伝説の医療ドラマ『ER 緊急救命室』が1998年の放映権交渉で打ち立てた、1話あたり1,300万ドル(当時約17億円、現在換算で約19億5,000万円)という前代未聞の超高額契約。いかにしてこの歴史的な契約が成立し、現場にどのような効果をもたらしたのか、その熾烈な舞台裏を明かす。
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ジョージ・クルーニーが告白!『ER』で難解な専門用語を乗り切った裏技
アメリカを代表する俳優の一人ジョージ・クルーニーは、大ヒット …
放置された『ER』初期交渉が生んだ千載一遇のチャンス
1994年10月の放送開始直後から瞬く間に大ヒットとなった『ER』だが、立ち上げ当初は無名キャストが多く、原作者のマイケル・クライトンもテレビ界での実績がなかったため、NBCは非常に安価な放映権料で獲得していた。
しかし、4年後にはジョージ・クルーニーをはじめとする主要キャストが一躍スターとなり、状況は一変する。1998年に合意に至った新契約の放映権料は、1話あたり1,300万ドル(22話で年間約2億8,600万ドル)という巨額なものであった。当時の試算によると、NBCが『ER』から得ていた年間利益約5億ドルの過半数が削られる形となった。
実は、NBCはより低いコストで契約を継続できたはずであった。シーズン1終了後、ワーナー・ブラザース・テレビジョン側は人気キャストへの昇給などを目的に、1話あたり約300万ドルでの早期再交渉を提示していた。だが、NBCは「ドラマ枠はコメディほど息が長く続かない」と判断し、同時期のコメディ『フレンズ』の再交渉を優先して『ER』の打診を先送りにしたのだ。
このNBCの静観姿勢は、競合他社に絶好の機会を与えることとなった。ワーナーで『ER』の立ち上げに関わった後、CBSのエンターテインメント部門トップに就任していたレスリー・ムーンヴィスが、すかさず争奪戦へと名乗りを上げたのである。
競合局の参入と『となりのサインフェルド』終了が与えた危機感
当時、ワーナー・ブラザースの会長兼共同CEOであったボブ・デイリーは、当時の状況を次のように振り返る。
ボブ・デイリー:NBCは自分たちが手にしたコンテンツの真の価値を理解していなかった。『フレンズ』のときとは異なり、キャストに支払う増額分を補填しようとしなかったんだ。だから私は賭けに出ることにした。『追加の資金要請はしない。その代わり、5年目を過ぎたら鼻血が出るほどの金額を支払わせる』とな。そしてその賭けは見事に当たった。
さらにCBSのレスリーは、自局への引き抜きを図るべく、1話あたり約1,200万ドルという破格のオファーをワーナー側に提示していた。
レスリー・ムーンヴィス:通常、スタジオは放送局と再交渉を行い、より多くの資金を獲得するものだ。NBCが提示を渋っていると聞いたとき、私はボブのもとへ行き、CBSへの移籍を求めて常識外れの金額を提示した。『ER』が自局に来れば、スケジュール全体の価値が跳ね上がると踏んでいたからだ。
1998年初頭の正式交渉を前に、ディズニー傘下のABCも関心を示し始めていた。追いつめられたNBCの背中を最終的に押したのは、看板コメディ『となりのサインフェルド』の終了決定であった。主演のジェリー・サインフェルドから番組終了の連絡を受けたNBCは、『ER』までも失うわけにはいかないという強い危機感に直面することとなった。
前代未聞の合意事項と、現場に還元された巨額ボーナス
最終的にNBCはワーナー側の提示を受け入れ、1話1,300万ドルという巨額契約を結んだ。ボブはこの際、金銭面だけでなく異例の条件を2つ突きつけたという。
一つは「木曜22時」という黄金放送枠の永久補償。もう一つは「今後のキャスティングに関するクリエイティブ上の全権をワーナー側が保持すること」であった。ジョージが5年目で降板することは決定していたが、他のキャストの去就に関してもNBCが口を挟めないよう先手を打ったのである。
この莫大な放映権料の恩恵は、現場のキャストやスタッフにも直接還元された。主要キャストであるジョージ、ジュリアナ・マルグリーズ、ノア・ワイリー、エリック・ラ・サール、アンソニー・エドワーズの5人には、それぞれ100万ドルの小切手が手渡された。さらに、製作総指揮を務めたジョン・ウェルズ、マイケル、スティーヴン・スピルバーグの3名は自らの利益から計600万ドルを出し合い、裏方で支える制作スタッフ陣へと分配したのである。
元・製作総指揮のジャック・オーマンは当時の状況を「ハリウッドでも最も素晴らしい光景の一つだった」と語る。末端の編集スタッフがこれで家が買えると涙を流したというこのエピソードは、当時のハリウッドにおける成功の規模と、『ER』という作品がもたらした熱狂のすさまじさを象徴している。
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