新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が収まらず異例の年末を迎えようとしている2020年。おうち時間は新しいストリーミングサービスに加入し、今まで見ていなかったジャンルや作品に挑戦した方も多いのではないでしょうか。そこで、今年の締めくくりとして海外ドラマNAVIライター&編集部員がそれぞれお気に入りの作品をご紹介! 年末年始に見始めるドラマの候補にしてみてください。
全18作品のうち、【前編】では10作品をご紹介します。
目次
ライター Namiが選んだ2020年のベストは...
ジェニファー・アニストンの真骨頂! 職場で蔓延るセクハラの闇に深く切り込んだドラマ『ザ・モーニングショー』
2017年に、世界中の女性がセクハラや性的暴行被害を告白して共有する運動「#MeToo」が巻き起こって以来、ハリウッドでは女性のエンパワーメントや権利を訴える作品が次々と製作されている。そんななか、2019年11月にその集大成的なシリーズが誕生した。
それは、Apple TV+のドラマ『ザ・モーニングショー』だ。ある日、朝の情報番組で司会を務め、視聴者から絶大な人気を誇っていたミッチ・ケスラー(スティーヴ・カレル)に性的暴行の疑いが浮上し、解雇される事態が発生する。15年にわたり、相棒として番組を支えてきたアレックス・レヴィ(ジェニファー・アニストン)は、イメージダウンした番組を何とか盛り返そうと奔走。最初は、自分の立場を守ることに必死だった彼女だが、次第に男性優位のTV局、そして、セクハラを黙認する風土は間違っていると悟り、最終話でTV業界の歴史を覆すような"爆弾"を投下する――。
本シリーズで注目したいのは、スーパーヒーロー作品のようにハッキリと白黒をつけられる正義の味方やヴィランは存在せず、すべてのキャラクターが「グレー・ゾーン」に位置しているところだろう。仕事を失いたくないからモラルに反する行為を見て見ぬ振りをしたり、思わず保身に走ってしまう人間を責めるのは簡単だが、いざ自分がその立場に立ったときに、本当に正しい行いができる人はどれぐらいいるだろうか!?
一度根付いてしまった習慣や、まかり通っている行為、風土といったことを根本から覆すことは容易ではない。だが、『ザ・モーニングショー』では、その"グレーな部分"のどこが間違っていて何を正せば良いのかを、TV局の異なるポジションにいるキャラクターの複雑な立場や彼らの価値観などを丁寧に描くことで浮き彫りにし、感動的とも言える最終話のラストシーンへなだれ込んでいく。
緻密な脚本と興味深いキャラクターが織り成す人間模様、魅力的なキャストが放つ絶妙なケミストリーが見事に反応し合い、特にアレックス役で新境地を開いたジェニファー・アニストンの演技が素晴らしいの一言に尽きる。『フレンズ』のレイチェル役のイメージがなかなか払拭できなかったジェニファーの真骨頂とも言える本シリーズは、絶対に見逃してはいけない傑作だ。
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リメイク版とはいえ、タイムリーすぎて鳥肌が立つAmazon製作の『ユートピア ~悪のウイルス~』。ウイルス蔓延の陰謀論説を描くドラマが超怖い!
