Netflixシリーズ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』でエミー賞を受賞し、トランスジェンダー当事者のフロントランナーとして活躍するラヴァーン・コックス。彼女が新著「Transcendent: A Memoir」のプロモーション中にThe Guardian紙の取材に応じ、ドナルド・トランプ政権によるジェンダー・イデオロギーやDEI(多様性・公平性・包括性)への攻撃が原因で、ここ数年の収入の90%を失ったという衝撃の事実を明かした。
-

Netflix『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のラヴァーン・コックス&ウゾ・アドゥバ インタビュー
リッチフィールド女性刑務所に収監されている女性たちの姿をブラック・ユーモアたっぷりに描いた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』。登場するのはいずれも強烈な個性を持ったキャラクターばかりの本作で、やはり強烈なインパクトを持ったソフィア役のラヴァーン・コックスとスーザン(クレイジー・アイズ)役のウゾ・アドゥバが来日。昨年の…
政治の波が直撃――講演活動の激減で収入の90%を喪失
ラヴァーンはこれまで、教育活動に加えて企業での講演活動を精力的に行ってきたが、その依頼が激減したと指摘する。
「この政権は、ジェンダー・イデオロギーやDEIを推進するすべての単科大学や総合大学への資金援助を打ち切ると脅してきた。たとえ私が大学院の演劇クラスで教えているだけであっても、それがトランス・イデオロギーを推進していると捉えられかねない。これが現実だ」
急激な収入減少に見舞われたが、決して自身の不遇だけを嘆いているわけではない。彼女が見据えているのは、コミュニティ全体が直面しているより深刻な危機だ。
「不満を言っているのではない。私はとても恵まれている。注目すべき重要な点は私の収入が大幅に減少したのだとしたら、私ほど特権を持たず、恵まれていない他のすべてのトランスジェンダーの人々はどうなっているのかということ。このような差別や、スケープゴートにすることには、実体的な代償が伴う」
この現状は、ラヴァーンにとって予想外の事態ではなかった。トランプが再選を果たす前、右派系シンクタンクが掲げた政策提言プロジェクト2025のキャンペーンにおいて、DEIへの攻撃は明確に示されていたと彼女は語る。
「あらゆる法律、政策、政府文書から、これらの言葉をすべて排除しなければならなかった。ジェンダー、ジェンダー・イデオロギー、ジェンダー・アイデンティティ、LGBTQ、DEI、人工妊娠中絶、避妊、といった言葉だ」
レッドカーペットの“顔”からの卒業、そして新たな挑戦へ
講演活動や教育の機会を失い始めたのと同時期に、ラヴァーンは3年間務めた米E!の看板番組『Live From the Red Carpet』のホストとしての任期も終えた。彼女は2025年1月のゴールデン・グローブ賞の直前に、番組からの降板を発表している。
当時、ラバーンは自身のソーシャルメディアにハイライト映像を投稿し、次のような感謝のメッセージを添えていた。
「信じられないほどの感謝の気持ちとともに、私は『#LiveFromE』のレッドカーペット中継のホストとして復帰しないことを決定した。私が務めた3年間の任期の中で、私たちが成し遂げた仕事を信じられないほど誇りに思っている。世界で最も偉大なアーティストたちと、彼らの作品や成功のプレッシャーを切り抜けることなどについてお話しできたことは、いかに信じられないほどの特権であったかを思い出させてくれる。女優、アーティスト、ホスト、そしてスピーカーとして、さらに成長し、進化し、素晴らしい機会を模索し続けられることにとても興奮している。皆さんが私の進化する旅路に引き続き付き合ってくれることを願っている」
逆風のなかでも、表現者としての前進を止めないラヴァーン。最近では、ジョナ・ヒル監督によるAppleのコメディ映画『アウトカム』にも出演するなど、俳優としてのキャリアを着実に重ねている。政治的な逆風のなかで彼女が放つ言葉とこれからの活動は、今後のエンタメ界における多様性のあり方を占う上でも、決して見逃すことはできない。
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』はNetflixで独占配信中。(海外ドラマNAVI)



