イギリスが誇る歴史ドラマ『ダウントン・アビー』では印象的な死がいくつか描かれている。その中でも、ファンに衝撃を与えたあの人の突然の死はなぜ起きなくてはならなかったのだろうか。
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意志の強いシビル嬢の人生と、その突然の死
本作でクロウリー家の末娘を演じ、世界中の視聴者を魅了したジェシカ・ブラウン・フィンドレイ。彼女が演じたシビルは、その優しさと芯の強さで多くのファンに愛されたキャラクターだ。しかし、物語は衝撃的な展開を迎える。その死が描かれなくてはいけなかった理由とは何だったのだろうか?
シビルは、クロウリー家の三姉妹の中でも特に意志が強く、情熱的な若い女性として描かれた。彼女は周囲の人々に常に優しく接し、姉妹であるメアリーとイーディスの口論の仲裁役を務めたりすることも多かった。しかし、彼女自身もまた、貴族に期待される枠を超えて挑戦する野心と勇気を持っていたのだ。
物語の初期シーズンでは、第一次世界大戦中に看護師として働き始め、家族の運転手であるトム・ブランソンとの身分違いの恋に落ちる姿が描かれる。父親の反対や干渉にもかかわらず、最終的にトムと結婚。ブランソンの影響で、シビルはより政治的に活動的になり、それが原因で逮捕されそうになる一幕もあった。
ブランソンとの子を妊娠した後、シビルはダウントン・アビーに戻るが、出産時に早期の子癇前症(プレエクランプシア)の症状に見舞われる。グランサム卿は、医師からの警告を無視し、シビルを公立病院に連れて行くことは彼女と赤ん坊の命を危険にさらすと信じ込んでしまう。
シビルは無事に女の子を出産するが、間もなく激しい痙攣を起こし、家族に見守られながら帰らぬ人となる。この衝撃的な死は多くのファンを驚かせたが、実は人気シリーズからのシビルの退場は、ジェシカ自身が必要だと感じていたことでもあったのだ。
計画通りの降板劇、女優としての次なる挑戦
Vanity Fairのインタビューで、クリエイターのジュリアン・フェロウズは、シーズン3でのシビルの退場が最初から計画されていたことを明かしている。「ジェシカは最初から3年やったら辞めると言っていたんだ。だから全部計画通りだった」と、フェローズは説明する。
当時まだ20歳だったジェシカは、同じ役を何年も演じて居心地の良い場所に留まることや、特定の型にはめられることを望まなかった。Radio Timesのインタビューで、当時の心境をこう語っている。「契約が切れるタイミングで、もう1年契約を延長するか迷っていました。不安でいっぱいだったけど、それこそが私を突き動かしたんです。怖さを感じて未知の世界に飛び込むことが私にはワクワクすることで、逆にこのまま続けて、ある日『これしかできない』と気づいて、もっと自分を試せばよかったと後悔する方が怖かった」
ジェシカのこの決断は、その後の彼女の多彩なキャリアに繋がっている。『ダウントン・アビー』降板後も、映画『ヴィクター・フランケンシュタイン』やドラマ『BRAVE NEW WORLD/ブレイブ・ニュー・ワールド』、『Harlots/ハーロッツ 快楽の代償』など、様々な作品で活躍し、女優としての幅を広げている。シビル嬢の死はファンに大きな悲しみをもたらしたが、それはジェシカ・ブラウン・フィンドレイという一人の女優が、自身のキャリアを切り開くための、力強い一歩でもあったのだ。
ジェシカの最新出演ドラマ『同居のルール』はParamount+(パラプラ)で配信中。