2020年は、米国大統領選で現役のドナルド・トランプが落選して、ジョー・バイデンが勝利を収めるなど様々な出来事が起こった。だが、やはり今年を表現するなら、「新型コロナウイルス(COVID-19)」の一言に尽きるだろう。
そこで紹介したいのが、Amazon製作による新作ドラマ『ユートピア ~悪のウイルス~』である。本シリーズは、イギリスで2013年から2シーズンにわたり放送された『Utopia -ユートピア-』の米版リメイクとなり、物語の中心となるのはカルト系コミックス「ユートピア」に心酔するオタク5人組だ。
ネットのチャットで知り合った5人が、「ユートピア」がリアルタイムで米国中に蔓延しつつあるウイルスを予言していて、しかもウイルスが人為的に生み出されたことに気づいたばかりに、巨大企業の陰謀に巻き込まれていく姿がスリリングかつ衝撃的に描かれる。
筆者は2年ほど前にオリジナル版のシーズン1を観賞していたのだが、Amazonにてリメイク版が11月に配信開始されるや否や飛びついた。新型コロナウイルスに関しては、「某国が人工的に生み出した」という陰謀説がネットを賑わせていたこともあり、あまりにもタイムリーすぎるテーマにゾクゾクと背筋が寒くなった。まるで、コミックスの「ユートピア」がドラマで起きている出来事を予知したかのように、ドラマシリーズが新型コロナウイルスを予言したように感じたからだ。
英版も、そのオリジナルで斬新なストーリー展開が絶賛され、鬼才デヴィッド・フィンチャー(『ファイト・クラブ』)がシリーズに惚れ込み、米版リメイクを熱望したと伝えられていたほどだ。そして、そのオリジナルの世界観を踏襲しつつも、ハリウッド的なツイストと更に生々しい描写で恐怖を煽り立てるリメイク版も、作品のクオリティは本家に負けてはいない。
ちなみに、米版リメイクは目を覆いたくなるような暴力的なシーンが続出するため、この手の描写が苦手な人は心して視聴に挑んで頂きたい。だが、その価値があると太鼓判を押しておく。
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ライター zashが選んだ2020年のベストは...
死後も"生きられる"ことは果たして理想なのか? 『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』
2020年は自宅で過ごす時間が多く、例年よりも海外ドラマを多く視聴した一年だった。
そんな一年の中で、特に面白かった「コメディ・ドラマ」が『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ』である。
2020年上半期に配信・放送された海外ドラマの中で断トツに面白かった同作は、2033年の近未来を舞台としている。自身の意識や記憶をデジタル世界へとアップロードし、永遠に"生き続ける"ことができる世界。成功を夢見て、アプリ開発の仕事をする若き青年ネイサン(ロビー・アメル)は、ある日、自動車事故に遭い、重傷を負ってしまう。ガールフレンドからの勧めもあり、デジタル世界へとアップロードされるも、そこは本当に理想郷なのだろうか?
人間には死後に天国へと旅立つという考えがあるが、そういった思想を逆手に捉え、死してもなお生き続けられることは理想なのか?という疑問を視聴者に投げかける作品。近年、発達が著しいインターネットやコンピューターであるから、もしかしたら将来的にはこんなことも可能になるのかなと思わせる世界観が非常に面白く、時折織り交ぜられるブラックユーモアもまた抱腹絶倒で、近年稀に見るコメディ・ドラマの傑作であった。
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スパイ・ドラマの真骨頂を見た!『アレックス・ライダー』
今年下半期で最も面白かったのは、『アレックス・ライダー』だ。アンソニー・ホロヴィッツ著のベストセラー小説をドラマ化した本作の主人公は、高校生スパイのアレックス(オット・ファラント)。尊敬する叔父の死をきっかけに、ひょんなことから叔父が所属していた組織のスパイとなり、謎めいた全寮制学校"ポイントブランク"に潜入する任務を遂行していく姿を描く。
2006年に一度映画化されているのだが、そちらとはまた異なる魅力を醸し出しているのが印象深い作品である。決してド派手なアクションに重きを置いているのではなく、スパイが現地に潜入し、コツコツと任務を遂行していく様が丁寧に描かれているのが面白い。
まさに視聴者であるこちらも一緒になって任務を遂行しているかのような気分を味わえる、スパイ・ドラマの真骨頂とでも言うべき要素に充実している。あまりにもドハマりしてしまい、原作小説をも読み漁ってしまったほどだ。すでにシーズン2の製作も決定していることから、今後も注目していきたい作品である。
ライター 坂田正樹が選んだ2020年のベストは...
