高品質、スケール、見どころの多さに圧倒!『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』

"生命"をテーマに、アンドロイドと人間の生き残りをかけた戦いを描いたSFサバイバル超大作『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』。"老兵は死なず"という言葉が色あせるほどのエネルギーとパワー!リドリー・スコット監督らしい高品質、スケール、見どころの多さに圧倒される。

『レイズド・バイ・ウルブス』の舞台は、信仰の違いにより、人間とアンドロイドの激しい戦争によって破壊された近未来。2体のアンドロイド"マザー"と"ファザー"は二つのミッションを担い、ケプラー22b惑星へ降り立つ。ミッションの一つは、人間の子どもを育てること。そして二つ目は、信仰なき世界を作ること。そこへ兵士マーカス率いる信仰深いミトラ教徒=人間たちが現れる。両者の間で揺れ動く子供たち。彼らの真の目的は一体何か?人間VSアンドロイド 近未来の運命は?

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SF映画の2大傑作、『エイリアン』『ブレードランナー』。これらにリアルタイムで触れ、さらに『ブラック・レイン』(日本ロケが当時は話題に)や『グラディエーター』に興奮した筆者のような映画好きは、昨年から今年にかけてのリドリー・スコット監督の絶好調ぶりに2つの点で驚かされる。

ひとつはスコット監督が2021年11月に84歳になったこと、そしてもうひとつは2本の新作映画、『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』(2022年1月公開予定)を手掛けた上、『レイズド・バイ・ウルブス』の第1&2話を監督したことだ。スコット監督がドラマシリーズで演出を務めるのは無名時代の1969年から実に51年ぶりであり、大きな熱意を感じさせる。

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『レイズド・バイ・ウルブス』の中心的キャラクターは、アンドロイドのマザー。最近、『エイリアン2』を取り上げたドキュメンタリーを見たが、『エイリアン』シリーズで主演だったシガーニー・ウィーヴァーは自身の役リプリーについて、"リプリーが見せたのは女性が一人で対処する姿。(中略)観客は戦ったり任務を果たしたりする女性が大好き"と語った。タフなヒロインは以前もいたが、衝撃的なSFホラーだったスコット監督の『エイリアン』は、別の面でも革命だったのだ。

以後、スコット監督は『テルマ&ルイーズ』『G.I.ジェーン』などでたくましい女性を描いたが、本作のマザーはそれらの最新版であり決定版だ。しかもその高い攻撃能力を、スコット監督は80歳過ぎと思えぬ過激演出で描写。徹底的に無駄を削いだようなルックスのマザーだが、SF映画の名作『メトロポリス』に登場する人造人間マリアにも似ている。

ちなみに、1984年のスーパーボウル生中継で流れたアップル社のCMをスコット監督は手掛けたが、着想の源はデストピア小説「1984」。無表情なスキンヘッドの男性たちがひしめくダークな世界で、旗を高く掲げた女性が走って未来への希望を予感させる。スコット監督は早くから強い女性を凛々しく描いていたのだ。

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そしてアンドロイドもまた、スコット監督にとって重要なモチーフ。すでに『エイリアン』で大きな役割を担っていたが、『ブレードランナー』のレプリカントでそれは最初の頂点に到達。他の監督たちに託されて続いた『エイリアン』シリーズに、スコット監督が33年ぶり復帰した『プロメテウス』(これも女性たちが活躍)とその続編『エイリアン: コヴェナント』は、スコット監督の"アンドロイド愛"にまたも火がついたかのようだった。

スコット監督は映画監督になる前、母国イギリスのBBCでセットデザイナーをした後、多数のCMやTVドラマを演出した。21世紀に入って米英のTV界には映画界の才能が大勢、進出するようになったがスコット監督もそんな一人。優れた企画で製作総指揮を務めることが増え、『ナンバーズ 天才数学者の事件ファイル』のあとに手掛けたのが『グッド・ワイフ』だったのは感慨深い。主婦業から弁護士業に返り咲く、やはりたくましいヒロインが主人公だったからだ。

これまで取り上げたモチーフ、スタイリッシュな映像&サウンドがスコット監督のトレードマークということができるが、語るのが困難ながらも避けて通れないのは宗教観だ。世界的大ヒット作が多いのに、多くの作品が議論を招く理由はそのあたりにあるのかもしれない。『1492・コロンブス』『キングダム・オブ・ヘブン』『最後の決闘裁判』など中世を舞台にした歴史映画も多いスコット監督だが、彼自身、自分が無神論者だと語ったことがある。それでも神と人間の関係には関心があるようで、人間が生んだアンドロイドに注目する理由も同じだろう。『レイズド・バイ・ウルブス』ではマザーが宙に浮くが、十字架に磔(はりつけ)にされたキリストのようなポーズにはどんな意味がこめられたのか。

とにかくスコット監督らしい高品質、スケール、見どころの多さに圧倒され、シーズン2も製作が決まった『レイズド・バイ・ウルブス』。第3話以降も優れた監督陣が腕を振るっているが、第3&4&10話を監督したのはスコットの息子ルーク。父と叔父トニー・スコット(故人)が製作総指揮したドラマ『ハンガー/トリロジー』でデビューし、初長編映画『モーガン プロトタイプL-9』は父がプロデュース。期待せずにいられないサラブレッドだ。

今後もスコット監督は『エイリアン』シリーズの最新作や『グラディエーター』の続編などを監督する予定で、プロデューサーとしても10本以上に参加する。"老兵は死なず"という言葉が色あせるほどのエネルギーとパワーにひれ伏したい。

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『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』商品情報

2022年2月2日(水)より
・DVDレンタル開始 Vol.1-5
・デジタルレンタル
・ダウンロード販売

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元: NBC ユニバーサル・エンターテイメント

(海外ドラマNAVI)

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Photo:

『レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星』©2021 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.