ライター&編集部による2021年本当に面白かった海外ドラマ総括(後編)

先日掲載した海外ドラマ総括の後編となる今回。海外在住のライターから、NAVI編集部スタッフまでそれぞれの"本当に面白かったドラマ"を厳選し、まとめとしてお届け。年末年始に見るドラマの候補にしてもらえたらうれしいです。

全22作品のうち、後編では残りの10作品をご紹介。

■ライターNamiが選んだ2021年のベストドラマは...

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犯人が予想不可能!ソーシャルメディアに潜む闇と危険をえぐり出したNetflix『クリックベイト』が必見!!

Netflix製作によるミニシリーズ『クリックベイト』は、良き夫であり愛すべき父親でもあるニック・ブリューワーが謎の失踪を遂げたことで物語がスタートする。

そして、行方不明になった彼が発見されたのは、なんとソーシャルメディアにアップされた不可解な投稿...。その動画で彼は、「私は女を虐待している。再生回数が500万回に達したら私は死ぬ」と書かれたカードを掲げており、彼の家族と警察が捜査を続けるなか、ニックの知られざる一面と実態が明らかになっていく...というストーリー。

全8話となるシリーズは、1話ごとにニックの妻ソフィーや事件を捜査する刑事ロシャンをはじめ、ニックを取り巻く人々の視点で真実に切り込んでいくスタイルで描かれるのだが、次々に怪しい人物が登場し、物語が終盤に近づいてもまったく誰が犯人だかわからず、かなり翻弄されてしまうはず。

ミステリードラマを数多く見ていると、大抵は中盤過ぎぐらいに犯人の検討がついて「やっぱり...!」という結果になってしまうのだが、『クリックベイト』は例外中の例外だった。犯人へ導く伏線の情報が少々足りなかった気がしなくもないが、犯人の予想がつかず、その答えで視聴者を唖然とさせるだけでもサスペンス・ミステリーとして合格点に達していると言えるだろう。さらには、現代社会でソーシャルメディアに潜む闇をえぐり出した視点に、「誰にでも起こり得ること」という恐怖心を否が応でも駆り立てられてしまう。

ネットやSNSの情報を鵜呑みにしてはいけないこと、そして、誹謗中傷コメントなどが引き起こす問題やなりすましの犠牲になる危険、画像の流出などについて改めて警告を受けたような気持ちになった。

『クリックベイト』はミニシリーズとして製作されたが、ぜひともアンソロジースタイルで、ネットに潜む別の問題と新たなストーリーに取り組むシーズン2に期待したい。

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マーベルがシットコム・スタイルで新境地を開いたDisney+の『ワンダヴィジョン』が超斬新!

Disney+ (ディズニープラス)製作による『ワンダヴィジョン』は、マーベル映画『アベンジャーズ』シリーズに登場するワンダ・マキシモフとヴィジョンを主人公に、2019年に公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』のその後を描く単独ドラマシリーズ。

個人的にマーベルの映画やドラマが好きなうえ、仕事上、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の作品はすべてチェックしているものの、ここ近年で立て続けに公開されまくるマーベル映画に少しばかり食傷気味だった筆者...。

そこへ輪をかけるようにディズニープラスがローンチして、今度はMCUがドラマシリーズを展開するというから、「かなりコアなマーベルファンも、さすがに疲れてしまうんじゃないの...!?」と思っていたところへリリースされたのが『ワンダヴィジョン』だった。

しかも、MCUドラマシリーズ第1弾がマーベルにとって初挑戦となるシットコム・スタイルだと耳にし、どんな作品になるのかワクワク...というよりは大丈夫なのかと心配していたのだが、第1話にしてその懸念は一瞬にして払拭されてしまった。

1話ごとに、ワンダが子ども時代に夢中になって観賞していた50年代~90年代アメリカのシットコム番組をコンセプトに物語が進行し、今までマーベルが未踏だったジャンルを規格外の作品へ完全に昇華させてしまったクオリティの高さに脱帽! 「マーベルよ、やってくれたな」と感嘆の吐息が漏れる本シリーズには、超常ミステリーやスリリングなアクション、陰謀にサスペンス、ワンダとヴィジョンが見せてくれる心温まる愛情など、視聴者を引き付けて離さない要素がテンコ盛りなのだ。

見応えタップリな『ワンダヴィジョン』の成功により、続く『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』と『ロキ』が勢いづいたことは言うまでもなく、今後にディズニープラスが拡大していくMCUドラマシリーズの展開が本当に楽しみだ。

ライター坂田正樹が選んだ2021年のベストドラマは...

