Amazon Prime Videoで好評配信中の『ザ・ボーイズ』。堕落してしまったスーパーヒーローたち、"セブン"に、力を持たない自警団"ザ・ボーイズ"が立ち向かうという異色のスーパーヒーロードラマは、タイトルが示すように、ブッチャーやホームランダーを筆頭に男性陣(ボーイズ)が数多く活躍している。しかし、女性陣の存在抜きに本作は語れない! シーズン2から登場して大きなインパクトを与えている新たなスーパーヒーローのストームフロントのほか、"セブン"の一員ながらも"ザ・ボーイズ"に協力するスターライト/アニー、"ザ・ボーイズ"の中で唯一特別な力を持つキミコ、シーズン1のラストで生きていることが判明したブッチャーの妻ベッカ、ヴォート社で"セブン"の広報を務めるアシュリーなど、様々な立場、性格のキャラクターが物語にいっそうの魅力と説得力をもたらしている。今回はそんなガールズを直撃! 役作りや"ボーイズ"との共演について語ってもらった。
まず登場するのは、エリン・モリアーティ(スターライト/アニー役)と福原カレン(キミコ役)。"セブン"と"ザ・ボーイズ"それぞれの女性主人公とも言える彼女たちが、複雑なキャラクターの内面を語ってくれた。
――キミコもスターライトも勇敢である一方、内面は繊細ですが、役作りで最も大事にしていることは何ですか?
カレン:あなたの言う通りね。彼女たちはどんなことにも100%の姿勢で臨む一方で、繊細でもある。そういう二つの要素を持ち合わせているキャラクターを演じるのは、とても興味深いことだったわ。私がキミコを演じる時には、彼女が求めているものは何か、必要としていることは何なのかを考えるようにしているの。それは彼女にとっては生き抜くことであり、自分や誰かを守ることなのよね。安全な世界で暮らしていると普段考えないことだろうけど、キミコはずっと危険と隣り合わせで生きてきた。彼女は体裁を取り繕ったりせず、自分を偽ったりせずに、自分の思うままに行動する。そういう彼女の内面を理解することが、キミコを演じる上でのエネルギーになったわ。
エリン:私が特に大事にしたのは、彼女が"セブン"の一員になったことを名誉に思う気持ちと、人間らしい反応のバランスを取ることね。このキャラクターに関して気に入っているのは、彼女が天使のように清廉潔白でも主人公の単なる相手役でもないこと。そういうものとは正反対で、彼女はストーリーが進むにつれてどんどん強くなっていく。彼女をよく表していると思うのが、シーズン1第1話で本人が言う「希望を持つことは世間知らずではありません(Since when did "hopeful" and "naive" become the same thing?)」というセリフなの。あれは真実だと思うし、彼女がとても正直な人間であることを示している。彼女はいつでも人助けがしたいと思っているけれど、それは世間知らずだからじゃない。彼女が強くてイカしているからといって、他のスーパーヒーローみたいに堕落したキャラクターである必要はないの。
私は、(スーパーヒーローの)スターライトではなく(人間の)アニーとしての彼女を核として捉えているわ。誠実で善良で強い一方で、暗い面があったり時には間違った選択もするけれど、イカしていて決して打ち負かされたりはしない。彼女を演じる時には、ちょっと矛盾したところがあることを意識するようにしているし、それがこの役を演じるにあたって面白いところでもあるの。
続いては、シャンテル・ヴァンサンテン(ベッカ・ブッチャー役)。ヴォート社に務めていたベッカはホームランダーにレイプされ殺されたと考えられていたが、実はシーズン1のラストで生きていたことが判明。ひそかにホームランダーとの子を産み、育てていた彼女は、再会した夫ブッチャーやホームランダーと複雑な関係に陥っていく。
――マーベルやDCのヒーローと違い、本作のスーパーヒーローはいわゆるヒーローとはまったく違うキャラクターたちです。以前DCのスーパーヒーロードラマ『THE FLASH/フラッシュ』に出ていたあなたは彼らをどのようにとらえていますか?
シャンテル:この作品はスーパーヒーローの概念をいい意味で一変させた。理想的なヒーローであるマーベルやDCのキャラクターと違って彼らは欠陥があるし倫理的にも問題があったりするけれど、等身大の存在なので、ある意味では、いわゆるスーパーヒーローよりもヒロイックだったりする。これまでの作品とは全然違うからこそ、こんなにも多くの人を惹きつけているのだと思うわ。
――自分と息子の存在を秘密にする代わりにヴォート社に保護されていたベッカの置かれた状況はとても複雑ですが、彼女を演じる上でどんなことを意識されましたか?
