『ブラックリスト』の統一感は音にも表れていた!サウンドエディター、石川孝子さん直撃インタビュー

大人気のアクション・サスペンス超大作『ブラックリスト』シーズン7が、スーパー!ドラマTVにて本日4月28日(火)22:00より独占日本初放送となる。そこで、同作でシーズン初回からサウンドエディティングを担当されている石川孝子さんを直撃! ハリウッドで20年以上にわたり活躍してきた彼女は、同作以外にも『新ビバリーヒルズ青春白書』『BONES』『デッドウッド ~銃とSEXとワイルドタウン』『ナイトシフト 真夜中の救命医』『Empire 成功の代償』といった人気ドラマをはじめ様々な作品に関わり、2004年にはエミー賞を受賞している。そんな石川さんに、貴重な仕事現場の話のほか、仕事へのこだわり、『ブラックリスト』の魅力や最新シーズンの見どころについて語ってもらった。

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――まず、お仕事の内容について教えてください。サウンドエディターとは具体的にどんなことをするお仕事なのですか?

サウンドエディターというのは、テレビや映画で音を除いたすべての音作りを担う人のことなんです。通常、音響編集というのは、それぞれが台詞、サウンドエフェクト(サウンドデザインも含む)、フォーリー、音楽という専門に分かれていて、最終的なミキシングを行えるための音を用意するのが各エディターの役割になります。

――ハリウッドでサウンドエディターとして働くようになったきっかけは?

もともとは音楽のレコーディングミキサーになりたくて、ボストンのバークリー音楽大学に入ったんです。そこで学んでアメリカの音楽界で経験を積みたいと思ったんですけど、なかなか音楽スタジオへの就職は難しかったんです。そんな時、大学在学中に2年ほどインターンをしていた先で知り合ったミキサーさんが、ロスにある音楽スタジオを紹介してくれました。西海岸の方が私が探している業種に就きやすいと聞いたこともあって、ボストンのある東海岸から西海岸へ移ったんです。

そうやってロスに移ったんですが、その新しい音楽スタジオでもやっぱりインターンとしてのスタートになるので、それだと外国人にとってはビザの問題もあって難しくて、どうしようかと考えている時、サウンドエディターという仕事があることを耳にしたんです。音楽ではないけれど、同じ音には違いないし、大学で学んだことを生かせるようだったので、そういう会社に連絡して雇われることになったのが始まりですね。

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――そういう道を志すことになったのは、音楽や映画が好きだったからですか?

学生の時から映画が大好きだったんです。今で言うと『アベンジャーズ』のような、少し現実離れした世界の話が昔から好きでした。音楽では、ポップやロックが好きでしたね。映画を見ていた影響でアメリカへの憧れもありました。それと、英語をしゃべれるようになったらいいな、とも思っていて。

高校の時に音楽を勉強したいと思ったんですが、日本で音大に行く人って子どもの頃からそれに向けて準備してきているんですよね。それに私はクラシックよりもポップやロックが好きだったので、じゃあ、アメリカに行きたいな、と。なんでそこで行きたいのがイギリスじゃなかったのか、自分でも不思議なんですが(笑)

――サウンド部門は専門分野に分かれているそうですが、IMDbで拝見したところ、『ブラックリスト』のエピソードによって同部門は3、4人の時もあれば10人以上いることもあります。人数の増減は基本的にアクションシーンの量によるのでしょうか?