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『瞳の奥に』:衝撃の結末に唖然...覚悟を決めて観てほしい激辛スリラー!

タイトルも、サムネイルも、どちらかといえばノーマルで控えめだが、なぜか胸騒ぎがしたので半信半疑で第1話を観たら、もうドツボ!物語の鍵を握る人妻アデル(U2のボーカル、ボノの娘イヴ・ヒューソン)の、それこそ"瞳の奥"の深い闇に心を完全に"ロック"されてしまった。

「この女性、とんでもない爆弾抱えているな」...その予感は的中、それどころか、想像を遥かに上回る展開に足腰が立たないくらい打ちのめされた。

物語は表層的に言えば三角関係。診療所の秘書を務めるシングルマザーのルイーズ(シモーナ・ブラウン)は、新任の精神科医デヴィッド(トム・ベイトマン)に心惹かれ、肉体関係を持ってしまう。その一方で、彼女はデヴィッドの美しい妻アデル(イヴ)ともあるアクシデントをきっかけに親密になり、友人関係を深めていく。夫婦それぞれと関わってしまったルイーズは二人の板挟みとなり、やがておぞましい"愛憎"と"悪夢"に苦しめられることになる。

「どうせ不倫がもつれて妻がサイコ化する話でしょ?」と思い込んでいる方は、少しハードルを上げて視聴に臨んだ方がいいかも。『ミスト』で世界中の人々の心を打ち砕いたあのスティーブン・キングも驚愕したと言われているが、英国人作家サラ・ピンバラのベストセラー小説をドラマ化した本作、勝手ながら衝撃の結末ドラマ部門第1位の称号を授けたい...。それぐらい覚悟を決めて観てほしい激辛スリラーだ。

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『真夜中のミサ』:後半から恐怖描写が加速!残酷だが不思議と後味は悪くない

コロナ禍による密閉生活のせいか、いつにも増して刺激的な作品の視聴数が増えて、2本目も心臓バクバクの恐怖映画を選んでしまった(汗)。

本作は、Netflixオリジナルシリーズ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』、映画『ドクター・スリープ』などを手掛けた鬼才マイク・フラナガン監督によるオカルト・ホラー。ある孤島の小さな町に、かつて住んでいたいわくつきの青年ライリー(ザック・ギルフォード)と、謎めいた若き神父ポール(ハミッシュ・リンクレイター)が現れたことで、不気味な怪事件が次々と起こり始める。突然、島に襲いかかる大嵐、砂浜を埋め尽くす動物の亡骸、そして車椅子の少女に起きた奇跡の出来事...不安と期待が入り混じる中、島民は次第にポール神父を妄信していくが、その恐るべき正体がおぞましい事件とともに"じわりじわり"明らかになっていく。

そう、まさにじわりじわり...前半は田舎町の複雑な人間関係をじっくり丁寧に描いているが、第5話あたりから一気に恐怖描写が加速し、隠された真実、策略がどんどん暴かれていくのだ。"孤島"という逃げ場のない環境の中で繰り広げられる壮絶な悪夢...クライマックスの"徹夜感謝祭(真夜中のミサ)"はまさに地獄絵図だが、なぜだろう、不思議と後味悪さは残らず、むしろ田舎町にくずぶっていた恐怖を出し切り、希望すら感じてしまう。そういった意味では、『瞳の奥に』とは対照的な作品と言っていいかもしれない。

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ライターErina Austenが選んだ2021年のベストドラマは...

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今なお収監されている医者の実話!ホラーより恐ろしい現実を実力派キャストの名演で綴る『ドクター・デス 死を呼ぶ医者』

病院に行くと誰もがドクターを信頼し、診断を信じて身を任せる。経歴や評判の素晴らしい医師になら尚更だ。だがもしその医師の手にかかって、半身不随、また死亡という最悪の結果になったら? ミスなのか殺人なのか。その境目に一石を投じる本作は、テキサス州ダラス近辺で起こった実話を元にしている。

優秀で愛想もいい脳神経外科医クリストファー・ダンチ。その評判を聞き遠方からやってくる患者たちだが、次々に重症化、更には亡くなっていく。故意の殺人だとは患者の身内も想像だにしない。だがその数は2年間で30人以上にもなっていく。不審に思った同僚の医師たちが、こんなことはありえないと、殺人罪を立証すべく奔走する。果たしてダンチはどうなるのか。