『モダン・ラブ~今日もNYの街角で~』コロナ禍に観てほしい心の処方箋
普段は骨太な刑事アクションや犯罪スリラーを好んで観るが、人にオススメする作品となると良心が疼くのか、心をほんわか癒してくれる健全なドラマを探してしまう。アンソロジードラマ『モダン・ラブ~今日もNYの街角で~』はその最たる作品だ。
製作総指揮・監督・脚本を手掛けたのは、名匠ジョン・カーニー。元バンドマンならではの音楽センスもさることながら、その視点がとにかく優しいのだ。男を見る目がないお嬢様だったり、秘密を抱えるキャリアウーマンだったり、はたまた倦怠期バリバリの夫婦だったり...主人公は「愛」につまずく等身大の人々。そこにそっと手を差し伸べ、ちょっぴり歯車が狂った人生を良い方向へと導いてくれるのが、このドラマの肝となる。
特にお気に入りなのが、アン・ハサウェイ演じる双極性障害に悩む弁護士を描いた第3話。デートの約束をした瞬間は、『ラ・ラ・ランド』さながら歌って踊って超ゴキゲンなのに、いざデートの時間になると鬱に落ちて振られてしまう。会社も欠勤が多く、社会的にもいよいよ追い詰められる中、意を決して同僚に病気を全てぶちまけた途端、気持ちがスーッと楽になり、人生に光が差し込んでくるのだ。誰かに話すだけで心がなんだか軽くなる...そんな感覚で本作に身を委ねてみてはいかがだろう。特にネガティブ思考に陥りやすいコロナ禍、意外なカタルシスがあるかも?
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『コブラ会』人生に敗者も勝者もない、あるのは"ベスト"を尽くすこと
1984年に製作された『ベスト・キッド』の正統な続編として製作されたドラマシリーズ『コブラ会』。これを聞いて、80年代に青春を駆け抜けたアクション映画好きのオジサンたちが、振り向かないわけがない。しかも、勝者となったダニエル役のラルフ・マッチオ、敗者となったコブラ会の元エース、ジョニー役のウィリアム・ザブカが、35年の時を重ねた姿(二人ともいい歳の重ね方!)で再登場。前作の若かりし日の映像もふんだんに散りばめながら、オリジナルファンの心をこれでもかと刺激する。もちろんダニエルの先生・ミヤギ(故ノリユキ・パット・モリタ氏)も回想シーンで登場し、あの和風テイストの稽古場もドラマの流れの中で復元されるというサービスぶりだ。
とはいえ、今回の主役は敗者のジョニー。自動車販売会社を経営するダニエルに対して、定職につかず、家庭も崩壊した彼が一念発起し、コブラ会結成と同時に人生をやり直す姿にスポットを当てる。ところが、お互いの子供や弟子たちがなんだかややこしく絡み合って、結局、ダニエルまで一念発起し?ミヤギ道場を復活させることに!まさにカオス、回を追うごとにどっちが主役なのか測定不能の状態だが、願わくば、勝った負けたで張り合わず、「人生はベストを尽くすこと」なんていう境地にたどり着き、固い握手を交わすことを祈るばかり。
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ライター ひろこがねが選んだ2020年のベストは...
『エミリー、パリへ行く』キャリアも恋も諦めない! おしゃれな主人公に共感の嵐!
どんな女子でも必ず共感する頑張る女性をテーマにしたストーリー。シカゴ出身のエミリーがフランスという異国の地で、文化の違いや言葉の壁に戸惑いながらもポジティブさを忘れず自分の幸せを見出していく姿がとても勇気をもらえます。
見どころはなんといってもパリジェンヌ風のファッション! エミリーが魅せる色とりどりのファッションは見ているだけでもテンションが上がりっぱなし! この作品ではエミリーの生活を通して、異国で生活する大変さや女性のキャリアについて、さらには遠距離恋愛、国際恋愛など様々なコンテンツが盛り込まれていて、必ず一つは共感するポイントが見つかるはずです。そんな共感ポイントをどうエミリーがポジティブに乗り越えていくかは参考になることと間違いなし。さらには実際にフランス・パリでロケが行われているため、パリの街の景色や雰囲気も楽しむことができる点も魅力的。
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『シッツ・クリーク』世界で称賛! カナダ産笑って泣けるファミリー・コメディ
2020年度のエミー賞・コメディ部門では主演男優賞、主演女優賞、監督賞など主要部門を総なめにしたカナダ産のシットコム。
リッチな生活を送っていたローズ家が破産し、引っ越してきたのはなんとど田舎! 最初は田舎に引っ越すなんてありえない!と考えているローズ家の面々がどのように変わっていくかがポイントの本作。さらにはそこに住む住人たちとの交流も見どころでクスっと笑えるシーンも盛りだくさん。そんな不満たらたらだったローズ家ですが、持ち前のその明るさでなんだかんだで町の人々に溶け込んでいく姿がまた微笑ましいのです。そして視聴者もそんな彼らの不思議な魅力に引き込まれていくのではないでしょうか。
惜しくも2020年にシーズン6で完結した本作。笑いだけでなく感動も運んでくれる素敵な作品です。
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編集部 七色が選んだ2020年のベストは...
