報
・ブルーレイ コンプリート・ボックス発売中(13,000円 税込)
・DVDレンタル Vol.1~Vol.6
・デジタル好評配信中
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
Photo:梶裕貴 『タイタンズ<シーズン1>』(c)TITANS AND ALL RELATED CHARACTERS AND ELEMENTS TM & (c) DC & WBEI. (c) 2020 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.