医師ダンチには『FRINGE/フリンジ』『アフェア 情事の行方』の実力派ジョシュア・ジャクション、周りの医師役にアレック・ボールドウィン(『マザーレス・ブルックリン』)、クリスチャン・スレイター(『ROBOT/ミスター・ロボット』)、その他にも豪華演技派キャストが勢揃い。なぜ30人もの犠牲者が出たのか、どうして誰もダンチを辞めさせることができなかったのか、医療ミスと故意の殺人の線引きはどこなのか。医療業界の仕組みを含め、ホラー映画よりも恐ろしい現実を目の当たりにする超傑作。ちなみにダンチ本人は、2017年の裁判により、今でもテキサス州ヒューストン郊外の刑務所に収監されている。

『ドクター・デス 死を呼ぶ医者』はStarzplayで配信中。

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家族で楽しめる壮大な宇宙漂流物語『ロスト・イン・スペース』。激動のファイナルシーズンは必見!

1960年代の名作SFアドベンチャードラマ『宇宙家族ロビンソン』のリバイバルである本作は、12月に配信されたばかりのシーズン3で完結した。事故で宇宙に漂流してしまったロビンソン一家が、未知との生物、ロボットと遭遇するところから物語は始まる。

『スタートレック』『スターウォーズ』シリーズなどの宇宙冒険活劇に、コメディ部分を減らした『フルハウス』を混ぜ合わせたような家族で楽しめる作品だ。シーズン3では、過去に2シーズンに比べ圧倒的に緊張感のあるシーンが多い。当初より話題になった惑星の映像美はもちろんのこと、アクションだけでなくロビンソン一家の家族それぞれの過去が明らかになっていく点も非常に面白い。現代版らしく、白人のロビンソン一家では長女だけが異なる人種だが、その理由なども判明する。ティーンの甘酸っぱい恋愛や友情、女性のキャリアと家庭との両立、人間は変わることができるのかという普遍のテーマなど盛りだくさんで、どの年齢の視聴者でも共感できるキャラクターやストーリーがあるだろう。

「人と人(またはその他の生物)との繋がり」がテーマの本作。このような時代だからこそ、大切なメッセージを宇宙にいるロビンソン一家から受け取ってみてほしい。

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ライターAi Onoが選んだ2021年のベストドラマは...

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患者を救いたい! 熱い思いで医療現場の最前線で闘う医師・看護師たちを描く『シカゴ・メッド』シーズン3

『LAW&ORDER』シリーズの敏腕クリエイター、ディック・ウルフが手がける『シカゴ』シリーズは、シカゴの街で活躍する人々を描く一大フランチャイズ。現在は、消防署を舞台にした『シカゴ・ファイア』、警察署を舞台にした『シカゴ P.D.』、病院を舞台にした『シカゴ・メッド』が現在放送中で(※法廷を舞台にした『シカゴ・ジャスティス』はシーズン1で終了)、『シカゴ・メッド』では救急部門で働く医療従事者にフォーカスし、臨場感のある医療現場と、個々の悩みや葛藤を描いている。

シーズン2はDr.ダニエル・チャールズ(オリヴァー・プラット)が精神科の患者から撃たれるという衝撃的な展開で幕を下ろしたが、シーズン3はその事件の数ヶ月後からスタート。Dr.チャールズは事件の被疑者である患者を巡って、愛弟子のDr.サラ・リース(レイチェル・ディピロ)と意見が対立。一方で、DR.コナー・ローズは病と闘う恋人のDr.ロビン・チャールズとの関係に悩むことに。

シーズン3でも家族・恋人との関係やキャリアに悩みながら、絶えず重症患者が運ばれる過酷な医療現場で患者と真摯に向き合う医師・看護師たちの奮闘が描かれている。

\『シカゴ・メッド』を見るならココ!/

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母は強し! 正反対の二人のママが手を取り合って子育てと人生に奮闘する『母と母と娘』

メキシコ発のNetflixオリジナルドラマで、同じ産院で同じ時間に赤ちゃんを産んだ二人の母親たちの物語。

シングルマザーのもとで育ち、在学中に妊娠したマリアナ(パウリーナ・ゴト)と、仕事をセーブするという夫との約束を破って出産直前までクライアントと会うほどワーカホリックなアナ(ルドウィカ・パレタ)は、それぞれトラブルに見舞われ、たまたま駆け込んだ病院で同じ病室に入ることに。生活環境も考え方も正反対な二人は出産直前に言い合いをしながらも、互いに元気な女の子を出産。帰宅後はそれぞれが自分のやり方で赤ちゃんと向き合いながら育児に励んでいたが、ある日、看護師の不手際で赤ちゃんを取り違えられていたことが判明する。4カ月間、愛情をかけて育ててきた子どもと離れることができなかったマリアナとアナは、一緒に暮らして共に子育てをしていくことを決断する。