『ブラックリスト』に関して言うと、私はパイロット版から参加していて、パイロット後に少し顔ぶれが変わったんですが、以降はずっと同じメンバーでやっています。サウンドエフェクトが2人、台詞が1人、フォーリーが1人、サウンドスーパーバイザーが1人の、大体5人体制ですね。メンバーが全く変わらないというのは(製作スタジオの)ソニーとしても珍しいことなのですが、『ブラックリスト』ではドラマの雰囲気や、感覚をなるべく統一していきたいというスーパーバイザーの思考があるのだと思います。新しいメンバーが加わると、作業の説明などにも時間がかかってしまいますから。ドラマの内容を数多くの人に漏らさないということにも繋がっています。

エピソードによって人数の増減があるというのは、IMDbに入れ忘れたということではないでしょうか。あとは、ポストプロダクションでなくプリプロダクションの段階で録音技師やそのアシスタントが現場にいるんですが、彼らがどのくらいの人数なのかはちょっと私には分からないですね。

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――サウンドエフェクトエディターである石川さんは『ブラックリスト』で具体的にどんなことを担当されているのですか?

皆さんが音と聞いて一般的に連想されるであろう、カーチェイスや銃撃戦といった具体的な音は相棒の担当で、私は背景(バックグラウンド)の音の担当です。シーズン1の頃はアクションが多かったので、相棒を手伝うこともありましたけど。『ブラックリスト』ってキャラクターが世界中を移動することが多いじゃないですか。ですので、国が変われば背景の音も変えないといけないんです。

BGMはバックグラウンドミュージックのことですが、私が担当しているのはミュージックではないのでバックグラウンド(BG)ですね。街の生活音、雑踏の音といったものです。普段の私たちは、バックグラウンドの音に対して無意識に脳がフィルターをかけて消してしまっていると思うんです。意識しては聴いていないんですよね。ところがその音が最初からまったくないと、違和感を覚えてしまう。バックグラウンドの音って派手ではないのでないがしろにする人もいるんですが、私は基本であり重要な要素だと思っているんです。バックグラウンドもデザインの一つなので、シーンやキャラクターの心理状態に合わせた音を作る時もあり、それが作品に真実味を与えることに繋がるんです。

TVの場合、時間をそんなにかけられないのでバックグラウンドに手間をかけている余裕がないこともあるんですが、『ブラックリスト』のチームはそこを重視していて、私自身もこだわるようにしています。変に目立たず、自然に、気づかせないようにしないといけないんですけどね。

例えば地下室のシーンでも、そんなに怖くない地下室と、なんだか怖い地下室であれば、音は変わるんです。人って目はもちろん、耳も含めた五感で感じ取りますよね。自分はそういうところをいじっているんだと思いながら作業しています。

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――普段の作業工程を教えてください。

まずサウンドアシスタントが映像部門の編集から画を受け取ります。その画の中には台詞の音声のほか、仮でつけられた効果音も入っているので、それを私たちが作業できるような状態にアシスタントが整えてくれます。私はそれを受け取ったら専用のソフトに落とし込み、台詞や仮の効果音も参考にしながら音を作っていきます。出来上がったら音を加えたデータをサーバーに上げて、そこからミキサーさんが作業するという流れですね。

――同じサウンド部門やその他の部門(視覚効果、編集など)の人たちとはどういう風に連携をとりながら作業を進めるのですか?

基本的に、先程挙げたサウンドスーパーバイザーがまとめ役なんです。私たちは何か不明なことがあれば彼に質問し、意見を交わします。彼はプロデューサーや編集者、プリプロダクションのスタッフと打ち合わせを行い、その際に私たちの質問について問い合わせたり向こうの要望を聞いてきて、その結果をまとめたメモを渡してくれます。私たちは、それを元に作業していくという流れですね。

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――『ブラックリスト』で苦労したことはありますか?

『ブラックリスト』は今までやってきたTVのバックグラウンドエディティング中で一番大変なんです。というのも、多くのドラマでは登場人物たちのいる場所が『ブラックリスト』ほど変わらないんです。『ブラックリスト』の人たちは、毎回、数多くの違う場所、または、先程も言った通り、世界中のあっちこっちへ行くんですよね。行った先が自分のあまり知らない国だったりすると地図で調べたりしています。

あと、カットも多いんです。例えば、電話の場面だと普通なら二人分で2種類のカットで済みますが、『ブラックリスト』ではなぜか3~4の別の場所のカットのリピートが続きます(笑) そうなると、4箇所こまめに変わる場面の全部の音をいちいち埋めなければならなくなるんです。

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――それまで聞いたこともなかったような国の音を作る場合、画を元にされるのですか?

