全世界で長年愛されてきたスペース・エンタテインメント『スター・トレック』。これまでにも数々のスピンオフが誕生してきたが、その中で「史上最高のシリーズ」はどれなのか。米メディアScreen Rantが取り上げている。
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元祖シリーズのトリオは象徴的
同シリーズの中でも、元祖『スター・トレック/宇宙大作戦』(以下『オリジナル』)と、『新スター・トレック』(以下『TNG』)のどちらが良いかという論争ほど激しい議論は存在しない。ファンは数十年にわたり両作品を分析し、比較し、それぞれを擁護してきた。まさに“アイコン同士の戦い”と呼ぶにふさわしいテーマだ。
両作とも文化的に画期的な存在だが、「史上最高シリーズ」と呼べるのはひとつだけ。『TNG』は『オリジナル』が築いた基盤を受け継ぎ、時にそれを凌駕したとも言われる。一方で、『スター・トレック』のすべての始まりが『オリジナル』であることも揺るぎない。1966年から1969年にかけて放送された同作は、テレビSFの可能性を定義づけた。
当時のテレビSFが安っぽい冒険物語に偏るなか、『オリジナル』は星間探査を舞台にしつつ、社会問題を鋭く描き出した。その先駆的な精神こそが、最高の『スター・トレック』と評価される理由である。ジェームズ・T・カーク(ウィリアム・シャトナー)、スポック(レナード・ニモイ)、ドクター・マッコイ(デフォレスト・ケリー)のトリオは象徴的であり、その関係性は後続のスピンオフにも大きな影響を与えた。以降のシリーズはキャラクターが変わっても、このトリオと比較され続けている。
キャスティングの面でも革新的だった。ウーラ(ニシェル・ニコルズ)はアメリカテレビ史上初の主要な黒人女性キャラクターのひとりとして登場。さらにアジア系のヒカル・スールー/カトー(ジョージ・タケイ)、ロシア系のパーベル・チェコフ(ウォルター・コーニッグ)と、当時としてはきわめて国際色豊かなクルーが揃った。これは制作総指揮ジーン・ロッデンベリーが描いた「人類の未来像」を体現するものだった。
『新スター・トレック』は後続シリーズへの影響が大きい
1960年代において、こうしたキャラクター陣はまさに革命的だった。しかし『オリジナル』が世界観を切り開いた功績が永遠に称えられるべきである一方、『TNG』はその基盤をより完成された形へと進化させた。ジャン=リュック・ピカード艦長は、カークのように直感と行動力で突き進むのではなく、外交・理性・思いやりを重んじる指揮官として描かれた。また、クリンゴン人を単なる敵から、名誉や政治、伝統を備えた複雑な種族へと昇華させた点も画期的だった。この文化的拡張は、異星文明の描き方の模範となった。
さらに、アンドロイド・データの人間性の探求や「最高指令」にまつわる道徳的ジレンマなど、哲学的かつ多様なテーマを扱ったのも『TNG』の特徴である。『オリジナル』が原点としての地位を保つ一方で、『TNG』は現代における『スター・トレック』シリーズのテンプレートとなった。『ディープ・スペース・ナイン』から『ディスカバリー』に至るまで、ほぼすべての後続シリーズは『オリジナル』以上に『TNG』の影響を受けている。
結局のところ、『TNG』は『オリジナル』を置き換えたのではなく、その基盤を引き継ぎ、さらに深みを加えたシリーズである。だからこそ「史上最高の『スター・トレック』」の称号は、『TNG』にこそふさわしいだろう。
(海外ドラマNAVI)