子育ての仕方も、宗教観もまるで考えが合わないマリアナとアナ。そんな二人は"大切な子供を持つ母"であるという共通点から、次第に距離が縮まり、他の人には言えない思いも打ち明けられる仲になっていく。コメディドラマらしいテンポの良い掛け合いはもちろんだが、世代や境遇が違っても人生の中で何を選ぶべきか悩むことは同じであり、彼女たちが奮闘する姿を心温まりながら、時に切なく感じながら見守ることができる。

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編集部MOが選んだ2021年のベストドラマは...

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本家とは全く別物!同音異義語だと思って観てほしい新『ゴシップガール』

続編や前日譚などが溢れかえる昨今。心待ちにしている人もいれば、なんとなく「許せない...」という複雑な気持ちを抱えている人もいることだろう。基本的には好意的な意見が多そうだが、本家が伝説的な作品であるだけに、新『ゴシップガール』に関して様々な意見が出るのは仕方ないこと。私自身は、本家のゴテッとした派手な世界観やドロドロした人間関係を、それなりに楽しく観ていたが、かといって全シーズンくまなくチェックするほどの情熱もなかった。そのため、過度な期待や本家の面影を求めることなく観始めたのが丁度良かったのかもしれない。

当たり前の結論だが、全く別の作品である。何よりも、ドラマ全体に流れる雰囲気が違う。ゴテゴテした派手さは感じず、もっとモードでファッショナブルな印象が強い。これは衣装やセットだけの話でなく、ストーリーにも言えること。人間関係は相変わらず色々大変そうだが、それがないとつまらないだろう。

これは超個人的な気持ちなのだが、本作の出演者にインタビューをする機会があったことも大きい。受け答えの中で、キャストたちのチャーミングで思慮深い人柄が感じ取れて、是非とも彼女らの作品を応援したくなったのだ。ちなみに私の推しはオードリー役のエミリー・アリン・リンド。実は彼女の写真を携帯の待ち受けにして毎日その美しさを拝んでいる...。

『ゴシップガール』はU-NEXTにて見放題で独占配信中。

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きらきら光る、可愛らしくて切ない物語。『ファイアフライ通り』

金八先生が「人という字は支え合っている姿」と3年B組の生徒たちに教えていたのは有名な話(最近、実は真横から見た自立する人の姿だったことが判明し、武田鉄矢さんも認めたそうだが...)。このドラマの主人公タリー(キャサリン・ハイグル)とケイト(サラ・チョーク)を観ていて、私はその話をなんとなく思い出していた。

大親友のタリーとケイトを中心に、彼女たちを取り巻く時代を描いた『ファイアフライ通り』。その過程で母親、父親、兄弟、恋人、一夜の相手、同僚、先生、夫、娘...たくさんの登場人物が出てきて、彼らが傷つけ合い、慰め合い、いがみ合い、助け合い、愛し合うのだ。そんな生活を全身全霊で生きる彼女たちの姿がとても魅力的に描かれている。

金八先生の金言の他に、『ファイアフライ通り』を観ていて思い出したのは映画『テルマ&ルイーズ』。強くて脆い、けどやっぱり強い女の友情。普段は決して顔を出すことのないトラウマやしこり。二人でいたら何だって出来るという無敵感。小さくてもきらきら光る蛍のような、可愛らしくて切ない物語だ。大胆な時系列のシャッフルは観ているうちにすぐ慣れるため、それを理由に観るのをやめた人がいたとしたら勿体なさすぎる。

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Photo:Netflixオリジナルシリーズ『クリックベイト』は独占配信中 『ワンダヴィジョン』(c) 2020 Marvel Netflixオリジナルシリーズ『瞳の奥に』は独占配信中 Netflixオリジナルシリーズ『真夜中のミサ』は独占配信中 『ドクター・デス 死を呼ぶ医者』 Netflixオリジナル『ロスト・イン・スペース』は独占配信中 『シカゴ・メッド』シーズン3 Netflixオリジナルシリーズ『母と母と娘』は独占配信中 『ゴシップガール』©2021 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license. Netflixオリジナルシリーズ『ファイアフライ通り』は独占配信中