シャンテル:シーズン1の最終話(第8話)にベッカとして出演した時、それまでの脚本全部を読んではいなかったの。その時にとにかく意識していたのは、これは現実離れした、スーパーヒーローたちを新たな視点で描く作品で、私が演じる役柄はスーパーヒーローの子どもを産んだりもしているけれど(笑)、あくまでもベッカは人間だから現実的なキャラクターだということね。だから、地に足が着いた、人間らしい感情を持ったキャラクターを演じるように心がけたわ。
シーズン2の撮影に参加した時もその意識はあったけど、その時にはシーズン1を全話見てファンになっていたから作品に関する知識もしっかり身に着けていたの。ただ、私の役柄がほかの人と異なることも分かってた。ベッカが世界から切り離された生活をしているのは説得力があって気に入っているけど、仲が良いキャストのみんなとカメラの前で一緒に絡めないのはちょっと寂しいわね(笑) でも、ベッカが犠牲を払って送っている生活の複雑さも理解しているの。
――ベッカが一緒にいるのは主にブッチャーとホームランダーですが、彼らを演じるカール・アーバン、アントニー・スターとの共演はいかがですか?
シャンテル:そう、私が共演しているのは"ボーイズ"なの(笑) 彼らは最高よ。カールとはシーズン1で初めてこの作品に関わった時から共演していて、彼といるとすごく守られていると感じるの。私にとって親密なシーンを演じるのは必ずしも居心地の良いものではないんだけど、カールはプロフェッショナルで素晴らしい雰囲気を作り出してくれた。その姿勢はシーズン2でも同じだったわ。最高の仕事相手よ。
アントニーに関しては、(サイコパスなスーパーヒーローを演じる)彼との共演が楽しいとは言えないわね。むしろ最悪に近いかも(笑) ホームランダーといる時のベッカは息もうまくできないから。ただ、自分とはまったく違うキャラクターを演じることは楽しいわ。
最後は、アヤ・キャッシュ(ストームフロント役)とコルビー・ミニフィ(アシュリー・バレット役)。"セブン"の新入りながらホームランダーに対しても臆せず接するストームフロントと、マデリンの後釜として"セブン"の広報(実質、世話係)になるも苦労させられっ放しのアシュリーという、正反対とも言える立場のキャラクターを演じる二人が、本作で成し遂げた貢献などについて明かしてくれた。
――ストームフロントはサイコパスで注目を浴びるのが大好きと、女性版ホームランダーのようなところがありますね。役作りの上でどんなことを意識されましたか?
アヤ:ストームフロントを演じる上で大切にしたのは、必ずしも宙に浮いたり雷を操ったりはしていなくても、彼女のような人は現実世界に存在するということね。この世の中では、SNSなどを通して情報を捻じ曲げたり、人々を啓蒙しているようでいて実際には憎しみを広げていたりする人がいるの。ストームフロントは現代の世界に向けた一種の警告なのよ。
――あなたたちのキャラクターで気に入っているシーンは?
アヤ:(シーズン2第2話で)「長くつしたのピッピ」について語っている時ね。あの時に話しているスターライトと私がそろって上を見上げるワイドショットがあるの。まるで上に答えがあるみたいにね(笑)
コルビー:あのシーンは私も大好きよ。アシュリーに関するものだと、(シーズン2第5話で)アシュリーがAトレインにバルセロナでハジけた過去を話す場面が気に入っているわ。アシュリーがストレスとどう対処しているかを語るモノローグだから。ジェシー(・T・アッシャー)と共演したあのシーンは大好きよ。
――私もあのシーンは大好きです。クリエイターのエリック・クリプキは周囲のアイデアに非常にオープンな人だと聞きますが、あなたたちの意見が生かされたことはありますか?
コルビー:ええ! それがエリックと組んでいて楽しいことなの。誰かが夜中にメールで突拍子もないことを提案しても、彼はそれを真剣に考慮してくれるのよ。私が提案したもので採用された一つは、アシュリーが髪をいじっている時に(ストレスで)髪が抜けるシーンね。彼はクリエイターだけど優れたチームプレーヤーでもあるの。本当にありがたい存在よ。
アヤ:シーズン2最終話でストームフロントが言うセリフが大好きなの。それは私が書いたものではないんだけど、私がメモしていたことが元になっていて、そういうコラボレーションが頻繁に起きる現場ってクールよね。あと私のお気に入りは、ストームフロントがAトレインの横で飲み物を飲んでいる時、そのカップに「ストームフロント(Stormfront)」ならぬ「ストアフロント(StoreFront)」って書いてあることね。あれって私が作ったもので、私がシーズン2で成し遂げた最大の貢献と言えるわ(笑)
ガールズからも目が離せない『ザ・ボーイズ』シーズン2は、Amazon Prime Videoにて10月9日(金)に第8話(最終話)が配信される。
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Amazonオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』