Netflixで世界を席巻中のブラジル発ドラマ『ラジオアクティブ・エマージェンシー』。1987年に同国で実際に起きたセシウム137による放射能汚染事故、通称「ブラジルのチェルノブイリ」を題材にした衝撃作だ。監督を務めるのは、大ヒット作『ナルコス』を手がけたフェルナンド・コインブラ。彼がこの作品に込めた思い、そしてブラジル作品が世界で共鳴する理由を探る。
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Netflixで世界を席巻! ブラジル発の衝撃作とは
『ラジオアクティブ・エマージェンシー』は3月23日から29日の週でNetflixの非英語作品で最も視聴されたシリーズとなり、1080万ビュー以上を記録。さらに、55カ国以上でTop 10ランキング入りを果たす快挙を達成した。
本作の題材は、1987年にブラジル中央部のゴイアニアで発生した実話に基づいている。金属くずを漁っていた二人の男が、廃墟となったがん治療装置を開封。その中には、暗闇で光る奇妙で魅惑的な青い粉があった。それが高放射能性の塩化セシウムであるとは知らず、男たちはその物質を分け合い、結果として世界最悪レベルの放射能事故を引き起こすことになる。この事故では、直接的な犠牲者が4人、10万人以上が検査を受ける事態となった。
コインブラ監督は、この悲劇が起きた当時11歳だったという。その40年後、彼はこの核災害を追体験するスリリングなシリーズを制作し、Netflixの激戦区であるグローバルチャートで頂点に立った。監督は「ブラジルで私たちがしていることに対し、世界が関心を持っている証だ」と語る。
Netflixブラジルのコンテンツ担当副社長エリザベッタ・ゼナッティは、『ラジオアクティブ・エマージェンシー』を「関係者全員の配慮、才能、そして感性が求められたパワフルな物語」と評価する。さらに「四十年近く経った今も、その深く人間的なテーマは今日の世界に響き、社会に考察の機会を提供している。クリエイターのグスタヴォ・リプスタインが、彼の心に近いこの物語を私たちにもたらしてくれたことに光栄を感じている。犠牲者たちの遺産と、悲劇に立ち向かった人びとの功績がこれからも語り継がれるよう、私たちもその一翼を担っている」とコメントした。
制作会社グラネの共同創設者ファビアーノ・グラネも、本作がチームに「大きな誇りをもたらした」と語る。特に「自国の歴史と再び向き合えるブラジルの視聴者だけでなく、国際的な視聴者にも力強く響いていること」を強調した。彼は「命を救うために協力し、共に行動する人間の能力を示すことは重要だ。戦争や避難といった正反対の状況を目の当たりにしている今、世界が聞きたがっているメッセージなのかもしれない」と付け加える。
監督が語る「ブラジルのチェルノブイリ」をドラマ化する意義
米Varietyの取材に対し、コインブラ監督は長年この実話を自ら脚色したいと考えていたため、グラネからプロジェクトの話が来たことは偶然の巡り合わせだったと振り返る。監督がこのプロジェクトで特に魅力を感じた点は、「非常に多くの視点があること」だった。「犠牲者、物理学者、医師、政府など、さまざまな立場がある。私の貢献は、登場人物たちと深く関わり、彼らがどのような人物であるかを理解することだった」と語る。
リプスタインとコインブラは協力し、人間味あふれるスリラーを制作することを決意。パイロット版で適切なトーンを設定することが鍵だったという。監督は「シーズンで何が起こるかを語る要素を、すべてパイロット版から第2話に移すアイデアがあった。だからパイロット版は、最後に彼らが話しているものが見える、まるで『ジョーズ』のような手法の作品となっている」と明かす。
実話の脚色には特有の困難が伴う。コインブラにとって重要な問いは、実在の人物を架空の人物に統合しつつ、犠牲者や生存者への敬意を払うこと、そして当時の様子を忠実に再現することだった。彼は「この物語をセンセーショナルにしない方法は、常に非常に地に足の着いた、リアルなものに保つことだった」と強調する。「私たちは俳優たちと長期間の準備を行い、家族が本物の家族のように感じられるようにした。私はこれが実在の人々がいる現実世界であると感じてほしかった。そのためには、非常に自由で自発的であることが重要だった。シリーズにはたくさんの即興が含まれており、それがより鮮やかに感じられる理由だ」
過去が「今」を語るブラジル作品の力
ブラジルは近年、映画やテレビで目覚ましい活躍を見せている。過去2年だけでも、ウォルター・サレス監督の『アイム・スティル・ヒア』とクレベール・メンドンサ・フィーリョ監督の『シークレット・エージェント』の2作品がアカデミー賞にノミネート。これらの映画は『ラジオアクティブ・エマージェンシー』の約10年前に設定され、軍事独裁政権下のブラジルの集合的記憶を扱っている。Netflixのシリーズは、政権終焉直後の政治情勢、つまり公的機関への不信感が根強く残る時代を描く。
コインブラ監督は、オスカーにノミネートされた2作品と同様に、『ラジオアクティブ・エマージェンシー』も「今日」を語る過去の物語だと語る。「今でも同じようなことが起こりうるという感覚がある。ブラジルの富裕層と貧困層の間の途方もない格差は依然として存在し、公的機関への不信感も同様だ。それは『アイム・スティル・ヒア』や『シークレット・エージェント』と同じことだ。もし20年前に作られていたら、それほど共感されなかったかもしれないが、残念ながら今日、独裁について話すとき、世界で起こっていることと並行して語られる。それは悲しい事実だ」と現状を指摘する。
ブラジル作品に見られるテーマ的な一貫性について、監督は「誰もがこれをやろうと指示し合っているわけではない。それは自然な動きだ」と付け加える。「私はクレベールと同じ世代で、同じ時期に短編映画を制作していた。だから、私たちがどこに向かっているのか、そしてブラジル映画が今、いかに世界に響いているのかを見るのは美しいことだ。それは本当に力強く、ブラジルで私たちがしていることに対し、世界の他の地域から関心が寄せられているように感じる。ここまで来るには長年の努力が必要だったが、ついに実現した」と語った。
監督は「しばらくブラジルの外で作品を作ると、恋しくなる」と語る。「自分の場所、自分の世界、自分の言語、自分の人びとについて語る必要があると感じる。1930年代のロサンゼルスを舞台にした『ペリー・メイスン』のような作品を制作するのは楽しいが、それはノワール映画への情熱を除けば、私の人生とは何の関係もない」と、母国での創作への思いを明かす。
作品の成功について尋ねられると、コインブラ監督は「物語がこれほど響くとは予想していなかったので、驚きだった」と語る。「映画の場合は、人びとがゆっくりと作品にたどり着く。時間がかかるものだ。しかしNetflixでは、それがブームとなり、世界中に広がる。人びとが本当に楽しんでいるのがわかる」と、Netflixでの配信による即時的で広範囲な反響に手応えを感じているようだ。
『ラジオアクティブ・エマージェンシー』はNetflixで独占配信中。(海外ドラマNAVI)
参考元:Variety