ハリウッドには、エキストラとして実際にカメラの前に立つのではなく、声のみでの演技を専門に担当する「グループ」と呼ばれるエキストラさんたちがいるんです。例えば、裁判所の外にリポーターがたくさん集まっているシーンでは、実際に撮影現場にいたリポーター役のエキストラたちの声にグループの声も加えて、雰囲気を出すんですね。リポーターたちがいる場所がアメリカでなく日本だったら、グループの人たちはその国の言葉っぽく話せたりもするんです。ただ、国によってはグループが対応できないこともあります。それプラス、スーパーバイザーさんから私にバックグラウンドでその国の雰囲気を出してほしいと言われます。その場合は、彼らがどんな言葉を話すのかを語源も含めて調べ、はっきりとは分からない程度にその国の言葉の響きを入れていったりもします。その国の生活様式や文化、地層といった地理的なものも含めてリサーチが必要になりますね。レッドたちはまたすぐその場所からいなくなっちゃうんですけど、数秒のためにそういう作業をしています。折角音を作ったので、もうちょっと長くいてほしいんですけどね(笑)

――プライベートで海外ドラマや映画をご覧になった時、音が気になったりされますか?

基本的には気にしていないですね。話に集中しているので。相当変わっていたり、「これどう?」って聞かれれば、意識して聴くと思うんですけど。ただ、かなり手間と時間がかかっていることが分かるような素晴らしいシーンを見た時には、感動しながらも"担当しなくて良かった"と思ったりもします(笑) 大変さが伝わってきちゃうので。例えば闘い続けるスーパーヒーローもので、敵を倒すために大きな岩を持ち上げて、投げ飛ばして、(その影響で)周囲が崩れて、といったシーンなどを見ていると、楽しいんですけど、音を入れているスタッフのことを思うと"大変だっただろうな"とつい思ってしまいますね(笑)

――石川さんから見た『ブラックリスト』の魅力と、シーズン7の見どころを教えてもらえますか?

『ブラックリスト』をご覧になっていた方たちがずっと気になっていたことに、リズのお母さんのカタリーナってどういう人なのか?というのがあると思うんです。彼女について皆さんいろいろ想像されていたと思うので、シーズン7ではようやく登場したカタリーナが想像していたのと同じなのか違うのか、確かめてみてほしいですね。母親に会いたいと思っていたリズがどんな反応を見せるのかも注目です。

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あと『ブラックリスト』というシリーズは、ドラマの定石を打ち破っていますよね。補足説明的な、余計なシーンがないのが個人的には気に入っています。悪役が死んだりしてもストーリーが入り組んでいるから自然に次の話へと繋がっていくんですが、一つの要素をあまり引っ張らずに数話で解決する点も好きです。あと、主な登場人物たちがみんな真面目で、だけどパーフェクトじゃないってところもいいですね。それから、レッドが真剣なシーンで突然くだらない話をするのも大好きですね。いつも笑いながら何度も見てます。実は一番好きなキャラクターはデンベなんです。とにかくレッドに忠実で、だけど実は悩んだりしていたりしていますよね。ほかにも、運輸局の彼とか拷問する人とか、シリーズが続く中でいろんな不思議なキャラクターが出てきて、その後も登場して、と繋がっていくところがいいですね。

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■『ブラックリスト』放送情報
スーパー!ドラマTVにて4月28日(火)22:00より独占日本初放送
[二]毎週火曜 22:00~ ほか
[字]毎週火曜 24:00~ ほか
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Photo:

石川孝子さん
『ブラックリストシーズン7』
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