近未来を舞台に全7話で構成されるAmazon Prime VideoのオリジナルSFアンソロジードラマ『Solos ~ひとりひとりの回想録~』。"社会の進化に翻弄される人間たち"というテーマのもと、同じアンソロジードラマとして人気を博している『ブラック・ミラー』(Netflix)と対極をなす本作は、どこまでも深く、悲しく、美しい"人間探求"に終始する。
オスカー俳優アン・ハサウェイ、モーガン・フリーマン、ヘレン・ミレンをはじめ、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のウゾ・アドゥバ(エミー賞助演女優賞受賞)、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のアンソニー・マッキー、映画『ハスラーズ』のコンスタンス・ウー、さらには『ダウントン・アビー』『レギオン』のダン・スティーブンスなど、Amazonの本気度が伺える豪華俳優陣が集結。
ブラックユーモアを交えて近未来を描く物語重視の『ブラック・ミラー』に対し、俳優の"力量"に託された本作は、百戦錬磨の名優たちの一人芝居や対話劇がたっぷりと堪能できる。全7話それぞれに悲喜こもごもの思いや人生が丹念に描かれ、どのエピソードも甲乙つけがたいが、特に第1話「レア」(アン主演)、第3話「ペグ」(ヘレン主演)、第7話「スチュアート」(モーガン主演)は「さすがオスカー俳優!」と唸らせる名演技が、時に感情を激しく揺さぶり、時にしんみりと人生の儚さをひも解いてくれる。
タイムトラベルの開発に奮闘する女性物理学者の心の変化を描いた「レア」は、アンの芸達者ぶり、演技の幅広さを改めて実感させられる逸品(以下、多少のネタばれあり)。
実験に成功したレア(アン)が過去と未来の"自分"と出会い、二人と激しい論争を繰り広げながら、今、大切にしなければならない"リアルな人生"に気づいていくプロセス(一人三役のアンの名演!)は、清々しいほどのカタルシスを与えてくれる。
また、71歳の老女がたった一人で宇宙旅行に出る「ペグ」は、まさにヘレンの独壇場。舞台は宇宙船、音声サービスだけが話し相手という環境の中、ペグ(ヘレン)は甘酸っぱい初恋の思い出から、老いていく心や肉体への恐怖心まで、自身の人生の紆余曲折を表情豊かに語り尽くす。その背景にあるのはそこはかとない"孤独"...。暗黒の世界を旅する宇宙船にやっと自分の"居場所"を見つけた老女の安堵と寂しさが、ジワジワと胸を締め付ける。
そしてシーズン最終話となる「スチュアート」。ダン演じる若い男オットーは、認知症患者と信じられている老人スチュアート(モーガン)を探し当て、ある"罪"を追求し始める。オットーの思いに屈し、人間の"記憶"について淡々と語り出すスチュアート...。彼が犯した過ちとは? 彼の本当の正体は? 衝撃的な真実が解き明かされるこのストーリーは、ある意味、7つの物語すべてにつながる重要なエピソードだ。
人それぞれが、人生を懸けて紡いできた過去の記憶や思い出に、テクノロジーの進化はどう関わっていくべきなのか。"人間探求"に終始するそのスタンスは、ニューヨークの今をリアルに描いたアンソロジードラマ『モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~』(Amazon Prime Video)にも通じるものがあり、本作はその末路を描いた続編『フューチャー・ラブ』といっても過言ではないだろう。
『Solos ~ひとりひとりの回想録~』はAmazon Prime Videoにて配信中。
(文/坂田正樹)
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Amazon Original『Solos ~ひとりひとりの回想録~』