デス妻ファン必見! 突っ込みどころ満載だけど応援したくなる、痛快犯罪劇『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』
ミシガン州の郊外に住むベス、ルビー、アニーの3人は、一見、どこにでもいる家族思いの母親たち。だが家族の危機と金銭問題で悪事に手を染めてしまう。最初は「これきり」で終わるはずだったのに、しょせんは素人犯罪。次々とボロが出るわ、ギャングに見つかり予想外の展開に転がるわで、どんどん深みにはまっていく...。
「鬱々とした気分に陥りがちな日常を忘れさせてくれる、痛快犯罪コメディ『グッドガールズ: 崖っぷちの女たち』が通常の犯罪ドラマと異なる点は、彼女たちがあくまでも「普通」の感性を持つ女性というところ。シーズンが進むにつれ手慣れていくものの、本物の悪事はどうしても抵抗がある。情けない夫や、親子の絆や女同士の友情、年老いた親など身近な問題に向き合い葛藤する姿に、ついつい感情移入してしまうのだ。何より一番の魅力は、クリスティナ・ヘンドリックス演じる美しき主婦、主人公ベス・ボーランドの成長ぶりだ。『MAD MEN マッドメン』では、眩しいくらいの美しさと確かな演技力を発揮し、エミー賞助演女優賞にノミネートされた彼女が、色気たっぷりの大人の女性として、セクシー過ぎるギャング・リオ(マニー・モンタナ)と渡り合う様も見どころ。
明解なストーリー&テンポの良さで、ついつい見てしまう気楽さも◎。家族のために一生懸命戦う母親たちを、きっと応援したくなるはず。
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見事な幕引きに拍手喝采。中毒者続出のタイムトラベルミステリー『DARK ダーク』
ドイツの小さな町で起こった失踪事件をきっかけに、謎に満ちた4つの家族の過去と現代が複雑に絡み合うSFミステリー。時間軸・相関図を把握するまでは難解かもしれないが、登場人物の過去と現在の姿、鍵となるエピソードが丁寧に描かれているので、分からなくてもついつい引き込まれる。そして、全体像が見えてくると、断然面白さが加速するところも、ミステリー好きにはたまらない。シーズン2では、新たな問題や時間軸の分岐点が増えまくり、広げまくった風呂敷が一体どう収まるのか気になる人も多かったはず。それが、2020年6月27日に配信された最終のシーズン3では、予想をはるかに超えた見事な構成と有終の美に思わず拍手したくなるほど。もう一度最初から見直したくなる仕掛けが盛りだくさんのドラマ。
クリエイターは本国ドイツで絶賛され、ハリウッドでリメイクも決定している『ピエロがお前を嘲笑う』のバラン・ボー・オダー監督。2011年に「世界で注目すべき監督10人」にも選出されている新進気鋭の監督だ。
見事な構成力をいかんなく発揮した『DARK ダーク』は、10話×3シーズン完結という、連休中の一気見にはちょうどいいボリューム。複雑なジグゾーパズルのピースが少しずつハマっていくような快感を是非、味わって。
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【後編】もお楽しみに!
Photo:
『ザ・モーニングショー』© 2019 Apple Inc. All rights reserved./『ユートピア ~悪のウイルス~』(C) Elizabeth Morris/Amazon Prime Video/『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』©️Amazon Studios/『アレックス・ライダー』© 2020 Sony Pictures Entertainment. All Rights Reserved./Amazon Original『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』/ Netflixオリジナルシリーズ『コブラ会』Guy D"Alema/ Netflixオリジナルシリーズ『エミリー、パリへ行く』CAROLE BETHUEL/NETFLIX/『シッツ・クリーク』シーズン1~6はNetflixで独占配信中/Netflixオリジナルシリーズ『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』シーズン1~3は独占配信中/ Netflixオリジナルシリーズ『DARK ダーク』シーズン1~3は独占配信中